海の上の戦い
ティーア:マカロニの船
予想通り、アオーラ王国の連中が襲ってきた! 奴らはジェットスキーに乗っている。こっちへ向かってきている姿がどんどん近くなっていく。
「ヒャッハー!」
「フレッドデルタのお出ましだー!」
「デーモンノイズもいるぞ!」
どうやら、アオーラ王国が雇った裏ギルドが襲ってきたようだ。奴らはかぎ爪ロープみたいなのを振り回し、船に向けて投げた。だがその時、船が急に大きく曲がった。
「うわッ!」
「何だと!」
急に曲がったせいか、奴らが投げたかぎ爪は船に大きく弾かれ、奴らに命中した。それどころか、奴らが乗っているジェットスキーは船に激突し、奴らは海の中へ落ちて行った。
「ハン! 裏ギルドのカス共が! 俺の船に触らせるかよ!」
どうやら、マカロニさんが奴らを撃退するために大きく曲がるように操作したようだ。
「落ちるとこだった……」
「ひゃー、危機一髪」
落ちそうになったケンジとルハラは、船の端にしがみついて何とか無事だった。ナルセやヴァリエーレ、魔王も何とか耐えたようだ。
「これで、連中は倒したのか?」
「いや……まだみたい」
私は魔王にこう言った。連中はまだいる。遠くに奴らの船があるのか、まだジェットスキーに乗ってこっちに向かってきている姿が目に見えた。
「よし、俺がやってやる」
ケンジがライフル銃を構え、奴らを狙って狙撃した。ライフル銃の発砲音の後、うっすらと弾がジェットスキーに当たる音がした。それから、ケンジは狙撃を続けていた。しばらくし、リロードを始めた。
「皆、援護をしてくれ。弾をかわした奴がいる」
「了解!」
「私に任せて」
魔王とナルセがケンジの横に立ち、敵の接近を待った。その時、上空から何者かが飛んできた。それに気付いたヴァリエーレが剣を装備し、奇襲した奴に斬りかかった。
「あなたは何者?」
ヴァリエーレが剣を突き付けてこう聞くと、奇襲した奴はヴァリエーレの剣を手にしている剣で弾き飛ばそうとした。しかし、ヴァリエーレは剣を強く握っていたから剣は吹き飛ばなかった。その直後、二人の剣がぶつかりあった。
「答える気はなさそうね」
「今から死ぬ貴様に名を言っても、無駄なことだ」
どうやら、襲ってきた奴は男のようだ。低く、聞いただけでも背筋が凍るような恐ろしい声だ。私はヴァリエーレに加勢しようとしたが、ケンジの悲鳴が聞こえた。
「ぷしゅー。さっきからバンバン銃を撃っているのはお前か小僧? あぶねーだろうが」
何と、何者かが船に上がり、ケンジに攻撃を始めた。だが、ナルセの魔力がその男に襲い掛かった。
「剣地から離れなさい」
「酷いことをするなぁ。やっつけるぞ、この野郎!」
男は襲い掛かろうとしたが、首元に魔王の鎌があったことに気付き、動きを止めた。
「チッ。首元を狩ろうとしたけどなぁ」
「恐ろしいことをする幼女だな。お仕置きしてやるよ」
あの男の相手はナルセと魔王に任せよう。私はヴァリエーレを助けないと! あの男……多分強い!
