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クーデター軍の存在


剣地:ヴィルソルの部屋


 成瀬たちと合流した翌日。俺たちはヴィルソルの部屋で作戦会議を始めた。


「では、今からシリヨク王国殲滅作戦の会議を始める」


 ヴィルソルがファイルのようなものを持って、こう言った。


「シリヨク王国は領土拡大のため、我ら魔族の地を奪おうとしている。何度かシリヨク王国の戦士と戦って退けてきたが、優秀な魔族の戦士が命を落としていった。これは我の予想だが、シリヨク王国は領土拡大のため、魔族の地以外でも他の王国へ攻め込む恐れがある」


「その可能性は否定できません」


 ヴァリエーレさんはヴィルソルにこう言った。ヴァリエーレさんは、シリヨク王国が魔界以外も他国も攻める可能性を考えているのか。


「これは噂で聞いたのですが、シリヨク王国は魔力を使った破壊兵器を作り上げたと聞きました」


「その話は本当だ。あの王国から物凄い魔力を察知することがある。かなり前から破壊兵器を作っているのだろう」


 破壊兵器。ミサイルを積んだロボットとか、そんな感じなのだろう。ファンタジーみたいな世界だと思っていたけど、そんな物騒なものがあるなんて思ってもいなかった。


「おそらく奴らは、兵器が完成し次第あらゆる国を攻め込むだろう」


「じゃあ、侵入したついでにその兵器を壊す?」


「うむ。エルフの言う通りじゃ」


「でもさ、どうやって中に入るの?」


 ティーアがこう言うと、皆黙り込んでしまった。


 そりゃそうだ。魔王を連れた旅人の一団が国に入ろうとしたら、まず牢屋へぶち込まれる。下手すれば処刑だ。


「我は侵入という形をとる」


「忍び込むってことか」


 潜入、それしかないよな。


「だが。我一人では何かあった時対処ができない場合がある。なので、ケンジを付き人として連れていきたい」


 ヴィルソルは声高らかにこう言った。だが、その声を聞いた女子たちは変な目でヴィルソルを見つめた。成瀬たちの気持ちは分かるが、潜入となるなら俺が適任かもしれないな。この前のアジト壊滅もそうだし、ベロラーダの事件やエルフ奪還の時に潜入して敵を叩くということをやったため、俺は派手に暴れるよりか忍者のような仕事に向いているかもしれない。性格上前に出て戦うのが性に合っていると思うのだが。


「分かった。俺がヴィルソルと一緒にシリヨク王国に侵入するよ」


「剣地!」


 成瀬が心配そうな顔で俺を見つめた。やっぱり、俺のことが心配なのか。


「大丈夫だって。ヴィルソルが付いているし、なんかあったら暴れるから」


「今回はばかりは相手が違うわよ。王国よ」


「何、我の魔力をもってすれば、一国の兵士など雑魚だ!」


「成瀬、お前の気持ちは理解できる。だけど心配するなって、必ずお前に所に戻ってくるから」


「その言葉、信じていいよね?」


「ああ」


 俺は成瀬に力強く返事した。安堵の表情を見せた成瀬はその場に座り、話は続けられた。


「では我とケンジが潜入。残るメンバーは王国の中へ入って情報収集やクーデター軍と話をすること」


「そう簡単にクーデター軍と話ができる?」


 その後、俺たちはクーデター軍のことで考え始めた。クーデター軍は立場上、そう簡単に姿を見せてくれないだろう。ばれたら多分処分されるだろうし。どうやって連絡を取るのか分からないのだ。


「何かクーデター軍について情報はない?」


「分からん。我もその存在は知らなかったからな……」


 ヴィルソルはため息を吐くと、ルハラはこう言った。


「ギルドの人に聞いてみる?」


「クーデター軍は裏の存在だ。ギルドの連中が知っているわけがなかろう」


 ヴィルソルがこう言うと、ティーアは立ち上がった。


「分かる人がいるかもしれない。行かないと分かんないよ」


 そう言うと、ティーアはそのままどこかへ行こうとした。その姿を見て、成瀬はティーアにこう聞いた。


「この辺にギルドってあった?」


「あったよ。少し前にギルドの建物が。飛べば数分で着くよ」


「じゃあ俺も付いて行くよ」


 その後、俺はティーアと共にギルドへ向かった。




剣地:マージドイナカ山近くのギルド


 数分後、俺とティーアはギルドの建物へ来ていた。


「ようこそ、ミチサクのギルドへ」


「すいません。依頼表を見せてください」


「はい。少々お待ちください」


 俺は依頼表の中に、クーデター軍に関しての依頼がないか調べ始めた。ティーアは周りの冒険者に話を聞いている。ティーアの行動を見ているうちに、ギルドの姉ちゃんが依頼表を持ってきた。


