狼の宝物とサキュバスの姉妹
ヴィルソル:エクラード南西の森
我の光の魔力を察したバーナンウルフは、驚いて後ろに下がっていた。
「これが全力の光の魔力……すごい力ですね」
「本気で行く。死にはしないように加減はするが!」
我はそう言うと、バーナンウルフに近付いて光の魔力での攻撃を仕掛けた。奴は後ろに下がって攻撃をかわそうとしたのだが、我はその行動を察知しており、光を伸ばして奴に攻撃をした。
「ガッハッ!」
攻撃を受けたバーナンウルフは後ろに吹き飛び、壁に激突した。
「グゥッ……ググッ……」
強く壁に激突したせいか、立ち上がろうとする奴の体はかなり震えていた。
「勝負ありだ。大人しくしていろ。これ以上戦うとなっても、貴様の命を削るだけだ」
「まだです……あそこだけは……守らなくては……私の命に代えても!」
まだ我に歯向かおうとしているのか。一体このバーナンウルフはどんな理由でチイロの花畑を守ろうとしているのだ? 我は叫ぶ奴を無視し、先へ向かった。しばらく歩いていると、我の目の前にチイロの花畑が咲いている場所へ着いた。
「ほう。これだけあれば、ケンジの呪いも解けるだろう」
こんなにたくさんあれば、サキュバスの呪いも少しは弱まるだろう。だが、たくさんはいらないと思うが。そう思っていると、我の耳に小さな唸り声が聞こえた。足元を見ると、まだ幼いバーナンウルフが我に足元で吠えていた。数は七匹。奥を見ると、赤子のバーナンウルフとその母親がいた。そうか。奴がここを守りたい理由が分かった。
「子供たちに手を出すな!」
傷ついたバーナンウルフが、我に向かって叫んだ。我は奴の方を振り向き、返事をした。
「我が欲しいのは数本の花だけだ。貴様の家族には手を出さないから安心しろ」
「他の愚か者も、そう言って私をだまそうとした!」
「その愚か者を貴様は倒してきたのか」
我は傷ついたバーナンウルフに近付き、魔力で治療した。我の行動を見て、バーナンウルフは目を丸くして驚いていた。
「な……何故……」
「言っただろ。貴様の家族には手を出さないって。ただ、数本花が欲しいだけだ」
「本当にそうだったのですか」
その後、我はバーナンウルフから花を貰った。
「ありがとう。そうだ、ついでに貴様に力をくれてやる」
我はそう言うと、自分の中にある魔力の半分を、バーナンウルフに与えた。
「すごい力だ……ついさっきまでと違い、体が軽い。筋肉がうなりを上げているように震えている!」
「その力があれば、愚か者との戦いが楽になるだろう」
「すみませんでした。あなたを疑ってしまって」
申し訳なさそうに、バーナンウルフは頭を下げてこう言った。我は軽く我って言葉を返した。
「気にするな」
「ありがとうございます。あなたの家族にかけられた呪いが解かれることを祈ります」
「うむ。ありがとな」
我はそう言って、チイロの花畑から去って行った。
ルハラ:エクラード西の森
私が探しているのは、サキュバスの涙と言うもの。サキュバスの呪いを解くのに、そいつらの涙が必要だなんて変な話だなー。そう思いながら、私は森を歩いていた。
しばらく歩いていると、変な気配を感じた。さっきまでは何もなかったのに、何故か興奮するような香りが周囲に漂ってきた。
「うふふ……旅人さん」
「こっちへいらっしゃい」
誰かが私をいざなう声が聞こえた。何だかこの声、エロいな。もしかしたら、この森にいるサキュバスかもしれない。私はそう考え、わざと声のする方へ歩いて行った。しばらく歩いていると、私の目の前に三人の女性が現れた。
「あら、エルフの女の子よ」
「何だ、男の子かと思ったじゃない」
「お姉さま、自分の好みの人間がくるとは限りませんよ」
サキュバスの姉妹はこんな会話をしながら、私の周りを取り囲んだ。
「まぁいいわ。この子の全てをいただきましょう。見た目に反して、魔力が高いわ」
「男の子の方がよかったけど、高い栄養の餌が見つかるとは思わなかった」
「最初はムロからいただきます」
ムロという末っ子のサキュバスが私の目の前に立ち、口を大きく開けた。何故か、私もつられて同じように口を大きく開けていた。何らかの催眠をかけられたのだろう。多分、奴らの声が聞こえた時点で催眠にやられたのか。
「あーん……」
末っ子が声を出した瞬間、私の口から魔力のオーラが現れた。この姉妹は人の魔力を餌にして生きてきたのだろう。
「ああ……すごい魔力を感じるわ」
「ムロ、私たちの分も残しておいてね」
二人の姉妹がこう言っていた。しばらくし、ムロは私の顔を寄せ、キスをした。直接魔力を奪うつもりだな。
「あん……柔らかい唇……」
舌同士が口の中で絡み合い、更に興奮度を増している。うん、幼い見た目に反してかなりのテクニシャンだ。だがしかし……この私には敵わないね!
「うん……ん? うっ! うっうっ!」
「ど……どうかしたの、ムロ?」
「マロお姉さま、なんだか様子がおかしいわ」
やーっとことの異常さを察したか。私はにやりと笑いながら、慌て始める二人の姉を見た。
「ちょっとあなた、ムロを離しなさい!」
「え? 何なのこの子? ムロからくっついて離れない!」
姉たちが私を引っぺがそうとしたが、それじゃあ私を動かすことはできないよ!
「た……助けてお姉さま……逆に力を吸われている……」
何とか私のキスから抜けたムロは、苦しそうにこう言った。しかーし! 再び私のキスが襲ったー! 今度はキスだけじゃない。この末っ子サキュバスの至る所を触ってやるぜ!
「んぐっ! んぐんぐ! むぐゥゥゥゥゥ!」
キスをする中で絶頂を迎えたらしい。だが……こんなんじゃあ私を止めることはできない!
「んあっ! 助けてお姉さま……このエルフ……私の体を……あぁん!」
「ムロ! もう少しの辛抱よ、耐えて!」
「この変態エルフ! ムロから離れなさい!」
二人の姉は私に向かって攻撃を仕掛けようとした。だが、私はムロを盾にした。
「人質のつもり?」
「この外道!」
「外道はどっちかなー? 迷った人の魔力やいろんなものを吸い取って殺して生きている君たちの方が外道じゃないのかなー?」
私は周辺に落ちている骸骨に視線を送りながら、姉たちに言葉を返した。
「くっ……返す言葉がないわ」
「あなたの目的は何? 差し出すから、ムロを離して!」
「目的……それはね……」
私は人質にしたムロの体の首元に風を発生させ、こう言った。
「君たちの涙さ」
「この……外道エルフ!」
人質にされた妹を見て、逆境した姉の一人が私に襲い掛かった。その瞬間、私は魔力を開放していた。
「ミロ! 逃げるのよ! このエルフかなり強いわ!」
長女が私の力を感じ、こう言った。バカじゃなさそうだ。だが、次女はバカみたいだね!
「これでも喰らいなさい!」
次女の攻撃が私を襲ったが。大した攻撃ではなかった。ただ、爪を伸ばして接近戦をするだけの攻撃だ。こんなのすぐにかわせる。
「そんな……」
「あ、それっと」
私は解放した魔力を風の刃にし、次女の服をズッタズタに切り裂いた。ぐひひひのひ。これでサキュバスの衣装がズタズタだねー。
「いっ……キャァァァァァァァァァァ!」
「それではいただきます!」
私は人質の妹を手放し、次女に飛びついて力強く抱きしめた。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!