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どっちが悪か分からない


成瀬:マージドイナカ山へ向かう車の中


 剣地がさらわれてから一週間。この間、私たちはいつ魔王の手先が来るか分からない状況の中、車で移動していた。だけど、今日まで襲ってきたモンスターは皆野生のもので、魔王直属の部下ではなかった。


「おかしいな。魔王は私たちがくるのを察しているはずなのに」


 変に思っているティーアは、ずっと考えごとをしていた。


「魔王の部下が出なければそれでいいよ。もしきたら相手になるだけだよ」


 ルハラは手を回しながらこう言った。


「ええ。今度ばかりは本気でやるつもりよ」


 ヴァリエーレさんも剣を見せながらこう言った。だけど、本当に魔王が襲ってこないなんてちょっと不思議だな。あと一週間、何事もなければいいけれど。




剣地:アジトらしき洞窟前


 タイヤの跡を追って着いたのは、マージドイナカ山から少し離れた洞窟。入口は狭いが、その近くにはバイクが置かれていた。あいつらが使っていたバイクだ。ということは、ここがあいつらのアジトか。


 まず、俺はあいつらのバイクのタイヤを全てパンクさせた。そうすれば、あいつらは逃げる足を失う。で、俺はナチュラルエアを使い、洞窟に侵入した。いくらナチュラルエアを使っているとはいえ、あいつらに姿を見せたら効果はなくなる。慎重に行動しなければ。しばらく道を下っていると、水滴の音に交じり、あいつらの足音が聞こえた。


「くっそ……あのガキのせいでモンスターのガキがさらえなかったぜ……」


「次だ、次。あのガキがいないときに攻め込もうぜ」


「そのついでに、捕まった奴を助けに行かないと」


 俺に気付かず、あいつらは会話をしていた。俺は岩場の陰に隠れ、あいつらが通り過ぎるのを待った。そして、俺はあいつらの後ろに回り、サイレンサーを付けたハンドガンであいつらを倒した。殺すのはまずいから弾丸は超強力な睡眠薬が入った弾丸にしている。俺は爆睡している二人組を岩場へ隠した後、動けないように紐で手足を縛った


 その後、俺は先へ進んだ。進んだ先には、奴らの休憩場らしき場所が見えた。ベッドが十台。広場の中央には少し大きめの机、その上にランタンや汚いトランプが置かれていた。そして、椅子の上には奴らの仲間らしき人物が三人いた。こいつらをどうにかしないと、先へは進めないな。何か手はないかと思い、周囲を見回すと、一つだけやけにでかい岩を見つけた。俺はそれを撃ち、音を発生させた。


「なんか落ちたか?」


「ちょっと見てこいよ」


「しょうがねーな……」


 奴らの一人が、落ちた鍾乳洞の所まで歩き始めた。


 今がチャンスだ。


 俺は一人が離れた隙を伺い、机の上のランタンを撃って火を消した。


「何だ、明かりが消えたぞ!」


「誰かいるのか?」


 俺は二人に悟られないように背後へ回り、睡眠弾を撃ち込んで眠らせた。さっきと同じように縄で縛り、動きを封じた。で、次は岩へ向かった奴だ。俺はそいつが捕まった二人を見て騒ぎ立てることを予想し、早急に始末するために動いた。


「何だ……ただ岩が落ちて当たっただけか。にしても、この焦げ跡は……」


 俺はそいつの背後へ回り、同じように睡眠弾を撃ち込んで眠らせ、動きを封じた。ここまで潜入がばれずに済んでいる。俺、こっそり行動する場面が多いな。どちらかといえば、前に出て派手に暴れたい。ま、ここで愚痴を言っても仕方ないか。早くあいつらを倒さないと。




ヴィルソル:マージドイナカ山の前


 大変なことになった。ケンジが一人でモンスターを攫う連中のアジトへ向かってしまった! あいつらは何度も我が相手して追い払っていたからいいが、アジトへ乗り込んでぶっ潰すという考えはなかった。いや、その考えは持っていたのだが、下手に魔王である我が表に出ると厄介なことになる。だから、追い払うことはできてもあいつらを潰すことはできなかった。


 ケンジの魔力を察してみると、もうすでにケンジはあいつらのアジトにいる。エイトシターがタイヤ痕を見つけ、私にこう言った。


「どうしますか?」


「後を追うに決まっているだろ! 私とエイトシターがアジトへ行き、ドーターとカウモは緊急事態に備えて山を守れ!」


「分かりました!」


「気を付けてください」


 その後、私はエイトシターと共に奴らのアジトへ向かった。ケンジ、無事でいてくれ!




