空からくる者
剣地:フーリーン大陸海岸
ふぅ……ぱっと見で数は三十人くらい。だけど、まだ海の方から弱弱しい魔力を感じる。波から身を守るために魔力を使ったのだろう。
「行くぜ、オラァ!」
「お前をぶっ殺した後、女どもをいたぶってやるよ!」
奴らは威勢のいい声を上げながら、俺に襲い掛かってきた。しかし、走る速度が遅く、後ろの方にいる連中は立ち上がるだけでも精一杯のようだ。
「死ねぇ!」
と、俺の目の前にいた奴が剣を振り下ろしてきた。しかし、その勢いは弱く、剣を振り下ろした直後にそいつはよろめいた。
「グッ……力が……」
「はぁ……はぁ……こんなんじゃあ勝てねぇ……」
奴らは弱音を吐きながら、その場に倒れ始めた。後ろにいたヴィルソルは、ため息を吐いてこう言った。
「無茶したからこんなことになったのじゃ」
ほんと、ヴィルソルの言うとおりだ。しかし、俺に向かって何かが飛んでくる音が聞こえた。俺はそれを手で掴んだ。その際、少し手を切ってしまったようだ。痛みが走ったのだ。
「グッ」
一体何が飛んできたのか調べると、それは折り鶴だった。
「折り鶴? 何でこんなもんが?」
「ケンジ、前見て!」
ルハラの声が聞こえた。俺は前を見ると、手裏剣みたいなものが俺に向かって飛んできた。
「おわっと!」
俺は何とか剣を装備し、飛んでくる手裏剣を叩き落とした。それを見ると、なんか折り紙で作られたような手裏剣だった。
「あいつ……まだ戦えるのか」
「知っているのかルハラ?」
この攻撃の正体について、ルハラは知っているようだ。聞こうとしたのだが、何者かが俺を襲った。
「はぁ……はぁ……やっと追いついたぞ……」
びしょ濡れの男がルハラを睨んでこう言った。服はボロボロで、体のあちらこちらに打痕がある。もしかして、マカロニさんの船でルハラと戦っていた奴か?
「サメの餌にならなくてよかったね」
「うるさい! お前だけはこのミガーが始末する!」
奴の狙いはルハラのようだ。しかし、俺が目の前にいることを奴は気にしていないようだ。
「おい、お前の相手は俺だぜ!」
俺は銃を撃ち、背後から奴を攻撃した。
「大丈夫だ。あのエルフを始末する前に、貴様を始末する!」
ミガーって奴は折り紙で盾を作り、俺の弾丸を防御した。
「死ねぇ!」
奴は折り紙で作った手裏剣を飛ばし、俺に攻撃を仕掛けた。
「剣地!」
成瀬が俺を気にしてか、大声で俺の名を叫んだ。
「大丈夫だ! こんな奴、すぐにぶっ飛ばしてやるよ!」
「ハッ! 威勢のいい声を出しやがって!」
奴はそう言うと、背後に下がって無数の折り鶴を発した。
「喰らえ、葬舞鶴!」
その直後、奴の周りの折り鶴が俺に向かって飛んできた。俺はそれをかわしていったが、後ろにいた奴の仲間に折り鶴が命中していった。
「ぐァァァァァァァァァァ!」
「ミガーさん……俺たちを巻き添えに……」
「役立たず共が、攻撃の邪魔だ! 死ねばいいのに」
このクソ野郎! 仲間を巻き添えにして俺を倒すつもりだ!
「クソ野郎!」
「あんたは一回地獄を見なさい」
成瀬の恐ろしい声が聞こえた。頭上を見ると、巨大な闇の塊が空に浮かんでいた。
「なん……だと……」
奴も空にある闇の塊を見て驚いていた。その塊は、真っ逆さまに奴に向かって落ちて行った。
「ギャァァァァァァァァァァ!」
闇の塊に飲まれた奴の悲鳴が聞こえる。はぁ、なんだかんだ成瀬が決めちゃったなー。
数分後、俺たちは倒れた裏ギルドの連中を縛り上げ、今後のことについて話をまとめていた。まず、最初にすることは近くの町へ行ってアオーラ王国の情報を得ること。そこから道具を整えてアオーラ王国へ向かい、奴らをぶっ潰す。イウチを倒せば、この大混乱は収まるだろう。
「話はまとまったし、行こう!」
俺は立ち上がってこう言うと、突如空から何かの音が響いてきた。
「何これ?」
「飛行船の音……」
ヴァリエーレさんとティーアが、空を見上げてこう言った。俺も上を見上げ、何があるのか調べた。空には、巨大な飛行船が飛んでいた。
「アオーラ王国の連中かな?」
「違うみたい。王国の紋章が描かれてないわ」
「じゃあ一体誰が?」
俺たちが会話をしていると、飛行船は海岸に着陸した。しばらくし、入口らしき扉からエルフらしきおっさんが姿を見せた。
「エルフ?」
「ルハラ、あのエルフ知っている?」
ルハラは成瀬の言葉に対し、難しい顔をして答えた。
「いや、全然知らない。見た顔じゃないよ」
「とにかく聞いてみよう」
俺が近付こうとすると、エルフのおっさんはそこで動くなと言うような合図を取った。俺はそこに止まり、エルフのおっさんの様子を見た。あれ? よく見ると顔が青ざめてないか? 何か……嫌な予感がする。しばらくすると、エルフのおっさんは急いで地面に降り、草木の方へ行ってしゃがみ込んだ。あ……酔っていたのね。
ヴァリエーレ:飛行船の前
「いやー、すまんのう! 話しかけられると思ってなくてのう!」
エルフのおじさんは嘔吐し終えた後、私たちに近付いてこう話していた。
「で、お主らはなんじゃ? 見たところ、観光でここにきたわけじゃなさそうだな」
「俺たちはギルドの戦士です。ある方の依頼で、仕事でここにきました」
「ふーん。ギルドの依頼で危なっかしい場所へきたのか……」
おじさんはこう言いながら、何か考え始めた。
「そうじゃ、お互いの紹介がまだじゃったな。わしはオノブ。オハリという流れ者のリーダーじゃ。よろしくの」
どうやら、まだ仲間がいるみたい。すると、飛行船の中から猿のような人が姿を見せた。
「オノブ様、体調は良くなりましたかー?」
「おおニッコー、吐いたら良くなったから心配するな!」
ニッコーと呼ばれた人は、私たちを見つめていた。
「あれ……あの子供たちは……」
「何じゃ、お前の知っている連中か?」
「ああ! やっぱりそうですよ! この前ヒレラピの事件を解決したギルドの有名なハーレムパーティーの人たちだ!」
「何じゃそら?」
「オノブ様、少しはニュースを見て情報を得てくださいよー」
「そんなもんわしには必要ないって言っとるだろうが」
「あの世界とこの世界では勝手が違うのですから。まぁ、とにかくあの人たちは悪い人ではないです」
「そうかそうか。ま、ここじゃあ何だし、飛行船の中で話そう」
そんな流れで、私たちはオハリの飛行船の中に入ることになった。移動中、ルハラは何かを考えながらぶつぶつ独り言をしゃべっていた。
「聞いたことがあるような……オハリ……流れ者……エルフ……」
「やっぱり知っているの?」
ティーアがこう聞いた直後、ルハラは何かを思い出したのか、大声を上げた。
「思い出した! 聞いたことがあるよ、世界中を回って旅をしているエルフの一団がいるって!」
「おお、わしらの話も知っとるようじゃのう」
ルハラの声を聞いたオノブさんは、上機嫌で笑い始めた。
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