到着、ココチーノ山
成瀬:オノブの飛行船、治療室
戦いが終わって、数時間が経過した。私と剣地の傷は治ったものの、今度はヴァリエーレさんたちが治療することになった。変わった動きをする敵を相手にしたせいか、かなり傷もあったし疲れも見えている。
だけど、相手の方も傷は大きい。ヴィルソルが相手の飛行船を破壊してくれたおかげで、敵との遭遇はあまりない。まぁ、飛行するモンスターと遭遇するけどね。
しばらくすると、オノブさんから連絡が入った。
「おーい、そろそろココチーノ山に到着するぞ!」
どうやら、ココチーノ山に近付いているようだ。そうだ、まだ戦いは終わっていない。ここからが本番だ。これからココチーノ山を越えて、ハーヤナギ谷を渡り、アオーラ王国へ行かなければならないのだ。私たちは治療室から出ようとした時、タトミさんが話しかけてきた。
「皆さん。山へ向かうのは明日だと、オノブ様からの伝言です」
「そうじゃのう、我々も戦いで疲れている。山を登るのは明日からでも問題はないだろう」
「では、布団の用意をしますので、もうしばらくお待ちください」
ヴィルソルの言葉を聞いたタトミさんが、戻って行った。明日から山登りか、イルシオンシャッツのことを思い出すな。だけど、明日から向かうことになるココチーノ山はイルシオンシャッツよりも登りは楽らしい。まぁ……敵が出てくるから、戦う面に関してはきついと思うけど。
数分後、私たちは案内された部屋で休むことになった。
「さーて、明日からまた忙しくなるし、もう寝ようぜ」
と、剣地が布団の上で大の字になって眠り始めた。私は剣地の横の布団に入り、寝ようとした。すると、ヴァリエーレさんが枕を見て呟いた。
「なんだか小さな枕ね」
「それに少し硬いよねー。だけど、それが私の頭にフィットするから面白い」
ルハラが枕を使って横になり、こう言った。確かにそうだな、この枕……まるで日本の昔の人が使うような枕だな。
「とにかく今日は寝ようよ……私……もうねむ……」
ティーアは話している途中であくびをし、眠りの世界へ入って行った。相当疲れたみたい。私も傷の治療とかで魔力を使ったせいか、疲れている。今日はもう何も考えずに寝よう。
剣地:オハリの飛行船
翌朝。オハリの飛行船はココチーノ山の前にいた。ココチーノ山はイルシオンシャッツより小さな山だったけど、この高さじゃあ飛行船で超えるのはきついだろうな。
「うーむ……やはり少し飛行船を改造しないといけないかな……」
ニッコーさんが山を見て、考え込んでいた。そんな中、オノブさんは俺と成瀬に尋ねてきた。
「お主らはどうする? 先に行くか? このままわしらと一緒に待つとなると、改造するのに結構時間がかかりそうじゃが」
「そうですね……」
しばらく皆と考えた結果、俺たちは先に山を登ることにした。オノブさんもその返事を聞き、了解と言った。オノブさんたちも敵に狙われている。山の中に潜んでいる敵がオノブさんたちを狙うだろう。俺はそいつらを倒すことも考えていた。
「わしらは飛行船の改造が終わり次第行くことにする。道中また拾うことになるから、よろしくの」
「はい。またよろしくお願いします」
というわけで、しばらくオノブさんたちとは別行動をすることになった。
山を登り始めて数分が経過した。この山に住むモンスターとは何匹か遭遇したが、俺たちの魔力や微妙に感じるプレッシャーを察したのか、大体が戦う気を失って逃げて行った。
「私たち、強くなったのね」
「多分、強くなりすぎたみたい」
成瀬とティーアがこんな会話をしていた。モンスターとの戦いは厄介だから、逃げていくのはありがたい。
歩き始めて数時間が経過した。俺たちの目の前に、看板が見えたのだ。
「ここから五百メートル先、ハーヤナギ谷……何だ、結構簡単に進んだな」
あと少しでゴール……じゃないよな。まだハーヤナギ谷を抜けなければならない。だけど、ここまで何もなかったことが幸運に思う。
ん? はぁ……幸運は終わった。
「皆、武器を持ってくれ」
周囲から魔力を感じた。モンスターの魔力ではない、人の魔力だ。どこかにアオーラ王国の奴らが雇った裏ギルドの奴らがいるな。いることは予想していたが。
「おい、さっさと出てこい」
「いるのはもう分っているよー」
ヴィルソルとルハラがこう言った直後、二人の体は突如現れた鎖に縛られてしまった。
「うわっ!」
「およよっ!」
「まずは二人……」
遠くの茂みから、鎖を持った男が姿を現した。俺は二人を助けるため、鎖を銃で撃ったのだが、効果はない。そんな時、俺の足元から何者かが現れた。
「これで三人目だ!」
驚いた俺は動こうと思ったが、その前に地面から現れた奴が俺の足を掴み、そのまま地面へ埋めてしまった。
「剣地、ルハラ、ヴィルソル!」
成瀬が俺たちに近付こうとした瞬間、ヴィルソルが大声で叫んだ。
「これは罠だ! 我らに近付いたらナルセも捕まるぞ!」
この声を聞いた成瀬は後ろに下がり、ヴァリエーレさんとティーアで周りを見回していた。
「敵は鎖の男と地面に潜った男……」
「いや、まだ一人いるよ」
ティーアはこう言うと、周囲に闇を放った。すると、ナイフを持った男が姿を現した。
「とんでもない速さでちょこまか走っているの、バレバレだよ」
「チッ……俺のスピードを見破るとは……」
どうやら、敵は三人いるようだ。俺が感じる魔力も三人分だしな。急いで地面から抜けようともがくが、足は動かない。え? ちょっと待て、それどころか徐々に地面に埋もれてく!
「あの坊主は始末確定だぜ。俺の魔力でゆっくりと地面に潜るように仕掛けたからな」
やばい、早くあいつを倒さないと、俺は生き埋めになってしまう! 成瀬たちもこのことを察したのか、さっきより険しい顔になった。これじゃあ戦えない。成瀬たちに任すしかないか。
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