成瀬の静かな怒り
成瀬:マカロニの船
私とヴィルソルは、剣地を奇襲した男と戦っている。この男、格闘技の他にも槍を使って戦うようだ。
「そらよ!」
奴の槍と足による連続攻撃がヴィルソルを襲った。しかし、ヴィルソルは槍の攻撃の時点で奴の槍を弾き飛ばし、奴の体を支えている片足を攻撃してバランスを崩させた。
「ちっ……いってーな……」
奴は腰をさすりながら、立ち上がろうとした。その隙を狙い、私は水を凍らせて攻撃した。
「はっ!」
奴の声と共に、私が放った氷は木端微塵になってしまった。
「やはり、それなりに魔力を使えるか」
「使えないとこの世界で生きていけないからな」
ヴィルソルの言葉に反応した奴は、笑いながら立ち上がった。そして、踊るかのように槍を振り回し、私たちにこう言った。
「意外とやるね。このドゥベーネ様が本気で相手になってやろう!」
この直後、奴の槍から炎が発した。
「血まみれになるか、それとも焼きダルマになるか……好きなのを選びな」
「その言葉」
「そっくりそのまま返す!」
私とヴィルソルは魔力を発し、奴に向かって走って行った。
「はっ、じゃあ俺が決めよう。まず綺麗な黒髪の嬢ちゃんは……血まみれになりな!」
私に対して、奴は槍で攻撃を仕掛けてきた。私は剣を装備し、奴の槍を受け流した。
「ソードマスターのスキルか。厄介だな」
「剣だけじゃないわ」
私は剣先に光を集め、奴に向け発した。
「光だと!」
「私をあまり甘く見ないことね」
「それともう一つ、貴様は魔王を相手にしている」
ヴィルソルが槍を持ち、奴に襲い掛かった。奴は炎をヴィルソルに向けて発したが、ヴィルソルはその前に闇のオーラを発しており、防御をしていた。
「そんなものか?」
「ヘッ。楽しくなってきた!」
奴は槍を振り回しながら、私に向けて投げた。武器を投げてどうするつもりだろうか?
「よっと」
私は水を発して飛んでくる槍を落とそうとした。それに、槍は炎が纏っている。それを消すために水を使用したのだ。しかし、水をかけても槍の周りの炎は消えることはなかった。それに、飛んでくる槍の勢いも落ちない。
「クッ!」
私は剣で槍を防御し、海の方へ弾いた。
「俺の槍を海に落とすつもりか? そうはいかんな」
何と、槍はブーメランのように動き、奴の手元に帰ってきた。
「次は確実に刺してやるよ」
「そうはさせんぞ。それに対しての対応策はすでに練った!」
と、ヴィルソルがこう言った。その言葉を聞いたドゥベーネは、怒りの表情を見せた。
「じゃあお望み通り貴様からぶっ殺してやるよ!」
奴はヴィルソルに向けて槍を投げた。飛んでくる槍に対し、ヴィルソルは鎌を構えた。
「武器を投げて攻撃するのはあまりよくないと思うぞ」
「何だと?」
奴はヴィルソルの言葉を聞いて目を丸くした。その後、ヴィルソルは闇が覆われた鎌で飛んでくる槍を一閃した。そうか、壊せばよかったのか。
「さぁ、もう攻撃の手はないぞ」
「俺の武器は槍だけじゃないぜ!」
奴の叫び声の直後、奴の両手両足から炎が放たれた。今度は格闘戦に持ち込むつもりか!
「顔面が変形するくらいにボコしてやるよ、女だからって容赦はしねー!」
「ヴィルソル、今度は私がやるわ」
「そうか、頼む」
私はヴィルソルの前に立ち、闇を周囲にはなった。奴は私が作った闇をかわしつつ、徐々に近づいてきた。
「そんな攻撃、簡単に見切れるぜ!」
「じゃあこれはどう?」
私は大剣を構え、奴にこう言った。
「私はソードマスターのスキルを持っているのよ。どんな剣も手足のように扱うことができる」
「そんなこと、知っている!」
私は大剣を振り回し、奴に攻撃をしたが、奴は私の攻撃を防御した。
「バカが! こんなので俺に傷一つ付くわけがないだろうが!」
バカはあっちの方だ。まんまと私の策にはまったわね。奴は後ろに吹き飛びながら着地の態勢を整えようとしていた。しかし、奴は私が闇を発したことを忘れている。それはまだ奴の背後に存在している。
「バカはあんたよ」
私の言葉を理解したのか、奴は後ろを振り向いた。
「しまった……」
奴は今、闇のことを思い出したようだ。だがもう遅い。奴は闇に飲まれ、ダメージを受け始めた。
「ギャァァァァァァァァァァ!」
「おーおー、今日のナルセの闇は一段と恐ろしいのう」
「剣地があいつにやられたのよ。もう少し痛めつけないと」
私は奴の悲鳴を聞きながら、ヴィルソルにこう言った。しかし、まだ気が収まらない。私は闇を操り、奴が身動きできないように縛った。
「な……何をする?」
近付いてくる私を見て恐れているのか、奴は冷や汗をかいて叫んだ。いい気味ね。
「何をするって? あんたを半殺しにするのよ。まだあれじゃあ足りないわ」
「嘘だろ……あれだけの魔力を使ってまだ力が……」
「悪いけど、私はソードマスター以外にもマジックマスター・ネオとゼロマジックのスキルがあるのよ」
「嘘だろ……」
ここで奴は私の強さを察したようだ。敵わない相手と戦ったことを、今知ったようだ。
「さーて、お仕置きの時間よ。海の中で反省しなさい!」
私は闇を使って巨大な拳を作り、奴を海に向けて殴り飛ばした。
「ナルセ、力を入れすぎじゃ」
空に向かってぶっ飛んだ奴を見て、ヴィルソルがこう言った。
「うーん……でもま、気が晴れたし別にいいわ」
「そうだな」
戦いは終わった。私の戦いを見ていた他の連中は、恐れをなして皆戻って行った。
「他の連中はどうする?」
「ほっておけ。ルハラが船を壊したからどうすることもできないだろう」
と、ヴィルソルは遠くから上がる煙を見てこう言った。
剣地:マカロニの船 操縦室
辺りが急に静かになった。魔力も感じなくなったし、戦いが終わったのだろう。
「戦いが終わったようね」
「見てよ、奴らが逃げていく」
どうやら、成瀬たちが幹部クラスの敵を倒したのだろうか、俺たちに敵わないと察した連中が慌てて海の下にあるボートへ逃げて行った。
「バカだねー。私が奴らの本拠地の船を壊したことに気付いてないみたい」
「だな……」
俺はルハラの言葉にこう返事をした。しかし、敵を追い払ったが……まだ危機は去っていない。戦いの影響で船が傷つき、うまく操縦できなくなっている。それに……何だか風が強くなっているような気がする。
「ケッ……今日は厄日だな……こんな時に嵐だなんて……」
と、マカロニさんが小さくこう言った。おいおい嘘だろ、こんな状況で嵐か? ありかよ、そんなの!
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