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成瀬危うし


ヴィルソル:フィレの家


「おーい、戻ったぞー」


 我がフィレの家のドアを叩くと、中からヴァリエーレが現れた。何じゃ、我が一番乗りではなかったのか。


「ヴァリエーレ、先に戻っていたのか」


「聖域からこの里へ抜けられる場所があったのよ」


「聖域か。噂には聞いたことがあったが、まさかこの地にあったなんて思わなかったな」


 会話後、我とヴァリエーレはフィレの元へ戻った。フィレは真剣なまなざしでケンジを見つめていた。


「少しまずいことになりそうじゃのう」


「何かあったのですか?」


「うむ。急に苦しみだしたのじゃ」


 フィレの言葉通り、ケンジはうめき声を上げながら首を左右に振っている。それに、首筋の呪印も更に強く輝いている。


「そろそろ時間がないかもしれんのう……今あるのは聖域の水とチイロの花だけか……」


「この二つでどうにかならないのか?」


 我はこう聞いたが、フィレは首を左右に振った。


「そんな……」


「この二つだけじゃあ効き目が弱すぎる。じゃが、何としてでもこの坊主の命を食い止めて見せる!」


 フィレはこう言うと、魔力を込めてケンジに近付いた。


「ありったけの魔力を坊主にかける。少しだけかもしれんが、命が長くなるならやるしかない!」


「分かった。おいフィレ。我の魔力も使え」


 我はフィレの背中に触り、自分の中にある魔力を注ぎ込み始めた。


「これが魔族の魔力か……じゃが、今はあれこれ言っている暇はない!」


 その後、我とフィレはケンジの命を食い止めるべく、魔力をかけ始めた。後は勇者とルハラ、ナルセが持ってくるアイテムが頼りだ。皆……早く戻ってくれ!




成瀬:エクラードの森の洞窟


 里からかなり離れただろうな。もう森の奥深くまで来ていると思う。私はゴブリンの血を求めて森を歩いているのだが、ゴブリンみたいなモンスターは襲ってこなかった。ゴブリンはどこにいると私はそう思いながら、森の中を歩いていた。その時、私は周囲から殺意を感じた。


「出てきなさい。そこにいるのは分かっているわ」


 私は魔力を発し、こう言った。すると、周囲に潜んでいたゴブリンの群れが現れた。


「ゴブリンね。ナイスタイミング、あんたらを探していたのよ」


「何の用だ、小娘?」


 驚いた。このゴブリン、話ができるのか。この世界に転生して最初に戦ったゴブリンは確か喋ってなかったけど。


「あなたたちの血が欲しいのよ」


「俺たちの血が欲しいだと?」


「欲しければ俺たちを倒してみな! だがその前に……」


「お前は俺たちのオモチャになるかもしれないがなぁ!」


 ゴブリンの連中は槍を持ち、私に襲い掛かった。私はその瞬間、ある考えが浮かんだ。


「ヒャッハァァァァァ!」


 強烈な一撃が私に命中した。いや、魔力で防御をしていたから、大きい傷ではない。さて、やられたふりをして奴らのアジトへ連れて行ってもらおう。


 数分が経過しただろうか。私の耳には奴らの歓喜の声が響いていた。


「これはいい女だ! こいつは知っているぞ、ヒレラピの事件を解決したギルドのハーレムパーティーの女じゃないか!」


「人妻少女なんて、なんてマニアックなもの連れてくる?」


「そこがいいだろうが!」


 どうやら、私の計画通りにことは運んでいる。今、私は奴らのアジトにいるようだ。


「えー、これより誰が最初にこの人妻少女とフィーバーするかを決めようと思う。候補として、この人妻少女を捕らえたニアスゴブリンからフィーバーできる権利を授ける!」


 リーダーらしきゴブリン。まぁ、ニアスゴブリンと言っているが、そいつが私を捕らえた仲間から、私にエッチなことをする権利を与えたらしい。しばらくし、私と遭遇したニアスゴブリンが下品な笑みを浮かべながら、私の周囲を取り囲んだ。


「では早速……」


「おいしそうな太ももからいただきます」


 ニアスゴブリンは私のスカートを脱がし始めた。そんなこと、させるものですか!


