上空の戦い
成瀬:オハリの飛行船、外
強い魔力がこっちに近付いてくる。剣地は武器を構えているが、オノブさんはさっさとかかってこいと言って刀を振り回している。ニッコーさんは血がたぎっているオノブさんを何とかなだめている。しばらくし、一人の男がこっちにやってきた。
「まさか、手下連中を簡単に倒してしまうとは。これでも戦える奴らばっかりなのに」
「はん、あんな雑魚連中わしの相手にもならないわ」
オノブさんは刀を構え、こう言った。オノブさんを見て、男は鼻で笑った。
「威勢がいいな、ちょびひげ野郎」
「わしのトレードマークに文句あんのか?」
「ねーよ。そうだ、俺から一つアドバイスをやろう。あんた、コメディアンの方が向いているぜ」
「それじゃあわしから一言、貴様をぶった斬る」
オノブさんは目に見えないほどのスピードで居合斬りを放った。しかし、男は盾で斬撃を回避し、後ろに下がった。
「今の時代、刀は古いでないかい?」
「わしは刀が好きで使っているのじゃ。文句あっかコノヤロー」
「そんなこと言っていたら、このダリィに殺されちゃうぜ?」
あの男、自分でダリィと言っていたが、あいつは大きなライフルを右手一つで構え、オノブさんを狙って撃った。しかし、ニッコーさんが前に出て、刀でライフル弾を弾き飛ばした。
「くぁー、痺れるー」
ライフル弾が硬かったのか、ニッコーさんは痺れる手を抑えながらこう言った。
「剣地殿、成瀬殿、ここは私とオノブ様で何とかしますので、あなたたちは中へ避難を……」
ニッコーさんは私たちに下がるように言ったが、その前に剣地は奴に向かって突進している。あーあ、あいつはやる気らしい。
「ニッコー、剣地はお前が言う前に突っ込んで行ったぞ」
「あらら……大丈夫かな?」
「大丈夫です。見たところ、あいつはそんなに強くなさそうなので」
私は剣を構え、剣地の後を追って走って行った。
「うォォォォォ!」
剣地の声が聞こえる。剣地は剣と盾を装備し、ダリィに向かって走っているようだ。
「無暗に走ると意味ないよー」
「それはどうかな?」
「何?」
私は察した。剣地から微かに魔力を感じている。雷を発して奴に攻撃するつもりだ。あいつの装備を見たところ、魔力に対しての防御力はなさそうだ。これなら剣地の魔力でも大きな痛手を与えられるだろう。
「痺れな」
剣地は電撃の刃を発し、あいつに攻撃を仕掛けた。
「電撃で作られた飛ぶ刃か……効かないよ、そんなの」
剣地が放った攻撃はあいつの盾で防御されてしまった。しかし、剣地は次の攻撃に入っていた。
「おらよ!」
「剣を振り下ろすつもりか? この盾が見えないか?」
あいつは剣地が振り下ろす剣を、盾で防御した。その時、防御した盾の周りで発生している電撃が、剣地が持つ剣の刃に戻って行った。
「なっ!」
「これでもう一回魔力が使えるぜ」
剣地は油断した奴の近くまで接近し、雷を纏った刃で奴を一閃した。
「がっ……」
「おお! 結構やるのう!」
オノブさんは剣地の戦いを見て、歓喜していた。ニッコーさんもすごいと言っているような表情をしていた。しかし、あれだけでダリィの奴は倒れなかった。
「意外とやるねぇ。だけど……まだまだ俺はやれるよ」
「おいおい、お前の相手は俺一人じゃないぞ」
剣地は私が魔力を開放していたのを察知していたようだ。ダリィは私が光の球体を発していたことを今知ったようだ。
「そこの娘、魔力を使うつもりか?」
「ええ。それが何か?」
「この状態でもか?」
何と、奴は両腕に隠し持っていたナイフで剣地を刺し、盾になるように前に立たせた。
「グッ……そんなもんも持っていたのか……」
「さてどうする? このまま魔力を使えば俺と一緒にこの坊主もくたばっちまうぜ?」
なんて卑怯な……このままじゃあ剣地に攻撃が当たる……仕方ない。私は魔力を解除した。その時、奴は私に向かってライフルを放った。
「そのままくたばれ!」
私は何発も飛んでくるライフル弾をかわしていったが、そのうち一発が左腕に、別の一発が右足に命中した。
「あぅ!」
強烈な弾丸を受けたせいで……体が痛み出した。左腕と右足から、強い痛みを感じ、それが徐々に全身に伝わっているようだ。
「成瀬殿! 今治療します!」
「お願いします……私も魔力を発して、回復しますので……」
私はニッコーさんの手を借り、治療を始めた。しかし、奴は私とニッコーさんに狙いを付けてライフルを構えていた。
「まずはお前から殺す」
まずい……このままじゃやられる……そう思った時、盾にされている剣地から魔力を感じた。
「おい、これ以上俺の嫁に手を出すな」
「あぁ?」
何と、剣地は刺さっているナイフを無理矢理抜き、後ろに立っているリディを背負い投げした。
「おお、懐かしき投げ技」
オノブさんが後ろからこう言った。
「覚悟しやがれ、テメーは俺が倒す」
剣地は剣をリディに向け、魔力を発した。
ティーア:オハリの飛行船
私とヴァリエーレは船内で待機している。今はケンジとナルセが外に出て戦っているけど、別のことがあったらすぐに動けるようにしないと。
そんな時、少し離れた所で男たちの悲鳴が聞こえた。そうだ、魔王とタトミさんが捕らえた敵を拷問している、どれだけ酷いことをされているのだろう。
「ちょっと様子見てくる」
「ええ、気を付けてね」
私はヴァリエーレにこう言って、拷問の様子を見に行った。部屋の外にはルハラがいた。
「今どうなっているの?」
「すげーことになってるよー」
窓から部屋を見ると、タトミさんが敵を斬って回復をしていた。別の敵は魔王が相手をしていて、闇の炎でいろんな所を焼いていた。
「さぁ、話をしてください。でないと……次の攻撃で死ぬかもしれませんよ」
「嫌だ……」
「そうですか、ではもう一回」
「ギャァァァァァ! あ、回復してる」
「話す気になりましたか?」
「嫌だ……」
「では……今度こそ死ぬかもしれませんね……」
「止めてくれ……これ以上斬られたくない……」
「それなら、話をしてください」
「だけど……」
「そうですか」
拷問の内容は結構きついようだ。こんなんで本当に話を聞けるのだろうか……まぁ、聞けるだろうな。こんなことをしていれば、相手の心は折れるだろうし。そう思い、私は部屋に戻って行った。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!