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剣地復活


剣地:謎の空間


 う……ん……どこだ、ここは? 周りは真っ暗で何も見えない。人の気配もない。


「どこだ……うえぇ! なんじゃこりゃ!」


 俺は自分の体を見て驚いた。体の周りには紫色の鎖が絡みついていたのだ。よく見ると、遠くの方から鎖が伸びていた。


「何だ、これ? グッ! 動かねぇ!」


 何とか外そうと思ったけど、両腕が鎖に絡みついていて、動くことができない。鎖と格闘している中、俺の耳に聞いたことのある声が聞こえた。


「この声……クナブか!」


「その通りよ、ケンジ君」


 俺の目の前に、クナブが現れた。何でこいつがここにいる!


「何だ、これは? 説明しろ!」


「あなたはサキュバスの呪いにかかっているの。この呪いはサキュバスが好きな人とずっと一緒にいるためにかける呪いなのよ」


「とっととこの呪いを解け! 俺はお前みたいな女は好きじゃない!」


「私はあなたのことが好きなのよ。それに、呪いは解けないわ」


 マジかよ! この呪い、何がどうやっても解けないのか。このままだと、俺はあの女と一緒か。クソ! この状況、どうやって打開すればいい?


 俺があれこれ考えていると、鎖は謎の渦に近付いてきた。


「何だ、あの渦?」


「私がいるあの世への入口よ。あそこをくぐったら……私は永遠にあなたと一緒になれるの」


「俺は一緒になりたくない!」


 足をじたばたさせて何とか抵抗したが、それは無駄な悪あがきだった。もう入口が近い。ああ……俺はこのままこの女と永遠に近い時を過ごすのか。こんなタイミングで、二度目の死を迎えてしまうのか。


 そう思った矢先、鎖全体にひびが入った。それと同時に、俺の脳内に声が聞こえた。


「目を覚ませ! ケンジ!」


 この声は、ヴィルソルだ。でもどうして。


「何なの……何で鎖にひびが……」


 クナブは鎖に入ったひびを見て、目を丸くして驚いていた。鎖に入ったひびは、さらに広がった。それと同時に、ティーアの声が俺の脳内に響いた。


「起きてよ、ケンジ!」


 俺は察した。皆が俺を助けるためにいろいろとやっていると言うことを。


「まさか……あんたの女の仕業ね! こうなったら、無理矢理にでもあの世へ連れて行くわ!」


 クナブが鎖に手をかけた瞬間、鎖のひびは広がり、一部が砕け始めようとしていた。


「お願い、起き上がってケンジ!」


 今度はヴァリエーレさんの声だ。皆が力を貸してくれているおかげで、何とかこの鎖から脱出できそうだ。そう思ったと同時に、鎖全体が急にひび割れ始めた。


「何なの! どうしてこの鎖が!」


 急にひび割れ始めた鎖を見て、クナブはさらに驚いた。その時、ルハラの声が響き渡った。


「ケンジ! 起きてよ! 本当に起きて! さもないと、もっとキスをするよ!」


 ルハラが何かをやっているようだ。脳内でヴァリエーレさんがルハラに止めなさいと言葉を発していた。だけど、このおかげで鎖がかなり壊れた。後は俺の力でもなんとかできるかも。


「ふん!」


 俺は力を入れて鎖を壊そうとしたが、鎖はびくともしなかった。


「あ……あれ?」


「ふ……うふふ……残念だったわね。あなたの力ではこの鎖は壊せないわ。まぁ、鎖が壊れ始めているけど、その前にあの世へ逝けば問題ない!」


 クナブは鎖を握り、引っ張って俺をあの世へ送ろうとした。入口の渦まで、徐々に距離が短くなってきている。そんな……あと少しで鎖が壊れるのに。諦めた瞬間、俺の脳裏に成瀬の声が聞こえた。


「目を覚ましなさい! バカ剣地!」


 次の瞬間、俺を縛っていた鎖は音を立てて砕け散った。それを見たクナブは茫然としていた。


「そんな……何で……」


 その時、渦から巨大な赤い手が現れた。俺は驚いて後ろに下がって逃げたが、手の存在に気付いていないクナブはそのままその手に捕まってしまった。


「ちょ! いやっ、何をするの!」


「愚か者。今から貴様をある所へ送ってやる」


「どこよ、そこ!」


「地獄だ」


 この言葉を聞き、クナブは慌ててその手から離れようとしたが、手は猛スピードで渦の中に戻った。そして、渦は消えた。


「た……助かったのか」


 俺はホッとして、その場に座り込んだ。


「そのようじゃの」


 いきなり聞こえた声を聞き、俺は驚いた。


「か……神様!」


 後ろにいたのは、ミスって俺と成瀬を死なせてしまったあの神様だった。


「まさかまた会えるとは思わなかったの」


「それはこっちのセリフです。でも、今すぐ帰るので……の前に、どうして助けてくれなかったのですか!」


 俺はクナブに捕まっていた時、何で助けてくれなかったのか聞いた。神様は頭を下げながら、口を開いた。


「一部呪いは神でも対処できないのじゃ。特に好意、悪意、殺意などがこもった呪いは強すぎて神でも対処できないのじゃ。今のケースは、君への好意が強すぎたの」


「そ……そうだったのですか」


 俺はそう言って、戻ろうとした時、神様が俺にこう言った。


「あー、ちょっと待って。実は頼みがあるのじゃよ」


「頼みって?」


「約五百年前、ペルセラゴンでは一時的にエルフの数が減少した時期があっての、一部の転生者に頼んでエルフとして転生してもらった時期があるのじゃ」


「そんな時期があったんですか。それで?」


「そのうちの一人が、とんでもない悪意を持っておるのじゃ。近いうちに、何か大きな事件を起こすつもりじゃ」


「名前とか分かりますか?」


「生まれ変わって名前を変えたかもしれないから、今の名前は分からないが……生前の名前は徳川家康と言う。どうか、そいつを倒してほしい……」


 その名前を聞き、俺は驚いた。詳しく話を聞こうと思ったが、後ろから現れた光が俺を包んだ。




成瀬:フィレの家


 私たちが剣地に呼び掛けて数分が経過した。床に書かれた魔法陣はすでに光を失っており、私たちが集めたアイテムで作った薬はもうない。


「もう……大丈夫なのかな?」


「おそらく。首筋の呪印も消えている」


 ヴィルソルの言うとおり、剣地の首筋に発していた呪印はもうなくなっている。フィレさんもこの様子を見て、唸り声をあげていた。


「もう呪いは解除したと思うのだが」


 この時、ルハラが剣地に近付いて、左胸を耳に当てた。


「心臓の音がする。死んではいないみたい」


「じゃあ、もうすぐ起きるかもね」


 ヴァリエーレさんがこう言った直後だった。少しだけ剣地の右手が動いたのだ。


「右手が動いた!」


「剣地!」


 私たちは剣地の顔を見て、剣地が起きるのを待った。それからすぐ、剣地の目が開いた。


「うぅ……酷い目にあった」


 剣地のダルそうな声が聞こえた。よかった……呪いが解けたみたい。私がそう思っていると、剣地は指で私の目の下を触った。


「涙、出ているぜ」


「もう……誰のせいよ! バカァ!」


 感情があふれて止まらない。私は涙を流しながら、剣地に抱き着いた。


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