風を捕らえろ
ティーア:ココチーノ山道
魔王とルハラを捕らえた鎖野郎、ケンジを生き埋めにしようとしているモグラ野郎。早くどっちも倒したいけれど、猛スピードで攻撃してくる奴が一番厄介だろう。この状況中、ケンジたちを助けることを妨害してくる奴が一番いやらしい。ナルセとヴァリエーレはあの二人と戦うようだ。なら私は、あの素早い奴と戦おう。
一回は姿を捕らえたけど、奴はもう一度姿を消してしまった。
「シブル! 援護をしてくれよ!」
あの鎖野郎が、あいつ奴の名前を叫んでいた。敵の名前なんてどうでもいい、どうせすぐ忘れてしまうから。
さて、奴が援護に回らないように、サクッと倒さないと。その前に、どうやって奴の居場所を探ろうか。むやみに武器を振り回しても、効果はない。魔力を使ったとしても、無駄になるかもしれない。
しばらくすると、私の耳に足音が聞こえた。私はとっさに動き出し、そこに向けて光の玉を放った。
「おわっ!」
どうやら、奴はあそこにいたようだ。私の攻撃を察し、かわしたようだけど。
「ブレッダ、ドリュ! どうやらあのガキが俺と遊んでもらいたいようだ、あのガキの相手をしてから合流する!」
「分かった。じゃあ俺はあの嬢ちゃんとボインちゃんの相手をしているぜ!」
この会話を聞く限り、シブルの奴は私に狙いを定めたようだ。上等! こっちは最初からあんたを狙っていた!
「遊びの時間はすぐに終わる。死んでも俺を恨むなよ……」
シブルの奴は猛スピードで走り出した。足音を頼りにしようとしたが、風の音で足音が聞こえなくなってしまった。この風は誰の魔力でもない。自然の風だ。
「おらよ!」
奴が目前まで近づいていた。私はナイフでの攻撃を回避し、奴に反撃を行ったが、奴は私の攻撃を難なく避けた。また猛スピードで移動しているのか、姿が消えた。
どうしよう。風のように走る奴をどうやって相手しよう。私は動きながら、何か策はないかと考え始めた。その時、急に奴の姿が見えた。
「グッ! ヤベ!」
何かを踏んだのか、痛そうにしていたな。私は奴が止まった場所を調べると、そこには少し鋭利な石があった。そうか、奴はこれを踏んでしまったのか。待てよ。こいつは使えるかも。
ある考えが浮かんだ私は、その場に立ち止まった。
「ハッ! 狙われるように、その場に止まったのか?」
奴の声が聞こえた。さぁこい。お前を捕らえる罠はもう張ってある。
それからすぐのことだった。私の目の前に奴が現れた。痛みを我慢しているのか、すごく変な顔をしている。
「ぐぐぐ……お前……一体何をした?」
「罠を張っていたのよ。さっき、お前が石を踏んづけたところを見て思いついた。ありがとね」
私の周りには、少し大きな金平糖のような物体がある。これは光で作った鋭利な罠である。そこに近付けば、敵はそれを踏みつける。それに、目立たないようにかなり小さくしてある。
「グッ……クソッたれが!」
「そのナイフで私を刺すの? その足でできる?」
奴はかなり強く踏んづけただろうか、足から血がかなり流れている。相当奥に食い込んだようだ。
「グゥッ……あぁぁ……」
「さぁ。負けを認めなよ。そうすれば、それを消してあげるよ」
「ヤダね。デーモンノイズの顔に泥を塗るようなことはしたくない」
「裏ギルドのくせにプライドを持っているのか。汚そうなプライドだねぇ」
「何とでも言え」
その直後、シブルはナイフを私に向け、魔力を溜め始めた。
「くたばれ……ショットナイフ!」
風の勢いで、ナイフを飛ばしたか。だが、私は敵が何かをするだろうと思ってバリアを張っていた。飛んできたナイフはバリアを突き抜けることはできなかった。
「そんな……」
「これで終わりだね」
私は罠を消し、戦意を失った奴を拘束した。こっちは何とかなった。後はナルセとヴァリエーレの所へ行かないと。
成瀬:ココチーノ山道
「ドリュ、あの嬢ちゃんを狙うぞ!」
「あいあいさー!」
奴らがこう話した直後、鎖が私に向かって飛んできた。ヴァリエーレさんが剣で鎖を弾き飛ばしてくれたが、足元の地面が変だと思った。
「ヴァリエーレさん、抱き着いて!」
「ええ」
ヴァリエーレさんが私の体に抱き着いた瞬間、私はスカイウイングで上空に上がった。ドリュの攻撃を避けることはできたが、今度は鎖が私に向かって飛んできた。
「しつこい鎖ね!」
ヴァリエーレさんが銃を持って鎖を破壊したのだが、鎖の周りに魔力が発生し、再生し始めた。
私とヴァリエーレさんは地上に戻り、態勢を整えた。奴らも鎖を元に戻し、ドリュも地面に上がっていた。
「成瀬! ヴァリエーレさん! ちょっとやばいよ、これ!」
「うわァァァァァァァァァァ!」
「くっ……我らの方にもケンジと同じように……」
剣地とルハラの悲鳴が聞こえた。剣地の方を見ると、もう体の半分くらいが地面に埋まっている。さらに、ルハラとヴィルソルも地面に飲まれようとしていた。
「時間がないわ……」
「ええ……ちょっと本気出してもいいかな……」
私は自分の中の魔力が徐々に湧き出ていくのを感じていた。剣地とルハラ、ヴィルソルに危険な目を合わせた腐れ脳みそ共を絶対に許さない……半殺しどころか、十分の九ほど殺してやろう。
「おい……なんだかあの嬢ちゃんの魔力が急に上がっているぞ」
「俺たち、まずい敵を相手にしたかもしれないな……」
私の魔力を察したのか、奴らは冷や汗をかきながら会話をしていた。今頃察してももう遅い。私は魔力を解き放ち、奴らに襲い掛かった。
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