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計画実行の時


ティーア:夜のエクラード広場


 広場で集まっている野郎どもは、酒をバカ飲みして酔って倒れている。しかも、その中には師匠もいる。


「師匠! いい歳こいて酒に酔って倒れるなんてやめてくださいよね!」


「うぃー、わしゃー酔ってないぞえー」


 と、師匠は顔を真っ赤にしてこう言った。明らかに酔っているな、こいつ。


「大変だな、勇者……」


「本当にそうだよ」


 魔王が呆れた顔で私にこう言った。魔王は今まで酔っ払いの相手をしていた。その時、遠くから酔った女性たちとルハラの声が聞こえた。


「まだ厄介な奴がいた……」


「我が何とかしてくる。勇者はフィレさんのことを頼むぞ」


「分かっているって」


 魔王は急いでルハラの暴走を止めに向かった。まぁ、いつものルハラしいって言えばルハラらしいけど。そんな時、遠くからナルセの怒鳴る声が聞こえた。何があったのかと思い、駆け寄った。そこには、酔ったのか顔が真っ赤になったナルセが、ケンジに抱き着いて離れない光景が見えていた。


「あ、ティーア。これ……どうしましょう」


 近くには、様子を見ていたヴァリエーレが立っていた。私はため息を吐き、ナルセに近付いた。


「ほら、どうしたの? ナルセ。もう宿に戻るよ」


「やーだー! 剣地と一緒にいるー!」


「ねぇ、お酒でも飲んだの?」


「いや、酒の匂いで酔っただけだよ。成瀬が酒に弱いのは意外だったな」


 ケンジが困りながらこう言うと、ナルセは無理矢理ケンジにキスをして押し倒した。


「ちょっと! ケンジは病み上がりだから、少し扱いに気を付けてね!」


「ふぁーい」


 その後、ナルセの体は回りだし、その場に倒れてしまった。


「寝ちゃったみたいね」


「成瀬が酔うと結構面倒だな……じゃ、俺と成瀬は一足先に宿に戻っていますので」


「私たちも戻るか」


「ええ」


 私たちが宿に戻ろうとした時、ボロボロの魔王が寝息を立てるルハラを抱えてやってきた。


「ヴィルソル! その格好どうしたの? 肌が見えているわよ!」


「ルハラに襲われかけた……とにかく、我とルハラも一緒に戻る」


「丁度いいタイミングで一緒になれたな」


 と、ケンジがこう言った時、ケンジが背負っていたナルセが目を覚まし、暴れ始めた。


「うぎゃー! 帰りたくない! まだ剣地とここにいるー!」


「ナルセ! どうしたのじゃお前?」


「酒の匂いで酔ってこうなった。とにかく戻ろう」


 その後、私たちは暴れるナルセを抑えながら、何とか宿に戻ることができた。今度から、ナルセにお酒を与えること、匂いをかがせるのは止めよう。絶対に。




 深夜。塔の見張りはあくびをしながら周囲を見回した。そして、手元のマイクに向かってこう言った。


「異常なし。ただいまより交代のため、事務所へ向かう」


「了解。監視カメラで見張りを続けておく」


 イヤホンからの声を聞き、おかしいと感じた見張りはこう聞いた。


「声がおかしいぞ。何かあったのか?」


「特に何も」


 その時、背後にいたアクトが見張りの後頭部に蹴りを喰らわせた。攻撃を受けた見張りは、そのまま気を失った。アクトはその見張りからイヤホンとマイクを奪い、こう言った。


「こちらアクト。見張りを倒した」


「了解。俺たちがここにくるまでに見張りはどこかに隠しておけ」


「了解だ」


 ニートゥムたちが塔の入口に着く前に、アクトは気絶させた見張りを近くの芝生へ隠した。数分後、ニートゥムたちは歩きながらやって来た。


「なぁ、監視カメラはどうした? ずっと気になっているが」


「大丈夫だ。電源を消してある」


 カニートはそう言うと、塔の門についてある鍵を外し、扉を開いた。


「作戦通りになりそうだな」


「ああ。だから言っただろ、最初に事務所を襲って占拠して、監視カメラの電源を消してからの方が行動しやすいって」


「確かに」


 カニートの言葉に対し、ニートゥムは笑ってこう答えた。


「さぁ、早く行こうぜ! 肝試しみたいで楽しみだなぁ!」


「あんたはいつでも能天気ね。そんなあんたが羨ましいわ」


 ホニットの言葉を聞き、ナンミはこう言った。ニートゥムたちは塔の中に入り、先へ進み始めた。中は暗く、明かりなどは点いていなかった。頼りになるのは、ルムツが持つ懐中電灯だけだ。


「おいおい、もしかして何千年も塔の中を放置していたのかよ」


 ほこりを払いながら、ルムツはこう言った。


「肌が汚くなるわ」


 ナンミはため息とともにこう言った。しばらくすると、頑丈そうな扉が目の前に現れた。ニートゥムが力を入れて押したのだが、扉はびくともしなかった。


「何だ、この扉は……鍵でもあるのか?」


「いや、鍵はなさそうだぜ」


「仕方ないな……少し荒くなるが、これしか方法はない」


 ニートゥムはこう言うと、ナンミたちに下がっていろと言った。ニートゥムは右手に光の魔力を発し、扉の前で破裂させた。その衝撃で、扉は開いた。


「進もう」


 その後、ニートゥムたちは行動を再開した。目の前にあるのはどこまでも続く下り階段。歩く中、ホニットは苛立ちながらこう叫んだ。


「なー! 本当にこの中に呪われた武具があんのかー?」


「あるらしい」


「らしいって……何だか騙された気分だぜ」


「いや……騙されてはないようだ。感じねーか、この禍々しい空気を」


 前を歩くニートゥムは感じていた。階段を下るたびに空気が禍々しくなっていることを。それは、呪われた武具があるという証拠だとニートゥムは確信していた。


「急ごう。里の連中に気付かれる前に武具を手にしてここから出て行かないと」


「だな」


 会話後、ニートゥムたちは駆け足で階段を降り始めた。最初はニートゥムしか禍々しい空気を感じなかったのだが、徐々にナンミたちもこの空気を察し始めた。


「この空気は……」


「へぇ。話通り結構やばそうな物だな」


「嘘だと思ったが、本当にあったとは」


「手に取るのが楽しみになってきたねぇ」


「何だか熱くなってきた!」


「そろそろ階段が終わるぞ」


 走っていると、目の前に扉が現れた。ニートゥムが扉を蹴っ飛ばして中に入ると、その中央に紫色のオーラを放つ武具が置いてあった。武具は剣、槍、斧、銃、爪、杖の六つがあった。


「丁度数は六つ。いいじゃないか」


 ニートゥムは剣に近付き、手に取った。その瞬間、剣から放たれる輝きが強さを増した。


「すげぇ……こいつの力が腕に伝わる! こいつは本物だ!」


「よし、じゃあ俺たちもいただこうぜ!」


 その後、カニートたちも各々の武器を手に取り、振り回し始めた。


「さぁ……この里と別れる……前に、あいつを倒しておかないとな……」


 ニートゥムは下種な笑みを浮かべながら、剣を鞘に納めた。そして、上を向いて大きな声で叫んだ。


「ティーア! 今度こそ、お前を殺して勇者の称号を奪ってやる!」


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