嵐を乗り越えろ
成瀬:マカロニの船
一難去ってまた一難? 裏ギルドの連中を撃退したのはいいけど、今度は嵐が襲ってくる! 私はまだ何とか動けるけど、マカロニさんは傷を受けているし、剣地は代わりで操縦を行っているけど、剣地も怪我をしている。危機的な状況だ!
そうこう考えていると、突如横から水が流れてきた。
「ぶっふぇー、何じゃ急に?」
「まずい……水が入っている!」
海水を浴びたヴィルソルは、手で海水を落としながらマカロニさんの話を聞いていた。
「あと少しで……この船は沈没する恐れがある……この嵐の中で沈没したら……間違いなくお陀仏だな……」
「何とかして見せます!」
ある考えが浮かんだ私は、水を発した。それを見たティーアは驚いていた。
「何するの? 水出してさらに船を沈める気なの?」
「落ち着いて、氷を作って壁を塞ぐのよ」
その後、私は外に出て、壁から流れ出る海水を水で凍らし始めた。しばらくし、ヴィルソルも私と同じように水を凍らせ始めた。
「半分ずつで行おう! こっちは我がやるから、そっちは頼む!」
「ええ、お願い!」
私とヴィルソルの水で、船に開いた壁は防ぐことができた。しかし、船内にはまだ海水が残っている。
「残った海水はどうする?」
「うーん……」
その時、大きな波が私とヴィルソルを襲おうとした。しかし、何かに弾かれて波は崩れた。
「二人とも、後は私に任せて」
魔力を発しながらティーアがやってきた。どうやら、船全体にバリアを張ってくれたのだろう。
「我はここに残る。勇者が倒れたら今度は我がバリアを張る」
「魔王に心配されなくても大丈夫だよ」
「バカモン。いざという時だ」
その後、二人は口喧嘩を始めてしまった。まぁ、あれだけの元気があればなんとかなるか。この場は二人に任せ、私は剣地の元へ向かった。
「お疲れ成瀬……」
と、苦しそうな顔で剣地が私の方を見た。傷が痛むのだろう。私は急いで治療を始めた。
「ナルセー、ケンジの治療は任せたよー」
「マカロニさんの方は私たちに任せて」
ヴァリエーレさんとルハラはマカロニさんの治療を行うようだ。そっちは任せよう。
しばらく治療していると、苦しそうな声でマカロニさんがこう言った。
「だいぶ楽になった。嬢ちゃんたち、サンキュー」
「でも、まだ安静していた方が」
「こんな傷放っておけば治る。これを見ろ」
そう言って、マカロニさんは上着を脱いだ。マカロニさんの上半身には、多数の傷跡があった。治ってはいるが、跡がはっきりと残っている。
「この仕事を続けて三十年。この位の傷は何度も受けた」
「だけど」
「大丈夫って言っているだろ。どきな、坊主。お前も傷が深いだろ。後はプロに任せろ」
その後、マカロニさんは剣地をどかし、船の操縦を始めた。
「こんな嵐は何度も体験した、こんなもん屁でもねぇさ!」
そう言うと、マカロニさんは船の走行スピードを思いっきり上げた。
「うォォォォォォォォォォ!」
「アギャァァァァァァァァァァ!」
外からティーアとヴィルソルの悲鳴が聞こえた。あの二人、急にスピードが上がったから驚いているみたい!
「おい、外の嬢ちゃんを中に入れろ!」
「バリアを張っている状態だけどいいの?」
「そんなもんいらん! こちとらバリアなんかなしでずっと海の上走っていた!」
話を聞いた私は、急いで二人に中に入るように伝えた。最初、二人はバリアがなくなることについて話をしたが、バリアなしで走れると言ったマカロニさんを信じることにした。
それから数分後、私たちの目の前に大きな波が現れた。
「おわァァァァァァァァァァ! 飲まれるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「ちょっと、スピードが上がっていますけど!」
「これやばいよね、さすがの私でもかなり不安だよ、これ!」
「死にたくない死にたくない死にたくない!」
「いやァァァァァァァァァァ! ご先祖様どうかご加護をォォォォォォォォォォ!」
皆は悲鳴を上げながら周囲を転がっている。やばい状況だし、私が外に出て魔力を使って波を打ち消そうかと思った。しかし、マカロニさんは笑ってこう言った。
「波を壊そうなんて考えるなよ、プロの腕前ってものを見せてやるよ!」
そう言うと、マカロニさんはあるボタンを押した。
「何を押したのですか?」
「ロケットエンジン稼働のスタートだ!」
その直後、後ろから物凄い轟音が聞こえた。
「この船の後ろには、火属性の力がある石を大量に入れたロケットがある。そいつを使えば、この船は弾丸みたいにぶっ飛ぶ! あんな波なんてイチコロよ!」
話を聞いた私は驚きのあまり、少し戸惑ってしまった。何で船にロケットなんて付けているの? これもう大丈夫じゃない!
「止めてください! これ下手したら皆……」
「止められないさ、何かに掴まってろよ!」
もう遅い。遅かった。後ろからロケットの轟音が響く。その直後に私たちの体は後ろの壁に激突した。
「行っくぜェェェェェ!」
「いや、止めてェェェェェェェェェェ!」
私たちは悲鳴を上げた。阿鼻叫喚の中、船は猛スピードで波の中に突っ込んで行った。その結果、波に大きな穴を開け、船は空高く飛んで行った。
「どうだ、どんなもんだ!」
「で、着地はどうするの?」
ルハラの言葉を聞き、マカロニさんは大声で答えた。
「考えてないさ! ま、どうにかなるだろ!」
この返事を聞いた私は心の中で後悔した。こんな人に頼まなければよかったと。そんな中、窓から外をのぞくと、下に浜辺が見えた。
「お待たせさん。フーリーン大陸に到着だ」
マカロニさんがこう言うと、船は大きな水しぶきと音を立てて、下の海に水着した。
ヴァリエーレ:フーリーン大陸の浜辺
何とかフーリーン大陸に着いたのだけど……あの騒ぎの中、皆は疲れ果てている。今は疲れを癒すため、どこか宿を探さないと。
「じゃ、俺は近くの港にいる。帰る時にまた言えよ!」
マカロニさんはこう言うと、船に乗り込んで移動し始めた。正直、あんな体験二度としたくない。戦いの時よりもかなり疲れる。
「さて、とりあえず人のいる場所向かいますか」
「だね。アオーラ王国の詳しい情報をもっと知りたいし」
ケンジとルハラはこう話していた。確かに、アオーラ王国のことはテレビで知っているけど、実際知らないことが多すぎる。
その後、私たちは浜辺から移動しようとした。しかし、背後から魔力の気配を感じた。
「あいつら……結構しぶといな」
ケンジが呆れた顔をしてこう言った。後ろを見ると、アオーラ王国の連中が雇った裏ギルドの兵士たちが、武器を持ってこちらに近付いてきている。あの嵐の中、私たちを追っていたのか。ある意味すごい根性だ。
「雑魚の相手は俺がやる。成瀬たちは少し休んでいてくれ」
そう言うと、ケンジが剣と銃を構えて前に立った。
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