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予想外の出来事


剣地:ギルドの部屋


 ティーアが居候を始めて二ヶ月が経過した。その間、ティーアは成瀬たちとも打ち解けあい、最初の頃よりは仲が良くなっている。ただ、俺に甘えると若干殺意を感じるのは変わらないが。


 俺たちはたまに休みの日を取る。いくら優秀なスキルを持って戦えるにしても、体は疲れる。なので、週に二日は休むようにしている。で、今日は休みの日。成瀬はヴァリエーレさんとルハラと買い物。俺は部屋でだらだらしていた。しばらくきつい戦いが続いたから、体が若干悲鳴を上げていたのだ。だからだらだらするか思っていたのだが。


「ケンジ! デートしよう!」


 ティーアが俺の上にまたがり、こう言って来たのだ。


「悪い。体がだるいから今日は休ませて」


「善は急げ。さぁ、レッツゴー!」


「へ? あ、ちょ!」


 ティーアは怪力で俺を起き上がらせ、そのまま連れ去られるような感じで部屋を出てしまった。




剣地:ロイボの町の博物館


 ティーアは俺をロイボの町にある小さな博物館に連れてきた。たまに通るから存在は知っていたが、小さいから珍しい物がないだろうと俺は勝手に思い込んでいた。俺は金を出そうとしたが、ティーアが手の甲の勇者の紋章を見せると、店員は頭を下げて俺たちを案内した。


「勇者という理由でタダにしてくれたわ」


「勇者のすることかよ。ちゃんと金は払えよ」


 俺は呆れながらティーアについて行った。中は意外としっかりした博物館で、歴史に関する文言や物、それらに関する説明が細かく書かれていた。その中に、魔王との戦いに関しても書かれていた。


「やっぱり! 私の先祖のことが載っているわ」


「お前の先祖……あー。この剣を持った人のことか」


 俺らの目の前には、大きな絵があった。その絵には剣を持った人物と、それに対抗するかのようなポーズをとっている角の生えたモンスターの絵が描かれていた。


「あれがお前の先祖なら、あっちは魔王ってことか?」


「ええ……だけど、これだけじゃあ魔王というのがどんなものか分からないわね」


「もしかして調べにきたのか?」


「そうだけど、まぁデートのついで」


「重要度が逆だろ」


「別にいいじゃないの。さぁ次々!」


 ティーアは俺の手を握り、次の部屋へ向かって行った。




剣地:ロイボの町の通り


 意外と博物館は面白かった。魔王との戦い以外にも、この世界に関する物がいろいろと置かれていた。この世界に来て半年ぐらいは経ったと思ったが、意外と知らないことがあった。この世界でも戦争というのがあったし、日本みたいに古代の話とかそんなのがあった。細かいことは忘れたけど。


 今、俺たちは町で人気のある喫茶店にいる。ティーアが笑顔でスプーンを俺の口に近付けている。


「はい、アーン」


「ん……しゃーねーな……」


 俺は差し出されたスプーンのプリンを食べた。すると、ティーアは次々とプリンを俺の口に入れ始めた。


「いやー、おいしかったわねー」


「ああ。そうだな。プリンはしばらくいいわ」


 俺の腹はプリンで満たされてしまった。もうデザートはしばらく食いたくない。


「ねぇ、次はどこ行く?」


「成瀬たちと鉢合わせしない場所」


 俺がこう言うと、ティーアはその場で立ち止まった。


「どうした?」


「ケンジ! 逃げて!」


 急にティーアの雰囲気が変わった。顔もひきつっているし、目も真剣な目をしている。


「奴がくる! 魔王がくるから逃げて!」


 魔王が動いたのか? だけどここは町の中。こんな所で戦うわけにはいかない!


「ティーア! 人がいない場所へ行くぞ! 俺も戦う!」


「分かった!」


 俺はティーアの手を握り、ロイボの町から飛びだった。人がいない場所に行き、そこで魔王と戦う。


 クソッ、どういうことだ? 何で魔王がこっちにくる? ゲームだと変な洞窟や自分の城の隠し部屋の奥で主人公たちがくるのを待っているのがお約束だろ? ああもう! 考えるのはもう止めだ。こうなったらやれるとこまでやってやる!


 俺は町から少し離れた荒れ地を見つけ、そこへ降り立った。すると、町の方から成瀬たちもやってきた。


「剣地、何が起こっているの?」


「魔王が動いた。だから立ち向かう!」


 俺が剣を手にして返事をした直後、空が急に黒い雲に覆われた。


「え? 雨が降るの?」


「ルハラ……これは雨雲ではないわ……邪悪な魔力を感じる……」


 ヴァリエーレさんが冷や汗をかいてこう言った。俺もそうだ。冷や汗は出ているし、異様なプレッシャーを感じている。まさか、あの雲から魔王が現れる展開か?


