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勇者の存在


剣地:エコウズ山の山中


 ベロラーダの騒動から三ヶ月が経過した。今、俺たちはロイボの町から車で三日ほどかかるところにあるエコウズ山にいる。依頼でそこにいるという、ガベーダルという凶暴な鳥の討伐の仕事をしているのだ。


 依頼人は山の近くの村人。ガベーダルが村に降り、暴れるせいで村の作物が台無しになったり、村人の命が奪われたりしている。それで、俺たちが依頼を受けたというわけ。


 俺の横にはヴァリエーレさんがいる。後ろには、成瀬とルハラが待機している。いつ、どのタイミングでガベーダルに襲われてもいいように、俺たちは武器を構えていた。しばらくし、バッサバッサと大きな羽音が響いた。どうやら、ガベーダルのお出ましのようだ。


「行くわよ、皆!」


 ヴァリエーレさんが叫んだ直後、俺たちを見つけたガベーダルは奇声を上げた。


 まず、俺が大剣を構え、空高く飛び上がった。ガベーダルは飛び上がった俺を目で追っていた。俺に攻撃を仕掛けるようだ。だけど俺はおとり。下ではヴァリエーレさんがガベーダルの足を剣で攻撃していた。足のダメージに気付いたか、ガベーダルはヴァリエーレさんを蹴り飛ばそうと、足を後ろに引いた。その動きを察知し、ヴァリエーレさんは後ろに飛んだ。


「おらあああああああああああああああ!」


 ガベーダルの動きに隙があった。チャンスと思った俺は、思いっきり大剣を振り下ろした。あの鳥、俺が近くに飛んでいることを忘れていたようだ。鳥は三歩歩くと覚えたことを忘れると言うけれど、それはこの世界でも同じのようだ。


「ケンジ、下がってー」


「一気にぶっ放すわよ」


 後ろから成瀬とルハラの声が聞こえた。二人は魔力を解放、それを一気にガベーダルにぶつける気だ。俺はスカイウィングを使い、下にいるヴァリエーレさんを抱えて後ろに下がった。


「ケンジ、あの鳥は魔力で攻撃されることを察しているみたい」


「分かりました。俺が成瀬とルハラの援護をします!」


 俺は地面に降り、ヴァリエーレさんを下ろした後、アサルトライフルを装備し、ガベーダルに向かって弾丸を放った。弾丸はあいつの足に命中し、貫いた。


「今のうちにドカーンとやれ!」


「オッケー!」


 成瀬とルハラ、二人の合体魔力がガベーダルに炸裂した。巨大な炎と竜巻がガベーダルを襲い、しばらくして上空から雷雲が発生し、ガベーダルに向けて何回も落雷が発生した。


「これだけやれば、あいつも倒れるだろ」


「そうね」


 しばらくし、攻撃は止まった。強力な魔力のせいか、辺り一面の草や木は燃えていた。その中で、黒焦げになったガベーダルが倒れていた。


「任務達成ね」


「じゃ、村に戻ろうか」


 ガベーダルの討伐を確認した俺たちは、村に戻った。




剣地:近くの村


 村に戻ると、俺たちは村人たちから歓迎された。ガベーダルの討伐は、すでに村に知れ渡ったようだ。


「ありがとうございます!」


「ギルドの車が到着するのは明日の午前のようです」


「それまで、この村でゆっくりしていってください」


 村人の代表が、俺たちにこう言った。俺は成瀬たちの方を振り向き、こう言った。


「じゃ、言葉に甘えるか」


 その後、俺たちは村人が用意してくれた食事を食べ、用意してくれた村一番の宿で一晩過ごすことになった。


「あなた様が夫婦であることは知っております」


 と、宿の主人が俺に近付いてこう言った。


「皆様がくつろげるようにファミリールームを用意しました。疲れの方を癒し下さい」


「ありがとうございます」


 その後、俺たちは用意してくれた部屋へ行き、今日の戦いを癒すために早く風呂に入って寝た。


 翌朝になった。俺はあくびをして辺りを見回したが、隣のベッドで寝ている成瀬たちはまだ寝ているようだ。ぐっすり眠っているようだし、起こすのも可哀そうだなと思ったその時、ドアが開いた。宿主人が新聞をもって部屋に入ってきたのだ。


