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クーデター軍の過去


剣地:西の酒場の隠し部屋


 どうやら俺とヴィルソルは、クーデター軍の人を救ったようだ。


 でかい体格で、左手に銃を持っているのがクーデター軍のリーダーのレット。


 水色の長髪の男性が密偵のフィロス。


 おっぱいがでかい姉ちゃんがイーファ。


 そして、俺とヴィルソルの後を付けていたのは青年剣士のラウド。


「悪いな。ラウドがお前たちのことを不審者と思っていたらしくて」


「あいつは少し臆病な所がある。だけど、そのおかげでここまで生きてこられた」


「だけど、どうして途中で倒れそうになったのですか?」


 俺はベッドの上で寝ているラウドを見て、フィロスにこう聞いた。


「この国ではろくに食べ物が回ってこないからな。ここ最近、まともに食事していないから……」


「物価が高くて、手が出ない」


「うわ、国として最悪だな」


「だから、国に対して反乱を起こす者が現れているのだ。現に、我々もそうだ」


「確かに」


「おい。お主ら以外にもクーデター軍とやらは存在するのか?」


 ヴィルソルがフィロスにこう聞いた。フィロスは少し考え、答えを出した。


「いると思う。だが、兵士に見つかり処刑されるものが多いが……」


「反乱は重罪だからね」


 ティーアは水を飲みながらこう言った。そして、レットに近付いた。


「で、どうやって国と戦うか作戦はあるの?」


「いや。相手の隙を見て攻め込むことしか考えていない」


「あほだなー。それじゃあいつまでたってもクーデターは成功しないし、このままだと皆飢えて死んじゃうよ」


「うう……」


 ティーアにズタボロに言われ、レットは落ち込んでしまった。俺はティーアに席についていろと言い、レットに声をかけた。


「とにかく、いつ攻め込むかはあなたのタイミングで決めます。こっちには勇者と魔王がいますので」


「え? 魔王?」


「我のことだ」


 ヴィルソルが前に出て、威張るように胸を出した。


「我らの里に住んでいる幼く、弱いモンスターの子らがこの国の荒くれ共にさらわれておる」


「私は人を守るため。悪は絶対に許さない」


 ティーアとヴィルソルがこう言うと、レットは笑顔を取り戻した。


「勇者と魔王が一緒に戦ってくれるのか。こりゃありがたいぜ!」


「だが、油断はするなよ。この前のようになってしまうからな」


「ああ。そうだったな」


 この前? 何だ、一回クーデター起こそうとしていたのか。だけど、この国は全然変わってないから失敗したのかな。


「とにかく今日は休むといい。ラウドのことは私たちで見るから」


「分かりました」


 その後、俺たちはフィロスさんに案内された部屋へ行き、そこで休むことになった。




剣地:フィロスに案内された部屋


「ケンジー」


「おーい、ケンジー」


「暇だし相手してー」


 俺が座った瞬間、ルハラとティーアとヴィルソルが俺に寄り添ってきた。こいつら、イチャイチャしようとしているのか? ありがたいが、空気を読んでくれ。成瀬が呆れた表情で三人に近付き、こう言った。


「あなたたちねぇ、今はこんな状況だから少しは自重しなさい」


「ちぇっ。じゃあこれが終わった後で」


 と、ルハラが俺にこう言った。俺はやれやれと思っている中、扉からノックが聞こえた。


「はーい」


「ラウドだ。入っていいか?」


 どうやら、ノックの主はラウドのようだ。俺は扉を開き、ラウドを中へ招き入れた。


「さっきはすまない。君たちを不審者のように見てしまって」


「気にしないから。で、あんたの体調はどうだ?」


「何とか動ける。保存食を食ったからな」


 ラウドは腹を抑えてこう言った。


「ねぇ、一つ聞いていい?」


 成瀬がラウドに近付き、声をかけた。


「どうした?」


「レットさんとフィロスさんがこの前のようにって言ってたけど、何かあったの?」


「それは……」


「話してやれ、ラウド」


 話を聞いていたのか、フィロスが部屋に入ってきた。


「フィロス。でも……」


「過去に何があったのか、彼らに話してもいいと思う。共に戦うから」


「そうだな」


 ラウドは返事をした後、話を始めた。


 どうやらこの国は五年前から腐っていた。村や町は荒れ、何もできない弱い人たちは皆飢えや過労で死んでいった。そんな現状でも、この国の王は何も対策を練らなかったし、荒れ果てた村や町を兵器で消し炭にしていた。税金を納めない地域など必要ないと言う理由で。