「ん? 何これ?」


「おいこれ……火の玉だ!」


 私は足から火の玉を発し、近付いてきたニアスゴブリンを黒焦げにした。その後、風の魔力で私の手足を縛ってある紐を切り裂いた。


「女の子のスカートを脱がそうだなんて、そんなエッチなことはさせないわよ」


 私は足元にあったスカートを戻し、周りのニアスゴブリンにこう言った。


「こいつ、目を覚ましているぞ!」


「くそ! やられたふりをしていたのか!」


「でも何のために?」


「あんたらの血が欲しいからよ! ついでに、スケベなことをする淫乱なゴブリンを全滅させる!」


 私は両手に剣を装備し、二刀流のスタイルで攻撃を仕掛けた。


「襲ってくるぞ!」


「反撃しろ!」


 ニアスゴブリンも武器を持ち、私に襲い掛かろうとした。だが、私の剣は奴らの武器を斬り、そのついでにニアスゴブリンの体も斬っていった。


「な……何だ、この少女は……」


「人妻なのか? 最近の人妻は二刀流で派手に暴れるのか?」


「精鋭部隊が一瞬で全滅……だと……」


 ゴブリンの血液を集める中、離れた所で待機しているゴブリンの会話が私の耳に入った。


「あら、あなたたちは戦わないの?」


 私がこう聞くと、連中は一つの所に集まって何かを話し始めた。


「よし……こうなった以上!」


 やる気なのかしら。私は武器を構え、連中がどう動くか観察を始めた。


「皆! 逃げるぞ! こんな化け物を相手にしていたら全滅してしまう! 戦うことより逃げることを優先しろ!」


 と言って、連中は出口に向かって逃げ始めた。


「……アホな連中ね」


 私は水を出して凍らし、巨大な氷で出入り口を封じた。


「ああ! 唯一外につながる道が!」


「非常口はどこだ? そこから逃げるぞ!」


「非常口なんてこの洞窟に存在しないわ!」


「じゃあ……戦う以外ねーのかよ?」


 ニアスゴブリンは、恐る恐る私の顔を遠くから見ていた。私の顔を見てか、奴らは甲高い声で悲鳴を上げていた。


「うわ! 血まみれの顔で微笑みを浮かべているよ!」


「悪魔だ……」


「俺たちは……とんでもない奴を連れてきたらしい……」


 どうやら、奴らは私のことを怖がっているようだ。奴らに近付く中、私はヴァリエーレさんとの雑談を思い出していた。雑談の内容はゴブリンについて。ゴブリンにもいろんな種類があり、中には人間並みの知能を持ったゴブリンがいるらしい。そいつらが、ニアスゴブリンである。やっぱり知能が高いからか、私が自分たちより強いと察した連中は、悲鳴を上げて逃げようとしている。まぁ、出口は塞いだからもう逃げ場はないけどね。


「どうする? 戦っても殺されるのが目に見えているぞ」


「穴を掘ろう! それなら逃げることができる!」


「バカ野郎! 掘った穴の中に水を入れられたら俺たち窒息死するぞ!」


 少しの可能性を信じ、奴らは逃げる道を探していた。まぁ……そんな可能性があったら、私が潰しちゃうけどね。


「さぁ……そろそろあの世へ逝く時間よ」


 私がこう言うと、連中は一斉に土下座をして私にこう言った。


「お願いします! どうか、お命だけは助けてください!」


「嫌だ。どうせ逃がしても、また悪さをするでしょ? 美少女の旅人にエッチなことをしたり、拉致してエッチなことをしたりとか……」


 ため息を吐いた後、目の前にいるニアスゴブリンに目がけ、風を放った。


「キャァァァァァ! こいつ……表情を変えずに俺たちの仲間を斬りやがった!」


「嘘だろ……何でこんなことができる?」


「あんたたちが悪党だから」


 私はこう言うと、魔力を開放し、両手に剣を持って連中に襲い掛かった。


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