ココチーノ山での戦い、決着
成瀬:ココチーノ山道
ヴァリエーレさんが前に出て奴らと戦っている。本気で戦っているのか、ヴァリエーレさんは奴らを圧倒していた。
「くっ、おいドリュ! あれをやるぞ!」
「おうよ! ちゃんと縛れよ!」
狙い通り。ブレッダが鎖でヴァリエーレさんを縛り、ドリュの技でヴァリエーレさんを地面に埋める気だ。
しばらくすると、ドリュから魔力を感じた。その直後、地面が変形しだした。
「ナルセ、今よ!」
「はい!」
ヴァリエーレさんは高く飛び上がった。逃がすまいと思ったのだろうか、ブレッダはヴァリエーレさんを捕まえている鎖を動かした。この行動をするだろうと予測していた。絶対こうすると思っていた!
「予想通り」
私は奴の鎖の周辺に闇の重力を発生させた。そのせいで、鎖はドリュが変形させた地面にめり込んだ。
「なっ!」
鎖が地面にめり込んだのを察したブレッダは、急いでドリュに向かって叫んだ。
「魔力を解除しろ! 鎖が地面に埋もれやがった!」
「ちょっと待ってろ、解除するのに時間がかかる」
「そんな時間与えないわよ」
ヴァリエーレさんは魔力を破裂させて鎖を破壊した後、ドリュの近くに着地して一瞬で奴を斬り刻んだ。その攻撃のスピードはドリュにも見切ることはできなかった。
「な……あぁぅ……」
「ドリュ!」
地面に埋もれかかったブレッダは、ドリュのことを心配していたのだが、奴は少し笑っていた。あいつが倒されたから、この魔力が解除されると思っているのだろう。
「あいつらは俺がぶっ倒してやるからな!」
「どうやって?」
私は奴に向かってこう言った。
「どうやって? そりゃーもちろん鎖で縛ってその後は……あれ?」
ようやく奴も気付いたようだ。ドリュが倒れたのに、地面の変形は直っていないことを。
「な……何故だ?」
「残念でした。私も大地を変えることができるのよ」
私は奴に向かってそう言うと、地面をさらに変形させた。
「うわァァァァァァァァァァ!」
「あんたらは少しやりすぎたわ。少し痛めつけてあげるわ……ねぇ、皆!」
私は攻撃の構えをとっている剣地たちに向かってこう言った。皆、もう攻撃する準備はできているようだ。
「さーて、思いっきりやるぞ、皆!」
剣地の声の後、皆は一斉にブレッダに襲い掛かった。
アオーラ城の屋上、イウチは望遠鏡で外の様子を見ていた。
「フフフ……あのバカ共が、まだわしらに歯向かうつもりか」
アオーラ城の外は、イウチに反する者たちが武器を持って勇ましい声を上げていた。そんな彼らを、イウチが雇ったフォリーティックの傭兵たちが相手をしていた。
外での戦いを見て微笑んでいるイウチの後ろから、二人の男が近付いた。
「お楽しみの最中申し訳ありません」
「あんたに入れておきたい話があってね」
「何じゃ……あのバカな連中が死にゆく光景を見ていたのに」
イウチは渋々こう言って、二人の男と共に下の階に向かった。
この男たちは、デーモンノイズとフレッドデルタのボスである。デーモンノイズのボス、ベロンはイウチにこう言った。
「あんたが言っていた怪しい動きをしている連中の討伐を、部下たちに任せた」
「その結果、全員空でやられた」
そう言うのはフレッドデルタのボス、ナックである。彼は机の上に置いてあった煎餅を手に取り、食べ始めた。話を聞いたイウチは少し考えながら、こう言った。
「しかし、ここにくるのはココチーノ山とハーヤナギ谷を越えねばならん」
「山で待機している連中からの定期連絡がない。多分やられた」
ベロンはこう言うと、椅子に座って話を続けた。
「これ以上、この仕事をやっていたら部下たちが皆捕まってしまう。こうなったら、今後の仕事ができなくなる」
「フレッドデルタもそうだ。こっちは本来暗殺の仕事だ。殺しのためにあんたの仕事に付き合っていたが、仲間が捕まったら仕事ができない。あんた以外にも依頼人はいるからな」
ベロンとナックがこう言った直後、イウチは手を叩いた。
「ならこうしよう! 今、わしらを狙うギルドの連中を倒したら……それぞれ一億ネカをやろう! それだけじゃない、今まで君たち裏ギルドが行ってきた犯罪を、全てなかったことにしてやろう! これからやる犯罪も、全てなかったように根回ししてやる!」
この言葉を聞き、部屋を去ろうとしていた二人の足が止まった。
「その話、本当か?」
「もちろんだとも、悪い話じゃないだろ?」
「確かに」
「今までやった悪いことがチャラになるうえに、一億ネカがもらえるか……いい話だ」
その後、二人はイウチと話し合いを始めた。
「これからのことだが、俺たちは協力してギルドの奴らを追い詰める」
「情報によると、奴らに手を貸す連中もいるらしい。ついでにそいつらをぶっ倒す」
「ほうほう。それで」
「戦場はここだ。この城の周りで行う」
ベロンの話を聞き、イウチは慌てた。
「な……何故ここで戦う?」
「部下に奴らと戦わせても、負けるのが目に見えている」
「だとしたら、総力戦に持ち込んで一気に倒す」
「戦闘力では負けているが、数ではこっちの方が圧倒的に勝っている」
「数で戦うのか……」
イウチは話を聞き、考え始めた。しばらくし、イウチは二人にこう懇願した。
「戦ってもいいが、この城だけは絶対に壊すな」
「ああ。任せろ」
「奴らの首をそろえて持ってきてやるぜ」
「おお……頼もしい言葉だ」
感激したイウチは、笑顔を見せながら礼の言葉を言った。そんな中、部屋の外にいたギャッツが中に入った。
「お話し中失礼します」
「あんたは誰だ?」
「武器商人のギャッツってもんだ。イウチさん、例の品を持ってきたぜ」
そう言って、ギャッツは小さな袋をイウチに渡した。それを見たイウチは、にやりと笑った。その笑みを見て、ベロンはイウチにその袋の中身を聞いた。
「何が入っている?」
「とっておきの物じゃよ。これと君たちがいれば……この戦いに勝てる」
と言って、イウチは不気味に笑い始めた。
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