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結託する勇者と魔王


剣地:マージドイナカ山


 俺がモンスターさらいの連中を捕まえて一週間が経過した。あの後、俺は連中をシリヨク王国以外のギルドへ渡して懸賞金を貰い、その金でモンスターたちが住む建物やヴィルソルの部屋を簡単にリフォームした。また、同じようなことを考える連中へ対策するために、簡単に扱える武器や防衛装置も買っておいた。これなら俺やヴィルソルがいなくても安心だろう。


 一週間が経過したとすれば、そろそろ成瀬たちと合流できるはずだ。まず、話をして事情を説明しないと。あいつなら分かってくれると思うのだが。そんなことを考えていると、望遠鏡を見ている子供が俺の方を見て叫んでいた。


「車が近付いてくるよ!」


「車?」


 子供から望遠鏡を借りて車を見ると、車の中には成瀬の姿が見えた。元気そうでよかった。ルハラもヴァリエーレさんもティーアもいる。元気そうだ。


「俺の嫁さんたちだ。迎えに行ってくる」


 俺はこう言うと、山の入口へ向かった。車が俺の近くで止まると、勢いよく扉が開き、中にいた成瀬が飛びついてきた。


「おわっ!」


「剣地! 無事でよかった……」


 成瀬は泣きながら強く俺を抱きしめた。その後、ヴァリエーレさんやルハラ、ティーアも泣きながら俺に抱き着いてきた。


「く……苦しい……会えなかった気持ちは分かるけどさ……」


「メンゴメンゴ。で……ここが魔王のアジト? それにしては装備がしょぼいね」


 ルハラが山の入口を見てこう言った。その横にいるティーアは、剣を構えて大きく叫んだ。


「出てこい魔王! よくも私の夫をさらったな!」


「俺らまだ結婚してねーだろ」


 俺がこう言うと、奥からヴィルソルが現れた。


「勇者か……我は今貴様の相手をしている暇はない。掃除中なのだ」


「掃除ならする必要はないわ。あんたは今からあの世へ逝くんだからね」


「わー! ちょっと待て、待ってくれ!」


 戦いになりそうな雰囲気の二人の間に俺は入り、戦いを止めた。


「どうしたのよ、ケンジ? 何で止めるわけ?」


「決まっておる! 愛を誓った我を失うわけにはいかないからだ!」


「誓った覚えはねーよ! とにかくティーア、皆、話を聞いてくれ!」


 その後、俺は何とかティーアを説得し、ヴィルソルの部屋へ案内した。




成瀬:ヴィルソルの部屋


「汚い部屋だな……」


 ティーアが魔王の部屋に入って最初にこう言った。


「汚い部屋と言うな! ケンジがいじってくれたおかげで、キレイになったんじゃ!」


 そうは言っているけど、あいつがいじった部屋となれば、このざまは分かる。部屋の壁や天井は色が合っていないし、家具の椅子や机も変な色や形をしていてセンスがない。というか子供っぽい。あいつが選びそうなわけだわ。


「えーっと……部屋のことは置いておいて。まず、今俺が置かれている現状を聞いてくれ」


 その後、剣地はこの二週間の間に起きたことを話してくれた。


 魔王……ヴィルソルは魔族の繁栄のために子孫が欲しいとのこと。それで、気になる相手を探していたところ、剣地が映り、ヴィルソルは剣地に一目惚れした。大体はティーアのパターンと同じだった。


 この山のモンスターたちは温厚で争いを好まない性格。そのせいでモンスターの子供が悪い連中にさらわれ続けている。連中がさらいにきた時、剣地がいたおかげで子供の被害は事前に防げたし、アジトの壊滅とさらわれた子供の救出ができた。


 その黒幕はシリヨク王国の国王。一国の王様が企てていることだった。奴隷としてモンスターの子供を売り払い、そのお金で何かしようと考えているらしい。


「頼む皆、シリヨク王国相手に戦ってくれるか?」


 うーん……確かに話を聞いてシリヨク王国に対して腹が立ったけど……一国を相手に戦えるのかな?


「ケンジ。シリヨク王国のことは知っている?」


 ここでヴァリエーレさんが声を出した。


「独裁王国ってことは聞きました。後は分からない」


「そう。シリヨク王国は独裁王国。だけど、国に対してクーデターを起こそうとしている反乱軍がいるという話を聞いたわ。もし、戦いたいとなれば、彼らに話をしてみたらどう?」


「話がうまくいって、我たちもその反乱軍とやらと共に戦えば……」


「戦えるかもしれないねー。まー、私たち結構強いから一国ぐらい簡単に潰せるかもね」


 ルハラがヴィルソルにこう言った。だけど、ティーアはずっと考え込んでいる。


「どうした、ティーア?」


「いや。何でもないよ」


 と、ティーアは冷や汗をかきながら剣地にこう返事した。嘘だ。何か深いことを考えている。


「話はここまでにして、皆は休んでくれ」


 剣地が立ち上がり、私達にこう言った。確かに、ずっと座りっぱなしだったから疲れた……。やっと休める……。




ティーア:マージドイナカ山


 正直、私はどうすればいいか分からない。


 私の死んだ父が言っていた。勇者は弱き民の力となれと。邪なる魔王や魔族を打ち倒せと。


 だけど、剣地の話は父の言っていたことと逆のことだ。今は魔族や魔王が弱い立場で、シリヨク王国……人間たちが悪い方。


 たとえ弱い立場でも、私は魔王を、魔族を救ってもいいのだろうか? 勇者として、人を成敗してもいいのだろうか?


