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裏ギルドのアサシン


成瀬:ベロラーダの会社、事務室


 事務室で作業中、私は何かの気配を察した。ルハラも察したのか、作業の手を止めた。


「ん? どうかしたか?」


「いえ、大丈夫ですサエバさん」


 サエバさんに笑顔で返事を返すと、私はこっそり魔力の探知を始めた。裏天井には剣地の魔力、そして何者かの魔力を感じた。


「ナルセ、ちょっとー」


 と、ルハラは私を部屋内の隅に移動させ、小声でこう言った。


「ケンジに任せよう。ケンジなら、きっと勝つよ」


「そうね」


「二人とも、何の話だい?」


「大丈夫です。もう終わりましたので」


 心配したサエバさんに返事を返し、私とルハラは自分の椅子に戻った。剣地、負けないでね。




剣地:ベロラーダの会社、天井裏


 あまり派手に戦いたくないな。下には今回の事件とは関係ない人たちがたくさんいる。それに、この戦いで騒動が広がったら今回の任務は失敗だ。それだけは避けたい。おっと、考えていたら、弾丸が飛んできた。どうやら、あいつもサイレンサー付けた銃を使うのか。


「出てこいよ、ネズミちゃん! 始末してやるからよ!」


 始末されるために姿を出すかよ。俺は柱の裏を移動しながら、相手の姿を確認した。


 相手は黒いコートを羽織った変な男だった。見た感じ、二十代ぐらいだろう。で、そのコートには上からナイフが刺さった頭蓋骨の絵が描いてあった。


 聞いたことがある。ギルドの中には裏ギルドというものが存在する。主に暗殺、強盗、スパイ、テロ行為など、ありとあらゆる犯罪行為を行う連中だ。この世界の法律で、裏ギルドに関わるのは犯罪行為で、見つかった場合は即逮捕となる。


 数ある裏ギルドの中に、スカルナイフという裏ギルドのグループがある。請け負う仕事は裏の家業を主にする連中の護衛だが、そいつらは人を殺すのをためらわない。目印は、服の背中部分にナイフが刺さった頭蓋骨の絵。まさに、俺が相手している奴だ。


「ちっ、面倒だな」


 裏ギルドの男は、舌打ちをした後、銃を乱射し始めた。


「出てこいよ、ネズミ! お前の頭に弾丸ぶち込んでぶっ殺してやるよ!」


 向こうは殺す気満々だな。あ、もう一つ思い出した。裏ギルドの連中は主に犯罪者がメインである。そいつらを捕まえた場合、懸賞金がでる。それに、ベロラーダが裏ギルドと関わっているのであれば、それも証拠の一つとして出せる。こうなったらやるしかない。俺は息を殺し、銃を構えた。


 向こうは俺の動きに気付いていない。変な方向に弾を撃っている。今がチャンスだ。ゆっくりと引き金を引き、それに合わせて弾丸が物凄いスピードで男に向かって飛んで行った。


「そこか!」


 その直後、男は俺の方を向き、二発銃を撃った。そのうち一発が俺の撃った弾丸に命中して地面に落ち、残りの一発は、俺の前の柱に当たった。


「やっと見つけたぜ、ネズミちゃん」


 男は右手の銃をキザっぽく回しながら、俺に近付いてきた。


「お前を見つけんのに苦労したぜ。これでやっとぶっ殺すことができる。覚悟しておけよ、ネズミちゃんよぉ」


 相手は何か話しているが、俺は問答無用で男に斬りつけた。男は俺の奇襲を察し、後ろに避けて攻撃をかわしたが、ナイフの刃が左肩にかすったようだ。


「てめー! 人が話している時に攻撃するなよ!」


「犯罪者にそんなこと言われたくねーよ」


 俺はすぐに武器を変え、相手に向かって銃を放った。焦っている男は横の柱に逃げ、弾丸を避けた。


「クソガキが、おとなしく俺に殺されろよ」


 男は弾切れなのだろうか、柱から出ようとはしなかった。倒すなら今がチャンスだろう。俺はショットガンを装備し、相手が隠れた柱に近付いた。


「次こそお前を始末してやる」


「できるもんならやってみろ」


 柱から出てきた男に対し、ショットガンを突き付けた。もう弾を撃つ準備はできている。


「ケッ、こんなんじゃ勝負にならねーな」


「そうだな。さっさと捕まれ」


「だけどなぁ、捕まるわけにはいかねーよ!」


 男は水の魔力を使い、俺に攻撃してきた。こいつ、魔力を使えるのかよ!