ルハラ:操縦室
私は操縦室のマカロニさんを守るため、操縦室へ向かった。
「今やばいことになっているよー」
「分かっとるわい! この騒動で気付かない奴はおらん!」
マカロニさんは操縦に必死なようだ。ここでマカロニさんがやられたら、まずいかもね。そう思っていると、私の目の前に折り紙のような物が飛んできた。私はそれを風で叩き潰し、調べた。やっぱりただの折り紙だ。
「何で折り紙がここに?」
「私の武器を返してもらおうか」
近くで男の声が聞こえた。はぁ、私の相手はあの着物っぽい衣装の男か。やだなー。
「何で嫌そうな顔をする?」
「女の子が相手だったらセクハラできたのに」
「なんか変なことを考えているようだが……どうでもいい。私の相手になってもらおう」
あーあ、この展開は私があの着物男の相手をするパターンだ。しゃーないか。私は操縦室の外に出て、マカロニさんが被害にならないように操縦室全体にバリアを張った。
「ほう。高度なバリアを張るとは」
「それなりに魔力を持っているからね」
私はそう言うと、男に向かって飛び蹴りを放った。だが、固い何かに私の飛び蹴りは防御された。一体何で防御されたのかを見て、私は目を丸くして驚いた。
「紙?」
そう、私の攻撃を防御したのは一枚の紙だった。何も変哲もない紙だったけど、壁を蹴ったかのように硬い。
「攻撃は終わりかい。じゃあ今度はこっちの番だ」
その時、奴は袖から六枚の紙を取り出した。
「必殺、紙手裏剣」
六枚の紙は手裏剣のような形になり、私に襲い掛かった。ただの紙だろうと思っていた。防御をしていたのだが、私の腕に切り傷が付いた。
「本物みたいだね」
「そりゃそうだ。この折り紙は魔力でできているからねぇ」
魔力でできた紙か。周りを見ると、さっき落ちていた紙がいつの間にか消えている。そうか。あれが魔力なら消えて当然か。
「今度は本気で行くよ!」
今度はぱっと見で百枚ぐらいの紙が宙に浮かび、手裏剣となって襲い掛かってきた。
「仕方ないね。こっちも本気で行くよ!」
私は魔力を開放し、風を発生させて飛んでくる手裏剣を潰していった。
「何!」
「攻撃は無意味に終わったね」
私は油断した奴に接近し、奴の顔面を思いっきり殴ってやった。殴られた奴はぶっ飛ばされた勢いで海に落ちかけたが、何とかギリギリの所で踏みとどまった。まぁ、海に落っこちても上がって来るか。まだ元気みたいだし。
「ふぅ……ふぅ……まさかこのミガーがここまでやられるとは思わなかったぞ」
「へー、ミガーって名前か」
「貴様は必ず、フレッドデルタのミガーが殺す!」
と言って、奴は紙を右手に纏い始めた。うーん、あれを剣代わりにして戦うつもりだな。
「お命頂戴!」
おっと、奴が襲ってきた。私は奴の攻撃を回避し、背後に回って風を纏った拳を喰らわせようと思った。しかし、奴の後ろに数枚の紙が落ちていることに気付いた。
「回避したな。私の攻撃はそれだけではないぞ」
しまった! 奴は魔力で下に落ちた紙を操ることができる! 今の攻撃を避けたとしても、次の攻撃がすぐに私を襲う!
「油断したな。さぁ……ここで朽ち果てるがいい!」
手裏剣でも飛んでくるのかと思ったけれど、私の予想は大きく外れた。紙は私より大きくなり、私を包み込んだ。苦しい、もしかして奴はこうやって身動きを封じた後、殺すつもりなのだろう。
「クックック……どれだけもがいても無駄だ。お前は私に殺される運命なのだよ」
うーん……仕方ないなー。あまり使ったことないけど……あの魔力をやってみるか。私は体の周りに闇を発し、私の周りの紙を闇で飲み込んだ。
「闇の魔力だと!」
「それと光も使えます」
私は右手に光を発し、奴の顔面に拳を沈めた。今度は光がある分、攻撃力も破壊力も増しているはずだ。奴はぶっ飛んだが、海には落ちなかった。
「ゲホッ……よくも私の顔を……」
奴は鼻血を垂らしながら、ゆっくりと立ち上がった。倒すことはできなかったけど、それなりにダメージは与えたようだ。さーてと、そろそろこの戦いを終わらせないとね。
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