剣地:アジト内


 どうやら一番下があいつらの食堂のようだな。そして、その奥の牢屋には幼いモンスターたちが捕まっている。あいつら、弱いモンスターたちを捕まえて売りさばくつもりだな。許せねぇ!


 俺は岩場に隠れながら食堂へ近づき、両手にハンドガンを装備した。飛び出すチャンスは一つだけ。それはあいつらが酒飲んで酔っ払った時だ。そうすればあいつらはろくに戦えないはず。その時に素早く一掃して捕まえようと考えた。


「さーて! 次の仕事に向けて気合を入れるために……」


「カンパーイ!」


 やっと酒を飲み始めた。呑気に酒なんか飲んじゃってまぁ。


 数分後、あいつらの顔は真っ赤に染まり、音痴な声で歌い、へんてこな動きで踊り始めた。どうやら酔いが回ったようだ。俺は近くにいた奴に睡眠弾を撃ち込み、すぐに別の場所へ隠れた。


「ふにゃっ?」


 睡眠弾を撃たれた奴は異変に気付いたかが、すぐに眠ってしまった。


「がははははは! こいつ、もう寝ちまいやがった!」


 別の奴が眠った奴に近付いたが、俺はそいつに向けて睡眠弾を撃ち込んだ。


「んな? 変な気分だ……」


 今睡眠弾を撃ち込まれた奴は大きな音を立てて地面に倒れ、大きないびきをかき始めた。


「バカだな。ほんとバカだな」


「二人して眠りやがって。酒はまだ残っているぞー」


 宴のおかげで、奴らは俺に気付いていない。こうなったら全員まとめて眠らせてやる! 俺はそう思い、飛び出して二丁のハンドガンであいつらに攻撃を仕掛けた。


 戦いは数秒で終わった。あいつらは全員眠っている。俺の勝利で終わったのだ。俺は眠っている連中を一つにまとめて魔力の紐で縛り、身動きを封じた。そして、捕まっているモンスターの子供たちを解放した。


「お兄ちゃん……人間なのにどうして?」


「悪い奴を許せないから。ほら、騒ぐとあいつらが起きちゃうよ」


 俺は子供たちを入口へ誘導しながら、眠りこけている連中をインフィニティポーチへ入れて行った。


 ふぅ。戦いは終わった。モンスターの子供たちを引き連れ、俺は入口へ戻った。その時、ヴィルソルとエイトシターがやって来た。


「ケンジ!」


「おーヴィルソル。全部終わったぞ」


 俺は気楽に手を上げたが、ヴィルソルは泣きながら俺に抱き着いてきた。


「バカ! バカバカバカバカバカバカバカ! 一人で無茶をするな! こんな連中、我が本気を出したらすぐに片づけられるのに!」


「悪い。俺もこいつらの悪事が気に食わなかったらつい……熱くなっちゃって」


「まぁ怪我がなくてよかったですよ。それに、ケンジのおかげで子供たちが解放された。皆この前さらわれた子ばかりですよ」


「うむ……とにかく戻ろう。皆が心配しているはずだ」


 その後、俺たちはマージドイナカ山へ向かった。




剣地:マージドイナカ山


 マージドイナカ山へ着き、子供たちは家族の元へ向かった。捕まっていた子と再開した親たちは、皆涙を流して俺に礼を言っていた。


 感謝を受けながら、俺はヴィルソルの部屋へ向かった。あのアジトで戦っている時、気になることがある。


「なぁ。あいつらは毎日ここに来るのか?」


「毎日ではないが、たまにだ。子をさらって奴隷として売る」


「奴隷市場はどこだ? 潰してくるよ」


 俺は銃の点検をしながらこう言ったが、ヴィルソルは俺の目を見てこう言った。


「奴隷市場はシリヨク王国にある」


「じゃあそこのギルドへ行って話をして……」


「バカ! シリヨク王国のギルドは国王が裏で手を回している! もし、奴隷に関することを言ったらお主は処刑されるぞ! それに……我は魔王。あまり表だった行動はできん」


「嫌な予感がするから聞くけど、もしかしてその奴隷市場って国王が絡んでいるのか?」


「そうだ。お主が捕らえた連中は……王国の手下の可能性がある」


 緊迫した空気の中、ヴィルソルはこう言った。モンスターの奴隷騒動……どうやら一つの国の王様が絡んでいる。たとえ王様だろうと何だろうと、悪事をする奴は俺が許さねー。


「ヴィルソル。俺が手を貸してやる。シリヨク王国の国王をぶっ倒そう」


「は……はぁ?」


 俺がそう言うと、ヴィルソルは驚いた表情になった。


 こんな状況、魔王というより、どっちかっつったらシリヨク王国の方が悪者だ。悪いことをする連中には、お灸をすえないと。でかくてきっついお灸を。


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