「ハーハッハ! 俺はガンマンじゃないぜ、一応魔力も使えるぞ」


 クソ、油断していた。避難しようにも、相手の水が俺に向かって飛んでいる。


「無駄だ! どこに逃げようとも、お前を追ってやるぜ!」


 まずいことになって来た。いくら逃げても、あの水は追ってくる。しばらく逃げていると、目の前に道はなかった。


「追い詰めたぜ、ネズミちゃん」


 勝利を確信した男は、俺を挑発するかのようにこう言った。


「さてと、殺しのお時間だぜ。俺の銃でハチの巣になるか、俺の水で苦しんで死ぬか。本来は俺が決めるけど、今日は俺を追い詰めたご褒美でどうやって死にたいか選ばせてやる。三つ数える間に答えろ」


 おいおい、こいつ勝った気でいるよ。俺は裏天井の地図を把握している。もちろん、ここに逃げたのもわけがある。


「悪いね、俺は死ぬわけにはいかない」


「何?」


「嫁が二人いるからな。結婚してすぐ未亡人にさせるわけにはいかないんだよ」


 俺はそう言って、後ろに飛び降りた。


「結局勝てないから飛び降りて死んだか。ざまーないぜ!」


 男の笑い声が聞こえる。だが、俺は死ぬために落ちたわけじゃない。ここにはエレベーターがある。そして、この行き止まりの部分は、エレベーターが通る道でもある。タイミングが良かった。俺が飛び降りた時に、エレベーターは動いていた。俺はエレベーターの上に乗り、攻撃のチャンスを狙っていた。


「どれ、あいつのペッチャンコになった無様な姿を拝むとするか」


 奴は俺がエレベーターの上に着地したことを知らないようだ。これならいける。そう思っている中、エレベーターは奴の近くまで上がった。そして男は、俺が無事だということを知った。かなり油断していたのか、魔力を使う気配なかったし、銃も持っていない。隙だらけだ。悪いと少し思いつつも、俺は奴に弾丸を喰らわせた。一応死なない程度には加減している。


「が……はっ……」


 バランスを崩した男は、俺の方に向かって落ちてきた。こいつを死なせるわけにはいかない。ベロラーダが悪事を働いた証拠になるのだ。


 裏ギルドに関してもう一つ。裏ギルドは公式なギルドではないため、裏ギルドに仕事を依頼した依頼人は処罰されるのだ。ベロラーダはどういう理由なのか分からないが、裏ギルドに仕事を依頼した。それだけでも、あいつの悪事を暴く一つの証拠となるだろう。




ルハラ:宿屋の部屋


 その日の夜。私とナルセは部屋でくつろいでいた。だけど、ケンジはまだ帰ってこない、


「剣地、大丈夫かな」


 ナルセは心配そうにケンジの名前を呟いていた。これで丁度百回目だ。暇だったからナルセがケンジの名前を呟いた数をカウントしていた。確かに心配だけど、私は不安じゃなかった。だって、ケンジは強いから。


「ただいまー」


 扉の方から、ケンジの声が聞こえた。


「剣地……遅いわよ」


 機嫌を取り戻したナルセが、ケンジに近付き抱き着いた。ヒューヒュー。ナルセ、積極的になっているぅ。


「悪い。実は今日、裏ギルドの奴と戦ったから遅くなった」


「裏ギルド?」


「ああ。戦った後、俺はそいつをこの町のギルドに連れて行った。で、このことをヨキルさんに電話した」


「ヨキルさんは何て言ってたの?」


「近いうち、ベロラーダを告発するって」


 そろそろ、この事件が終わる時がきた。ベロラーダが裏ギルドに依頼をしていた。そのことが世間に知られたら、あいつの評判はどん底に落ちるだろう。そして、ヨキルさんはベロラーダの束縛から放たれ、自由になれる。で、ヴァリエーレはめでたく剣地の第三の嫁となる。


 ぐひひひひひ。ヴァリエーレって胸がでかい。あの胸をあれこれ弄り回すのが今から楽しみ~。だけどそんなことより、ベロラーダが追い詰められた時、どんな表情になるのかちょっと楽しみ。




ヴァリエーレ:屋敷の自室


 部屋で本を読んでいると、ヨキルさんが扉をノックし、部屋に入った。


「ヴァリエーレさん。明日のことについてお話があります」


「明日のこと?」


「はい。父の悪事を明日、メディアや警察に告発します」


「ということは、明日ですべてが終わるのね」


「はい」


 ヨキルさんの声は、はっきりとしていた。あることが気になっていた私は、ヨキルさんにこう聞いた。


「自分の親を告発する……実の父が裁かれることを覚悟しているの?」


「できています。私を育ててくれたのは父ではなく、メイドたちです。父は……ベロラーダは私のことを息子ではなく、ただの跡取りとしか見てくれませんでした」


「もしかしたら、あなたの今の地位も失うかもしれないのに」


「私は大丈夫です。自分の力でやって行きます」


 ヨキルさんは力強く私にこう言った。


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