 魔族に力を貸しても、人を力で裁いても、勇者としてやってはいけないことだ。どうしたらいいんだ?


「ティーア、ここにいたのか」


 ケンジがコップを持って私に近付いてきた。


「ココア持ってきた。寒いし、飲んどけよ。あったまるぞ」


「ありがとう」


 私はコップを受け取り、ココアを飲み始めた。あ~、暖かさが身に染みる。


「何か悩みか?」


「え?」


「さっきのことだよ。で、今も何か悩んでたんだろ?」


「うん。勇者としてどうすればいいか分からなくなってさ」


「どうしてだ? 弱い方の力になればいい。そっちの方がいいだろ」


「弱い方とはいえ……魔族だ。勇者の敵だよ」


 ケンジは私の言葉を聞いたのか、息を吐いた。


「そんなのいつの話だ? 昔話だろうが」


「だが、魔王は剣地をさらったじゃないか」


「確かに。でも子孫を作るという理由があった。寂れたここを復興したかったという理由がある。ヴィルソルと過ごしていたけど、世界を征服しようなんてことは考えてなかったぞ」


「でも……」


「連れ去るってことはあんま許されることじゃないけどな。だけど、このおかげでシリヨク王国の悪事で苦しんでいる奴がいたってことが分かった」


 ケンジはこう言った後、ココアを飲んで一息入れた。


「俺はすぐにあの連中をぶっ潰すって心の中で決めたよ。悩むことなんてなかったよ」


「相手は人だよ。モンスターが相手じゃない」


「人と戦うのが嫌なのか?」


 ケンジがこう聞いた。それに対し、私はすぐに言葉を返せなかった。


「いいかティーア。この世の中にはいろんな人間がいる。簡単に分けると、いい奴と悪い奴。俺は悪い奴が大嫌いだ。そんな連中は、凶暴なモンスターと同じだ」


「人とモンスターを一緒にしない方がいいと思う」


「いや。一緒……もしかしたら凶暴なモンスターよりもとんでもなく恐ろしい人がいるかも」


「力があるってこと?」


「体の力だけじゃない。金や権力の力だ。そういう奴を懲らしめるために、勇者やギルドがある。違うか?」


「うん……」


「俺は何が何でもシリヨク王国の悪い連中全員ぶっ倒す。お前はどうしたい?」


 迷いは晴れた。私の役目は弱き民を救うため……いや、弱き民やモンスター、それ以外にも弱い立場の物を守るため、剣となって悪を切り払うこと!


「シリヨク王国の連中を倒す」


 私の言葉を聞いたケンジはにやりと笑い、こう言った。


「迷いは晴れたか」


「ああ」


「それじゃあしばらくしたらヴィルソルの部屋に戻るか。明日からどうやってシリヨク王国を相手にするか作戦会議だ」


「うん!」


 私はケンジの手を握り、立ち上がった。


「じゃ、行くか」


 その後、私たちは魔王のセンスのない部屋に戻って行った。




剣地:風呂場


 それから、俺は風呂に入ってしばらく考えごとをしていた。シリヨク王国をどうやって倒そうか。その前にどうやって潜入しようか考えていた。魔王が王国に入って来たとなれば、すぐに大騒ぎになるだろう。それに、俺らがヴィルソルと一緒について行ったら確実にヴィルソルの仲間だと思われる。


「深く考えるのは止めるか」


 今は休むことに集中しよう。考えるのは明日だ。そう思って暖かい湯に癒されていると、更衣室から叫び声が聞こえた。


「私が先にケンジと入るんだ!」


「うるさい勇者! 我が入るのだ! これまでずっと我はケンジと風呂に入っていたのに!」


「はぁぁぁぁぁ? 剣地の奴、そんなことしていたの!」


「いや、我が乱入していただけ」


「手を出したの?」


「我が手を出したが、一線は越えなかった」


「もう限界だ! 私は行く!」


「ちょっとルハラ! 待って!」


 更衣室から、全裸の成瀬たちが乱入してきた。


「ケンジ、一緒に入ろう!」


「我が先だって言っているだろバカ勇者!」


 と、ケンカしながらティーアとヴィルソルが俺に向かって突っ込んだ。それからルハラが俺に向かってダイブをし、俺の横にルハラとヴァリエーレさんが座った。その後、俺の入浴タイムは女子たちの騒々しい声で無駄にされた。こんなんで本当に大丈夫か?


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