「こちらが依頼表でございます」


「ありがとうございます」


 俺は分厚い依頼表を受けっとって読み始めた。モンスター退治とか薬草収集とかロイボの町であった依頼が多かったけど、こんな変な依頼があった。


 依頼内容:モンスター討伐

 依頼場所:シリヨク王国

 依頼の詳しい情報については現地にて話す。

 報酬は依頼達成時に払う。ただし、依頼時に死亡時は何もしないので注意。


「何これ?」


 変な依頼だ。依頼内容はモンスター退治だけど、場所はシリヨク王国だ。


「変な依頼ですね」


「ええ。依頼主も匿名ですし、このギルドへきた時もフードで顔を隠していました」


 匿名のうえ、姿を隠してここにきたのか。不審だというのが見た目で分かる。俺がこう思っていると、ティーアが俺の元へ戻ってきた。


「ケンジ。いい情報見つけたよー」


「お、マジか!」


 ティーアが連れてきたのは、青年の剣士。俺はその人からこんな話を聞いた。


 どうやら、あの不審な依頼を受注した人がいるらしい。その人は途中で依頼放棄してこのギルドへ戻ったのだが、かなり深い傷を負っていたという。青年剣士はその人に何があったと聞いた時、その人はこう答えたそうだ。クーデター軍に入るなんて聞いてないよ。と。


 話を聞いた俺は、もう一度ギルドの姉ちゃんに話を聞いた。


「さっきの依頼って他に受注した人いる?」


「いえ。一人だけですね。その人は途中で重傷を負って依頼放棄しましたが」


「何かあったか詳しいことは聞きました?」


「聞けませんでしたね。それに、その人はまだ入院中です」


 話を聞いたティーアはにやりと笑った。


「ケンジ、一旦戻りましょう」


「ああ。そうだな」


 その後、俺とティーアはヴィルソルの元へ戻って行った。




成瀬:マージドイナカ山


 剣地とティーアが出かけて数時間が経過した。その間、私たちはヴィルソルからいろんな話を聞いていた。この地について、シリヨク王国について。


「じゃあヴィルソルは世界を征服しようとは考えていないの?」


「ああ。そんな時間がかかることやってたまるか。それに、今は魔王の力を遥かに超える武器や魔術の存在、それに兵器のような恐ろしい物がある」


「確かにねー」


 ルハラが煎餅をかじりながらこう言った。そんな中、剣地とティーアが帰ってきた。


「ただいまー」


「皆、依頼の中にクーデター軍絡みのようなものがあったよ」


 ティーアはこう言うと、依頼表のコピーを私たちに見せた。


「確かに怪しいわね。もしかしたらそうかもしれないわ」


 ヴァリエーレさんがコピーを手にしてこう言った。確かにモンスター退治なのに、依頼場所がシリヨク王国で、詳しいことは依頼時に話すことになっている。


「大体の話はまとまったな。我とケンジが王国へ侵入。残る四人はその依頼を受注して王国へ入る」


「それじゃあ、明日の準備をしてくるわ」


 剣地がそう言った後、とりあえず解散して各々の準備を始めた。




成瀬:マージドイナカ山入り口


 翌日。剣地とヴィルソルはペアを組み、出かける準備をしていた。


「剣地、気を付けてね」


「成瀬も。話を聞いた限り、あの依頼で負傷者が出たからな」


 その後、剣地は私に近付き、再び口を開いた。


「無事にお前の所に戻ってくるよ。お前はお前のできることをしてくれ」


 剣地はそう言うと、私にキスをした。


「ちょっと! 何なの?」


「おまじないかな。しばらく会えなくなると思うから、しておこうと思って」


「もう……」


 照れる私を見て、剣地は笑っていた。そして、剣地とヴィルソルはシリヨク王国へ向かって出発した。


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