居合の勝負
刀を鞘に納めたオノブは、サダマに詰め寄った。
居合斬りで攻撃するつもりか?
サダマはこう思い、防御の態勢を取った。その直後、オノブは目で追えないほどの速さの居合を放った。
「なっ!」
サダマは刀でオノブの居合を防御しようとしていた。しかし、オノブの刀はサダマの刀を斬り壊し、サダマの腹をかすった。
「ぐぅっ!」
サダマは斬り壊された刀を見て、オノブから距離を取った。
「悪いの。高そうな刀を台無しにしてしまって。余裕があったら新しい刀を買ってやるぞ」
オノブは悪い笑みをしてこう言った。しかし、サダマは斬り壊された刀を握って魔力を込め始めた。それを見たオノブの表情から、笑みが消えた。
「まだ勝負は終わっていない。刀は……残っている」
「そのようじゃの」
オノブは考えていた。あの男は折れた刃の代わりに、魔力の刃を発して襲ってくると。魔力の刃は鉄で鍛えた刃とは違い、何でも斬れてしまう。それが鉄であるとも。
「覚悟」
サダマは一言こう言って、オノブに斬りかかった。居合のような構えなのか、刀を振る速度は早かった。
あの攻撃を受けたら、わしでもやばいのう。
オノブは心の中でこう思った。オノブ自身にも魔力はあるのだが、あまり使ったことはない。
「ニッコーの言うとおり、魔力を鍛えていればよかったの」
と、攻撃をよけながら小さく呟いた。その呟きが耳に入ったのか、サダマは攻撃を止めてこう聞いた。
「何もしてこないのか?」
「考え中。ちーっと待ってろ」
「なら、考えることを止めるのを手伝ってやろう。死ねば考えることはなくなるだろう」
「わしを始末すれば、思考は止まるってわけか?」
「その通りだ。死ぬ覚悟を決めたら、さっさと斬り殺されろ」
サダマはオノブに接近し、攻撃を仕掛けようとした。しかし、オノブはサダマが攻撃をする瞬間、サダマの右腕に蹴りを入れた。
「なっ!」
右腕を蹴られたせいで、途中で攻撃の軌道が変わった。その結果、振り上げようとした魔力の刃は、サダマの腹に刺さった。
「ぐぅっ!」
刃が腹に食い込んだのを感じた一瞬、サダマは魔力を解除して魔力の刃を消した。しかし、その一瞬がサダマに大きな傷を与えた。
「あーあ、見ているこっちが痛そうじゃ。鉄で斬られるのと、魔力で斬られるの、どっちが痛い?」
と、オノブは笑いながら質問をした。サダマは脂汗を額に浮かばせ、片膝をついた。少しでも休み、痛みを和らげようとしているのだ。だが、オノブは回復をさせなかった。
「悪いが、お主を斬る」
オノブはサダマに接近し、一瞬で刀を振り上げた。サダマは口から血を流し、オノブを見てこう言った。
「見事……」
この直後、サダマの腹から血が流れ、サダマはその場に倒れた。
ヴァリエーレ:アオーラ王国領域内
雑魚の片付けは終わった。それと同時に、ケンジとオノブさんの戦いも終わったようだ。戦いが終わった後、私たちは二人と合流した。
「家康の部下と戦った。今後、あいつの部下と戦うことも予想されるの」
「結構強かった?」
ルハラの質問に対し、二人は同時にこう言った。
「それなりに」
「あまり強くなかったのー」
それなりか。まぁ、頑張れば倒せるレベルの強さか。しかし、さっき倒した男は前座の可能性が高い。これからもっと強い奴が出てくるかもしれない。私は心の中でそう思っていた。
その後、周りの敵を倒した私たちは先に進んだ。しばらく先に進むと、目の前にこの世のものとは思えない光景が現れた。
「何なの……これ……」
目の前の光景を見たナルセが、驚きのあまり体を震えさせている。ルハラは目が点となり、ティーアとヴィルソルは気分が悪くなったのか、目を背けている。
「これ……全部人なの?」
「多分……」
その光景とは、無数に転がる人の死体。一部は山のように重なっていたり、別の一部では死体が腐敗して、無残なことになっていた。
「何でこんなことに……」
「奴らが始末した革命軍の連中じゃ」
「もしかして……これ全部が……」
ケンジはオノブさんの答えを聞いて、驚いていた。イウチの奴は、自分に逆らった革命軍の人たちを殺したが、面倒が処分なのか放置していたのだ。
「もっとわしらが早くこればこんなことにならなかったのにのぉ……済まぬ」
オノブさんは申し訳なさそうにこう言った。だがその時、私は死体の一部が動くのを目撃した。
「どうかしたのですか? ヴァリエーレさん」
タトミさんが私の様子に気付き、こう聞いてきた。だけど、質問に答えている暇はない。私は死体が動くなんてことはあり得ないと思っていた。しかし、今この目で死体が動き出すのをはっきりと目にしている!
「な……何でじゃ……何で死体が!」
「うわァァァァァァァァァァ! 化け物か?」
「死体が動くなんて……こんな奇天烈なことが……」
動く死体を見たオノブさんたちは、悲鳴を上げて驚いている。そんな中、私は思い出した。あのカプセルの存在を! 私たちは一度、死体が動くのを目撃したことがある!
「チッ……まさかあの男がここにきたのかしら……」
ナルセから殺意の波動を感じる。ナルセもあの時のことを思い出したのだろう。
リバースカプセル。セブンワーオンが開発した蘇生薬もどき。死体に使えば、ゾンビとなって蘇る。セブンワーオンのブレアはそれを開発し、秘密裏に販売しようとしていた。しかし、武器商人のジョンがその設計図や試作品を奪って逃走した。まさか、あのカプセルがここでまた私たちに牙をむくとは!
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