 緊張感が走る中、雲の中から黒い影が俺たちの方に向かって降りてきた。どうやら、魔王様のお出ましのようだ。


「皆……気を付けて!」


 ティーアが前に出て俺たちにこう言った。影は地面に降り、羽織っていたマントを脱ぎ捨てた。


「貴様が勇者か」


 貫禄のあるような感じでこう言ったのだが……魔王はティーアと同じくらいの身長で、褐色肌の女の子だった。露出度の高い服から見える肌からは、変なタトゥーのようなものが浮かんでいるし、魔王の頭に角のようなものが生えている。ちっちゃいけど。


「何だ、魔王っていっても子供じゃないの」


 ティーアが笑ってこう言うと、魔王の顔が赤くなり、ティーアに向かって叫んだ。


「誰が子供だ! この力を見たら、貴様らも我に勝ってこないと思うこと間違いない!」


 魔王は右手を振り上げると、それに合わせたかのように地面が割れ、そこから黒い衝撃波が発生した。嘘だろ、今からこんな奴を相手にするのかよ! 神様からもらったスキルがあるとはいえ……勝てる確率が少し減った。


「やっと魔力が回復したからのう……我の目的をようやく果たす時がきた!」


 やばい! ティーアに向かって飛んでくる! 俺はティーアをかばおうとしたが、魔王はティーアを無視して俺の方に近付いた。で、俺の手を握り、空高く飛び上がった。


「フハハハハハ! これで我の目的はこれで果たした!」


「は……はあ?」


 目的は俺? どういうことだ? 理解が追い付かない!


「ちょっとー! 私の旦那返しなさいよ!」


「横取りはダメだよ!」


「早く返しなさい! いい子だから!」


「こらー! 私の旦那に手を出すなー!」


「そんなこと知るか! あっかんべー!」


 魔王は成瀬たちに舌を出し、そのまま俺を連れて飛び出した。


 魔王が誰かをさらう展開は大体ある。姫とかヒロインとか。だけど何で男の俺がさらわれる? 本当にわけわかんねーな。




成瀬:ロイボの町の外


 剣地がさらわれて、私たちは魔王の後を追おうとしたが、相手のスピードが速すぎて、追いつくことはできなかった。


「そんな……剣地……」


 私は力を失ったかのように、その場に座り込んだ。だけどティーアが私の顔を見つめ、こう言った。


「一度戻ろう。このままボーっと突っ立っていても意味がない!」


「だけど……」


「しっかりして! 気が動転してるいのは皆も同じ、私も気が動転している。今までデートしていたと思ったら魔王が襲ってくるって思ってもいなかった。それに、一つ引っかかることがある」


「それは?」


「あいつはケンジをさらう目的でここにきた。だけどケンジはガンマスターやソードマスターなど優秀なスキルは持っているけど、大した魔力はない」


「洗脳させるつもりとか」


「そして私たちと戦わせるために」


「違うよ、優秀な戦闘マシーンするつもりだ……」


 ルハラとヴァリエーレさんがこんな会話をした。ティーアはため息を吐き、二人にもこう言った。


「しっかりして。とにかく戻って話をしよう。今はできることをしよう」


 ティーアが元気付けてくれたおかげで、私は少し力を取り戻した。その後、部屋に戻って話を始めた。


「魔王の居場所は大体把握している」


「じゃあ攻め込むしかない!」


 ルハラがどこかで用意したか知らないけど、ロケットランチャーやバルカン砲などで武装してこう言った。だけどティーアは少し悩んでいる表情をしていた。


「だけど、どうしても理解ができないことがあるの」


「何か違和感でも?」


 ヴァリエーレさんにこう言われ、ティーアは頷いて返事した。


「あいつがいる場所はここからかなり離れた所にありマージドイナカ山。この辺りは寂れたせいで枯れた木ややせた草しかないことで有名なの」


「誰もいないからアジトにしたとは考えられない?」


「その可能性もあるけど……昔、マージドイナカ山は魔王が住んでいたという話があるの」


「では、先祖のようにそこにアジトを立てたか」


「ここで生まれたか」


 私とヴァリエーレさんの返事にティーアは頷き、私たちにこう言った。


「ロイボの町からマージドイナカ山までは車でも二週間はかかる。私は明日行こうと思っているけど……ナルセたちはどうする?」


「決まっているじゃない」


「ケンジを助けに行くわ!」


「嫌だと言っても無理矢理ついてくよー」


「連れてくに決まっているじゃない! 今から準備をして、明日出発しよう! 長旅になるわ」


 その後、私たちは長い旅の準備を始めた。剣地。必ず助けに行くから!


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