「おはようございます、今朝の新聞です」


 俺は主人から新聞を受け取った。目にして俺が一番気になったのが、ティーア・コラジェムという勇者の少女が、魔王討伐のために動き出したらしい。


 勇者と魔王。よくやっていたゲームで聞いた単語だ。魔力と言うファンタジー作品のような設定の力はあるのだが、勇者と魔王がこの世界にいるなんて俺は思ってもいなかった。




剣地:村の出入り口


 数時間後、出かける準備を終えた俺たちの前に、ギルドの車が到着した。俺らが車に乗り込むと、村人たちが総出で俺たちを見送ってくれた。車に乗って移動し始めて数分後、ギルドの人がこう言った。


「ケンジさん。帰ってからの予定はありますか?」


「予定ねぇ……」


 俺は考えたが、結局依頼を受けてギルドランクを上げることしか思いつかなかった。


「なんか依頼を探してやるだけですかね」


「そうですか。実は、勇者ティーア様がロイボの町に向かっているという情報を聞きました」


「勇者?」


 成瀬がこう聞くと、ヴァリエーレさんが今朝の新聞を成瀬に渡した。


「へー。この世界には勇者と魔王がいるのね」


「魔王は最近動きを始めたみたい。それに合わせて、ティーアって人も討伐のために動いたって」


「ふーん」


「で、何でその勇者がロイボの町に?」


 ギルドの人は、少し間をおいて俺たちにこう言った。


「実は……ティーア様は君たちの噂を聞き、仲間に入れようとしているのです」


「そうなんですか」


 へー。勇者が俺を仲間に……勇者が俺を……それってすごいのか?


「じゃあ俺が魔王退治に?」


「はい」


 俺が魔王退治か。まさかゲームのような展開になろうなんて思ってもいなかった。それもいいなと思ったが、成瀬が大声で怒鳴った。


「ダメよ! そんなのダメ! 魔王退治って危険でしょ? そんな危ないこと、私の旦那にさせたくないわ!」


 あー……また成瀬の気持ちが爆発した。と思ったその矢先。


「私もナルセの意見に賛成。いくら勇者とはいえ、魔王退治という危険な仕事はさせたくないわ」


「そもそも魔王を倒すまで、ケンジが家に帰れないってことでしょ? ダメダメー」


 俺の嫁たちは反対のようだ。だが、ギルドの人は冷や汗をかいて返事した。


「確かにそうだが……ティーア様は何が何でもケンジさんを引き入れるつもりです」


 その後、成瀬たちの罵倒が馬車の中で響き渡った。ロイボの町に着くまであと三日。それまで俺は嫁たちの愚痴を聞かなければならないのか。




ティーア:ロイボの町


 ケンジという凄腕の戦士がいるという町に到着して、三日が経過した。


 噂でしか聞いたことないが、彼は異次元からの転生者であり、転生時に神様のおかげか何か知らないけど、ソードマスターやガンマスターなどの高度なスキルを持ち、それらを使ってあらゆる事件を解決してきた。この前のベロラーダ卿のスキャンダル発覚も、彼が一役買ったという話だ。


 その腕なら、魔王とも戦えるはず。私はそう思ってロイボという町に到着したが、彼は嫁と共にエコウズ山に行ったとのこと。依頼が終わったから帰ってくるのが三日だと、ギルドの役員が言っていた。


 ようやく三日が過ぎたので、私は彼が帰ってくるのが今か今かと待っていた。


「ティーア様」


 ギルドの役員が私の名を呼んだ。私はベッドから降り、扉を開けて応答した。


「どうかしたの?」


「ケンジさんたちが戻りました」


「ホント! やーっと戻ったのね!」


 私は大急ぎで町の外に向かった。息を切らせて走る中、彼との妄想……いや違った、冒険をする姿を想像した。しばらく走ると、馬車から誰かが降りてくるのが見えた。もしかして、それがケンジ?


「待ってたわ、未来の旦那様!」


「あなたが勇者?」


 と、声を出したのは綺麗な黒髪の少女。それから、エルフの少女と私以上におっぱいがでかい女が馬車からこう言った。


「泥棒猫」


「寝取り女」


 あ……もしかすると、こいつらがケンジの嫁なのね。


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