聖域への道
ヴァリエーレ:聖域へ続く道
ホルンアグリオスの突進が、私たちを襲おうとしていた。
「クッ!」
私は高く飛び上がり、奴の突進をかわした。しかし、前に歩いている白い馬に突進が当たりそうになった。
「危ない!」
思わず私は声を出した。だが、白い馬の姿が白い粒子になって分裂し、ホルンアグリオスの突進をかわした。
「私のことは気にしないでください。私は生き物ではないのですから」
「そ……そうなのですか」
そのまま走り去っていくホルンアグリオスを無視し、私たちは先へ進んだ。歩いていると、道端でしゃがんで泣いている女の子を見つけた。
「どうしたの?」
私は近付いてこう聞いたが、女の子は泣いてばかりいた。
「先に行きますよ」
白い馬はこう言ったので、私はムッとしてこう叫んだ。
「女の子が泣いているのよ、あなたは気にしないの? 冷たい人……人じゃないわね。冷たい馬ね」
「そんな感情はありません。私は聖域へ案内することしか考えていませんので」
「薄情な馬ね」
私はそう言ったが、あの馬を見失うと元の場所に戻ってしまう。うーん……仕方ない。
「お姉ちゃんと一緒に行こうか」
私は女の子を背負って白い馬の後を追って行った。しばらく歩いていると、何故か背中が重くなってきた。
「重そうですね」
「え……ええ……女の子を背負っているからね」
「女の子……ですか。その化け物が?」
白い馬の言葉を聞き、私はぎょっとして後ろを振り返った。そこには女の子の姿はなく、触手状のモンスターが私の背中にへばりついていた。
「まさか!」
「こんな所に迷子はいませんよ。たまに、姿を偽装して旅人をだまし、命を狙うモンスターはいますけどね」
「だったら最初から教えてくれればいいのに!」
私は雷を発し、触手のモンスターを地面に突き落とした。
「さぁ、早く行きますよ」
「分かっているわよ」
モンスターを倒した後、私は大急ぎで白い馬の後を追い始めた。
それから、聖域に着くまでいろんなことがあった。私の服を脱がそうとするいやらしいモンスターや、正面から私に戦いを挑んでくるモンスター、遠距離から私を狙うモンスターなどに襲われた。こんなのに構っていたら、遅れてしまう。私はそれらを無視し……いや、私の服を脱がそうとしたいやらしいモンスターはやっつけたけど、何とか白い馬の後を追うことができた。
「すごいですねあなたは。他の人は最初の挑戦で、必ず私を見失います」
「あら、褒めてくれるのね」
「はい。おめでとうございます。聖域へ到着しました」
その直後、私の目の前にオーロラが現れた。別に寒くもないのに何で。
「さぁ、このオーロラの中へお入りなさい」
私は恐る恐るオーロラの中に入って行った。最初に目に入ったのはまぶしい太陽。そして、明るい緑色の草。
「ここが聖域です。あなたが探している水場はこちらです」
白い馬は私を乗せ、水場へ案内してくれた。
「わぁ……」
私は思わず声を漏らした。聖域の水はかなり透き通っていて、気品なオーラを漂わせていた。
「これさえあれば、あなたの夫にかけられた呪いを解くことができるでしょう」
「ありがとう。それじゃあ、貰うわね」
その後、私は瓶に水を詰めた。
「では、エクラードへ案内します。近道がありますので、こちらをお使いください」
白い馬はそう言って私を案内した。すると、白い石で作られた祠が見えてきた。
「この中にエクラードへ続く道があります。それと、あなたにこれをお渡しします」
その時、私の体の周りに白いオーラが現れた。しばらくし、その白いオーラは消えてしまった。
「これは一体?」
「聖域のオーラをあなたの体内に入れました。今後、あなたは自由にこの聖域を行き来することができます。もし、何かあれば魔力を込めてラールと叫んでください。古の魔力を使った技だと思ってください」
「分かりました。では、また会いましょう」
その後、私は白い祠へ向かった。中には道はなかったが、代わりに白い渦が床にあった。そこから、強い魔力を感じる。もしかして、この中に入れば元の場所に戻れるのだろう。私は勇気を出し、その中に飛び込んだ。白い渦の中に入った直後、私は似たような場所にいた。
「ここはどこ?」
階段があったため、上に登ってみると、そこはエクラードの里だった。何だ。近道って言っても、すぐに帰れた。私はそう思いながら、フィレさんの元へ向かった。
ティーア:森の中にある崖
私が探しているアイテムはナーデモナオ草と言う草だ。この草は怪我や病気に効果がある。しかし、この草が生えているのはエクラードの森の中にある、この大きい崖の上だけである。それに、上へ行くための道は存在しない。この崖を登るしかないのだ。スカイウイングを使って登ったとしても、途中で魔力が切れて真っ逆さまに落ちるだけ。そう。この崖を自力で昇るしかないのだ。
「さーて、行きますか」
私はストレッチをした後、崖を登り始めた。
この崖の存在は幼い時から知っていた。この崖を登った者は、勇者を超えると話を聞いていた。しかし、この話を聞いた挑戦者は皆、途中で力尽きて落ちてしまう。師匠に聞いたのだけど、この崖を登ったのは今のところ師匠以外にいないとこのこと。
「グッ……ウッ……」
崖には隙間がなく、手で掴めるのが精一杯だった。崖登り用の道具を使ったとしても、あまり役に立たないだろう。
しばらく登っているけど、まだゴールは見えない。多分……三百メートル位の高さはあるだろう。ここで落ちたら確実に死ぬ……まぁ、私はスカイウイングを使えるからいいけど。だけど、落ちたらここまで登った努力が水の泡となって消えるな。それだけは避けないと。
数分後、私の耳に怪鳥の声が聞こえてきた。この森に生息する怪鳥が私の存在を察し、飛んできたのか? こんな所で戦うのはまずい。というか、戦えるはずがない。何としてでも、戦うことを避けないと。私は急いで腕を伸ばそうとしたのだが、その瞬間に腕に激痛が走った。
「つっ!」
あまりの痛さに、私の顔は引きつってしまった。その時、足を滑らせてしまった。
「なっ……」
何とか私は片腕を使って落ちることを防いだが、すでに周りには怪鳥の群れが現れていた。
「嘘……」
私が呟いた瞬間、怪鳥の群れは一斉に私に襲い掛かってきた。一匹の怪鳥のクチバシが崖に命中した。攻撃が外れたと思い、安堵の息を吐いた。しかし、その攻撃のせいで私が手にしている部分が崩れてしまった。
「え……」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。私はこの状況が分からないまま、落下しようとしていた。
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