激闘の後
剣地:フィレの家
俺の戦いが終わって数時間が経過した。俺がフィレさんの家に運ばれて少しした後で成瀬たちが帰ってきた。その時、成瀬は呪われた武具を闇で壊していった。どうやら、闇で呪われた武具を壊せるらしい。成瀬たちが倒した盗人連中は、気を失ったまま里の牢屋へ入れられていった。
で、俺はフィレさんの家で治療を受けている。
「もう、無茶はしないでよ! 心配したじゃない!」
「悪いな。ほんと、反省した」
成瀬は俺が怪我を負ってフィレさんの家にいると聞き、一目散に向かってきた。で、ボロボロの俺を見て悲鳴を上げていた。
「でも、死ななくてよかったね」
「今回は助かったけど、次はどうか分からないわね……」
と、ルハラとヴァリエーレさんが続けてこう言った。まぁ、皆に心配かけたことは本当に反省している。少し自分の戦える力を把握しなければ。
しばらくして、ヴィルソルの魔力を感じた。どうやら、空を飛んで戻ってきたようだ。
「皆、手を貸してくれ!」
フィレさんの家に戻ったと同時に、ヴィルソルがこう叫んだ。外を見ると、傷だらけのティーアをヴィルソルが抱えていた。
「ティーア!」
「どうしたの?」
皆は傷だらけのティーアに近付き、様子を調べた。俺はベッドの上から様子を見ていた。ティーアは気を失っているのか、目をつぶっていた。それに、魔力も感じていない。
「どうやら、崖の方の爆発と関係がありそうじゃのう……」
ティーアの様子を見ていたフィレさんが、森の方を見て小さく呟いた。
「とにかく、しっかり手当てをしましょう」
その後、ヴァリエーレさんがティーアを俺の横に寝かし、傷の手当てを始めた。
それから数時間後、皆は一旦里の皆に話をするため、外に出て行った。俺の横にいるティーアは、まだ眠っている。
「大丈夫かな」
俺は小さく呟いた。すると、ゆっくりだがティーアの瞼が動いた。どうやら気が付いたようだ。
「あれ……師匠の家?」
「気が付いたかティーア?」
俺の言葉を聞き、ティーアが俺の方を向いた。急に顔を向けて体が痛み出したのか、痛そうな顔をしていた。
「いつつ……」
「急に動くから」
大人しくするように伝えた後、俺は皆の帰りを待った。数分後、扉の開く音が聞こえた。
「ただいまー」
「成瀬。ティーアが目覚めたぞ」
「ほんと!」
俺の言葉を聞いた皆は、急いで俺とティーアの元へ駆けつけた。
「大丈夫、ティーア?」
「一体誰がこんなことを?」
ルハラの質問を聞き、ティーアはこう答えた。
「ニートゥムだよ。私はあいつと戦った」
「え? でもあの時簡単に倒していたよね」
「あの剣のせいだよ。呪いの剣、ジェロディア」
ティーアの答えを聞き、フィレさんは唸り始めた。
「あの剣は呪われた武具の中でも、かなり高い破壊力を持ち、残虐な性格だと伝説に書かれている」
「その通りかもね。あいつの魔力で、あの崖を木端微塵に吹き飛ばしたから」
しばらくし、フィレさんは対策を考えておくと言ってこの話を閉めにした。
「とにかく、二人とも今は休むことを考えておれ」
「はい」
「お世話になります」
はぁ、またしばらくはベッドの上での生活か。何だか俺、頻繁に怪我をするようだけど……運がないのか俺?
深夜。エクラードの牢屋にて。
「クソ! こんなことになるなんて、あんな計画を立てなければよかった!」
カニートは壁を殴り、こう悔やんでいた。
「ま、どうにかなるだろ」
「こんな時でもバカだな、ホニットは。あの里の連中のことだ、きっと俺たちのことを一生ここから出さない気でいるだろう……」
ホニットの言葉に対し、ルムツはこう言った。
「脱走するぞ! こんな壁、俺の拳でぶっ壊してやる!」
「大声で脱走するとか言うな! 大バカ野郎!」
ぶっ飛んだことを言ったアクトに向かって、カニートはこう叫んだ。
「魔力があればこんな牢屋ぶっ飛ばせるけど……これじゃあなぁ……」
彼らの首には魔力を強制的に制御する首輪が付けられている。これを付けられている限り、彼らは自由に魔力を使うことができないのだ。
「仕方ないわ……黙っていましょうよ……」
ナンミは横になり、カニートたちにこう言った。しばらくの間、彼らは無言でいたのだが、何かに気付いたホニットがこう言った。
「なぁ、ニートゥムはどこ行った?」
「あいつのことだろ、俺たちを置いて逃げただろうよ」
「だけどよぉ、ナンミを置いて逃げるか? あいつって本気でナンミのことが好きだろ?」
「知らねーよ、そんなこと」
カニートはため息を吐き、ホニットにこう言った。その時、牢屋の外から見張りの短い悲鳴が聞こえた。
「何だ?」
「喧嘩か? 俺も混ぜろ!」
「いや……喧嘩じゃなさそうだ」
しばらくすると、階段を下りる音が聞こえた。
「おいまさか……」
「ニートゥムか?」
ルムツはにやりと笑ってこう言った。ルムツの言うとおり、遠くからニートゥムの姿が見えた。手には血塗られたジェロディアが握られていた。
「助けにきてくれたのか! よっしゃ!」
牢屋に近付いてきたニートゥムは牢屋を斬り、カニートたちを見つめた。
「ありがと、ニートゥム! 助けにくるなんて思ってもなかったぜ!」
と、笑いながらこう言ったが、ニートゥムは表情を変えずにカニートを一閃した。斬られたカニートは、悲鳴を上げずにその場に倒れた。
「な……」
「は?」
斬られたカニートを見て、ホニットたちは動きが止まった。
「役立たずに用はない。死ね」
その後、ニートゥムは牢屋へ入り、一瞬のうちにホニットたちを斬ってしまった。残ったのは、ナンミだけだった。ナンミは返り血で赤く染まったニートゥムを見て、恐る恐るこう言った。
「あんた、ニートゥムじゃないね……」
「いや、俺だ。俺はお前らと違って、この武器に体を乗っ取られなかった。一時的に取られたが、今は意識を取り戻した」
ニートゥムはそう言うと、剣先をナンミの首元に突き付けた。
「私を……殺すのね」
ナンミの問いに答えず、ニートゥムは剣を振るった。だが、落ちたのはナンミの首ではなく、ナンミに付けられた首輪だった。
「俺が殺したいのは役立たず共だけだ。愛するお前を殺そうとは考えてない」
「……そう……でもいいの? カニートたちを殺して……」
「知るか。どうせ一生この牢屋の中で過ごすことになっていただろう」
「そうね」
「行こう、お前の目の前で新しい勇者の伝説が作られていくのを見せてやるから」
「ええ。期待しているわ」
その後、ニートゥムはナンミを抱きかかえ、牢屋から出て行った。
翌日の早朝、見回りの警備員が牢屋内で警備していた兵士、斬殺されたカニートたちの死体を発見した。
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