船出の時
成瀬:ナノフェイ海岸近くの港
港で私たちに話しかけた男性は、ゆっくりと立ち上がって私たちの方を睨んだ。
「お前さんたち、あの国へ行きたいのか?」
「はい。仕事で用があるのです」
「ほーん……」
男性がきょろきょろと私たちの周りを見ていると、別の作業員の人が慌ててこっちへきた。
「ちょっとマカロニさん。厄介なことを起こすのは止めてくださいよ」
「うるせえ、ボケ! 客の望む場所へ連れてくのが俺たちの仕事だろうが!」
「しかし、アオーラ王国は今……」
「うるさい! ギャーギャーギャーギャーと! 後から入ってきた奴にあれこれ指図は受けねーよ!」
あの男性、マカロニさんは私たちを見て、一隻の船に指を指した。
「あれが俺の船だ。しばらくしたら出発するぞ」
その言葉を聞いた作業員が、驚いた後でマカロニさんを止めた。
「危険だから止めてください! もし何かあったら、責任を負うのは我々ですから!」
「社長の許可なんていらねーよ! 仕事ができない奴の言いなりなんてなってたまるか!」
作業員は困った顔をした後、急いで去って行った。それを見たマカロニさんは煙草を手に取り、呆れてこう言った。
「あの若造、あの豚に報告しに行ったな」
「あの……私たちはどうすれば……」
私がこう聞くと、マカロニさんは煙を吐いてこう伝えた。
「その辺で待ってろ」
しばらくし、太った男性が慌ててこちらにやって来た。
「すみません。作業員がお騒がせしてしまって……」
「いえ、どうってことないです」
と、剣地が愛想よく笑ってこう伝えた。その後、私たちはアオーラ王国へ行きたいと港の社長に伝えた。私たちの話を聞いた社長は困った顔をしてこう言った。
「すみません。実はあの国の周辺では内乱が続いており、作業員を巻き添えにさせないためにアオーラ王国近辺への出向は禁止しているのです」
「他にあの国へ向かう方法はないのですか?」
「スカイウイングを使ったとしても、途中で落ちちゃうよー」
「流石のナルセも、五人を背負って空を飛んだら海へ落ちてしまう」
ルハラとヴィルソルが私の言葉の後でこう言った。社長は困り果てた顔をし、何度もうなりながら考えていた。そんな時、マカロニさんが扉を強く開いて部屋の中に入った。
「だから俺が行くって言っているだろ」
「マカロニさん! いくらあんたが熟練の船乗りでも、今あの国へ行ったら……」
「まともに船を操れない奴が騒ぐんじゃねぇ! 俺ぁこれでも内乱が続いた国への船出は何度も行った!」
「しかし……」
「いいから俺に任せろ! 金のことしか頭にないお前は黙ってろ!」
「うぅ……」
マカロニさんの押しの力が強く、社長は徐々に押されている。そして、ついに社長は観念してこう言った。
「分かりました! マカロニさん、後はお願いします」
「へん。最初からそう言えばよかったのによー」
どうやら、何とかアオーラ王国へ行けることができるようだ。
数分後、私たちはマカロニさんの船に乗っていた。マカロニさんは出港の準備をすると言って、操縦室へ向かっていた。
「何とか行けるようだな」
「だけど、このまま楽に行けるって考えは捨てたほうがいいわね」
ヴァリエーレさんが静かな口調でこう言った。確かに、私たちはリーナ姫を助けるためにアオーラ王国が雇った傭兵を倒している。そのことは奴らの耳にも多分入っている。奴らの追手が私たちを狙う可能性がある。
「もし、襲ってきたら返り討ちにしてやる!」
「そのために修行したしね!」
ヴィルソルとティーアは張り切っている。ルハラも空手っぽい動きをして戦う気満々だと体で伝えている。そんな中、マカロニさんの大声が私たちの耳に響いた。
「そろそろ出港するぞ、揺れるから気を付けろよ!」
この声の後、船は勢いよく港から出港した。
ティーア:マカロニの船
「ギャァァァァァァァァァァ!」
「キャァァァァァァァァァァ!」
「回る! 回る、回るゥゥゥゥゥ!」
「いやァァァァァァァァァァ!」
「怖いよォォォォォォォォォォ!」
いきなり飛び出るから、皆びっくりして転んでいる。私は揺れまくる船内の中、倒れないように近くの柱を掴んでいた。しばらくすると、揺れは徐々に収まった。
「な……何とかなったな……」
「ええ……」
「面白かったー」
ケンジとナルセとルハラは少し離れた壁に寄りかさり、こう言っていた。で、ヴァリエーレとヴィルソルは。
「むぐ……ぐぐぐぐぐ……」
「ごめんね、ヴィルソル。大丈夫?」
「ぶはぁっ、まさかお前の乳に助けられるとは……」
どうやら、ヴィルソルはヴァリエーレの胸がクッションになり助かったそうだ。まぁ、あれだけでかい胸だったらクッションになるよね。私もたまにヴァリエーレの胸にして寝ていたってことがあったし。
「おーい坊主共、聞こえるか?」
上からマカロニさんの大声が聞こえた。ケンジが大声で返事をすると、すぐに声が返ってきた。
「ここからアオーラ王国までは四時間かかる! それまで船旅を楽しんでいきな!」
結構距離があるんだなぁ。そんなことを思いつつ、私は部屋の窓から海を眺めていた。アオーラ王国に到着するまで、何かあるかもしれない。その時になったら、どうやって立ち回ろうか考えていた。何もないのが一番いいけど。
船出して二時間程経過した。ケンジの横に座っていたナルセが、何かを感じたのかこう言った。
「誰かくるわ」
「ホントだ。敵かな」
ナルセの言うとおり、誰かがきている。窓から姿の確認をしていると、マカロニさんの大声が聞こえた。
「魔力を持った奴だ! こっちを狙っているようだから、対処するからちょっと待っていろ!」
どうやら、マカロニさんも敵意を持った何者かの存在を察しているようだ。というか、魔力を持っていたのか、あの人。
「対処って何ですか?」
「この船の装備品を使え」
何かを押したのだろうか、船底から音が聞こえる。
「こいつには裏ギルドの海賊対策で武器が装備されている! 魔力で弾を撃つバズーカや、ガトリング砲などたくさんあるぜ!」
マカロニさんは自慢げにこう叫んでいた。見た目は何もない船だったけど、まさかとんでもない武器が装着されているなんて知らなかった。
「大丈夫です、俺たちも戦います! 多分、あいつらの狙いは俺たちです!」
ケンジがこう言った直後、マカロニさんは大声で笑いながら叫んだ。
「そうか! お前さんたちの客か! なら、相手の方を任せてもいいか?」
「はい」
「それじゃあ頼むぜ! 俺も船の装備を使って援護をするから!」
その後、私たちは武器を持って船の上に上がった。海からは、何者かがジェットスキーに乗ってこちらに向かってきている姿が映った。
「この前の連中の仲間かな?」
「見張り兵かもしれないわ」
「結局は全員私たちの敵! 襲ってくるんだったら、返り討ちにしてやるわ!」
私は剣を構え、皆にこう言った。
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