表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/594

オノブたちの過去


剣地:ココチーノ山道


 一時はどうなるかと思った。成瀬たちがあいつらを倒さなければ、今頃俺とルハラとヴィルソルは生き埋めにされていた。


「ケンジ、傷はない?」


 ヴァリエーレさんが、俺に近付いてこう聞いた。地面に埋もれかけただけで、特に怪我を負ったということはない、ただ、さっきの戦いで成瀬たちが疲れの表情を見せている。うーん。先に行きたいけど、ここは成瀬たちを休ませないと。


「怪我は大丈夫です。それより、ヴァリエーレさんたちは戦ったから休んだ方がいいじゃないですか?」


「そうね……」


「剣地の言うとおりだわ。もう辺りも暗いし、先に進むのは止めましょう」


「さんせー」


 と言うわけで、俺たちはここで野宿をすることになった。うーん、キャンプセットとか持ってくればよかったな。


 俺たちは一つに集まり、焚火の前で座っていた。


「ねぇ、アオーラまであとどの位かな?」


 と、ティーアがこう言った。


「順調に行けば、明日辺りに着くと思うわ」


「ただ、奴らの手先がいるかもしれんな」


 ヴァリエーレさん曰く、順調に行けば明日に到着するとのこと。しかし、ヴィルソルの言うとおり、奴らが雇った裏ギルドの連中と戦うかもしれない。時間はかかりそうだ。


「ねー、オノブさんたちはどうなっているかなー?」


 ルハラが俺の袖を引っ張ってこう聞いてきた。そうだ、さっきの戦いで忘れていた。オノブさんたちは飛行船の改造で山のふもとにいる。終わったら合流すると言っていたけど。


「うーん……俺も分からんな」


「ん? 何この音?」


 俺の横で目をつぶっていた成瀬がこう言った。耳を澄ますと、何か音が聞こえてくる。それは徐々に俺たちの方へ近づいていた。


「飛行船の音?」


「噂をすれば何とやら。多分オノブさんだ」


 しばらくすると、オハリの飛行船が俺たちに向かって近づいてきている。山を越えられるように装備を変えたのか、いろんな部品が付いていた。


「おーい皆―! 迎えにきたぞー!」


 メガホンでも使っているのか、大きなオノブさんの声が俺たちの耳に聞こえた。




ヴァリエーレ:オハリの飛行船


 オノブさんたちが聞くれたおかげで、ゆっくりと休むことができる。野宿をしていたら、疲れた体を癒すことなんてできない。空なら連中が襲ってくることはまずないだろうし、安心して眠れると、皆は思っているのだろう。


 今、私は外に出て風を浴びている。他の皆は疲れているのか、部屋で眠っている。


「ヴァリエーレ、お主は寝ないのか?」


「ええ。今、そういう気分じゃないの」


 私は近付いてきたオノブさんにこう答えた。ずっと疑問に思っていた。オノブさんは快く私たちを迎えてくれたけど、本当にいい人なのだろうかと思っている。それに、あの人がケンジとナルセの名前を呼ぶ時、私たちと発音が少し違うような気がする。


「オノブさん、あなたは一体何者ですか?」


「ほへ? おわっちゃ!」


 変なことを聞かれたと思ったのだろうな。オノブさんは慌ててしまったせいで、お茶が入ったマグカップを落としてしまった。


「何者って……わしゃただのエルフの旅団の団長じゃ」


「本当ですか?」


 私の顔を見てか、オノブさんは観念したような表情を見せた。


「お主のようなしっかり者が嫁なら、剣地の奴は幸せじゃのう。わしらについて、話をしないとな。いろいろ話すことがあって長くなるから、明日になったら改めて剣地たちにあれこれ話す」


「明日ですか……」


「今日はもう遅い。夜更かしは健康の大敵じゃ」


 そう言って、オノブさんは去って行った。一体、オノブさんは何者だろう……。


 翌日、オノブさんとタトミさん、ニッコーさんが私たちの部屋にきていた。


「今からわしらのことを話す。かーなーりー重要だと思うから、ちゃんと聞けよー」


 オノブさんはそう言って、咳ばらいをした。緊張感がないのか、皆はリラックスしていた。


「実はのう、わしらも剣地と成瀬と同じように転生者じゃ」


 この後、少し間が流れた。このセリフを理解したのはその数秒後だった。


「うェェェェェェェェェ! オノブさんも転生していたの!」


「どこからきたの? どこ? どこどこどこどこどこどこ?」


「一体何者なのじゃお主ら?」


「静かに。今から話すっつーのに」


 騒ぎ始めるルハラたちを静かにした後、オノブさんは剣地と成瀬を見て、こう言った。


「わしらも剣地と成瀬と同じ、日本からきた。ただ、時代が少し違うようじゃが」


「時代が違う? じゃあいつ転生したのですか?」


 成瀬の質問を聞いた後、オノブさんは考えながら答えた。


「えーっと……多分五百年前以上。それより、剣地、成瀬、お主らはわしらが何者か知りたいじゃろ?」


「はい。日本の人に会えてなんか嬉しいです」


「よーし、ちゃんと聞いとけよ……日本にいた時のわしの名前は織田信長。改めてよろしくの」


 オダ……ノブナガ……多分、これがオノブさんの正式な名前なのだろうか。もしかしたら、転生した時に名前を改めた可能性もあるけど。それよりも、正式な名前を聞いたケンジとナルセの動きが固まっている。もしかして、ニホンって国ではそうとうな有名人だったのだろう。


「成瀬……俺ら、すごい人と仲良くなっていたな……」


「ええ。まさか、教科書に載るような人と一緒に行動していたなんて……」


「あれ? もしかして、わしって未来の日本ではかなりの有名人か? こりゃまいったのう」


 オノブさんは笑いながらこう言った。まぁ、悪い人ではないということが分かっただけでもいいだろう。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