 そんな王の行動に耐え切れず、ラウドたちのようなクーデター軍がいくつも結託された。だが、彼らのほとんどは王へ反逆する前に、皆捕まって処刑された。ラウドたちは機会を伺い、国へ反逆する方針でいたから、今まで無事に生きてこられたようだ。クーデター軍のメンバーはラウド、フィーア、レット、フィロスだけど、他にも二人いた。名前はツクスとリアス。


 ある日のこと。リアスは単身で城内へ侵入し、王の暗殺を試みた。もう王の言動に耐え切れなく、行動してしまったのだ。暗殺は失敗。彼女は追われる身となってしまった。その翌日、ツクスが事情を知り、一人でリアスの元へ向かって行った。助けるために向かったとラウドは言っていた。助けることには成功したと連絡があったきり、それから連絡はなかった。その数日後、王の手によって捕まっていた二人が、公開処刑で命を落とした。これでラウドの話は終わった。




成瀬:フィロスに案内された部屋


「それがこの前の話。俺たちは仲間を失ってしまった」


 ラウドの話が終わり、皆黙ってしまった。だが、剣地はうつむき、拳を振るえていた。


「ラウド、いつ攻め込むか決まったか?」


「いや。だが、しばらくしたらまたクーデターを起こすだろう」


「そうか」


 剣地は話を聞いて、この王国への怒りが増したのだろうか。握る拳が徐々に震えを増していった。


「ケンジ、あんたが相当怒っているのは理解したわ。だけど、今その怒りをぶつける時じゃない」


 ティーアが剣地の拳を触り、こう言った。


「戦う時になったら教えて頂戴。私たちも参加するから」


「ああ」


 ラウドは返事をし、去って行った。




ヴィルソル:作戦会議室


 この小さな軍隊が、どうやって一国と戦うつもりだ? 我は少し疑問に思っていた。見たところ、クーデター軍のメンバーは四人しかいない。ラウドとフィロス、彼らからあふれる魔力は相当のものだが、この位の魔力を持っている魔導士はこの世界にたくさんいる。多分、あの城の中にも相当な魔法の使い手がいるだろう。それに、兵器の存在。寂れているとはいえ、村や町を一掃できるほどの威力だ。そんな兵器が動き出したら、ひとたまりもないだろう。


「ヴィルソル、一体何を考えているの?」


「ん? ナルセか」


 ナルセが我の隣に座り、話しかけてきた。


「何かを考えているような顔をしていたけど」


「このまま攻めて大丈夫かなと思っていた。町を消し炭にする兵器もあるし、相手には凄腕の魔法使いがぞろぞろいる」


「確かに深く考えるわね」


 ナルセは少し笑ってこう言った。何で笑う? それよりか、ナルセは緊張していないように見える。


「ねぇ」


「ん?」


「ゼロマジックって本当に魔力消費がないの?」


 ナルセは当たり前のことを聞いている。ヴァリエーレから聞いたが、ケンジとナルセは転生者で、神様から高位のスキルを授かったと。


「当たり前だ。分からないのか? 本来ならゼロマジックは熟年の魔法使いでも取得できない、ある意味真の魔法の才能を持ったものにしか取得できないレア中のレアスキルだぞ」


「そう……分かったわ。確認のために聞いておいてよかった」


「確認?」


 この時、我はナルセが少し不気味な笑みをしていたのを目にしてしまった。そう言えば、ナルセはゼロマジック以外にも、マジックマスターやブレイブソウル、ソードマスター、ラブハートのスキルを手にしている。このことはヴァリエーレとルハラから聞いたが……もしかして、スキルを使って国を相手に戦うつもりか? 我は一度席を立ち、腕立て伏せをしているケンジに声をかけた。


「ケ……ケンジ」


「どうした? そんな怯えて」


「ナルセって怒ると……怖い?」


 あ、ケンジの動きが止まった。ケンジは我に近付き、耳元で小さくこうささやいた。


「かなり怖い。とんでもなく怖い」


「そう……」


 なんかやばいことが起こりそうな気がする。怒った時のナルセが恐ろしかったら……下手したら国どころか世界一つ消えちゃいそう……。


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