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ティーアの師匠


成瀬:エクラード


 私たちはティーアの案内で、ティーアの師匠の元へ向かっていた。


「相変わらず変わってないなー」


 ティーアは懐かしそうな気分で里を歩いていた。まぁ、ここはティーアの生まれ故郷。テンションが上がるはずだ。だが、ヴィルソルは顔を青ざめてキョロキョロしている。


「どうかしたの、ヴィルソル?」


 ヴィルソルの後ろにいたルハラが、心配したのかこう聞いていた。


「我は魔王だが……本当に勇者の生まれ故郷へきてもよかったのだろうか? この里の住人の大半が、我が魔王であることを察しているぞ」


「大丈夫でしょー。ティーアと一緒に活躍しているってことくらい皆知っていると思うよ」


「仲間と判断してくれるかのう」


 まだヴィルソルは心配していたようだ。門番の人が何も問題はないと言っていたけど……何だか私も心配になってきた。


 それからしばらく歩いていると、私たちは一番高い所にある家に到着した。というか……家と言うより小屋のような気がする。


「師匠、フィレ師匠。ティーアです」


 ティーアが扉の前でこう言うと、中から声が聞こえてきた。


「ティーアか。ちょっと待っとれよー」


 その後、目の前の扉がゆっくりと開いた。中に誰かがいるのだろうなと思っていたけど、小屋の中には誰もいなかった。


「あれ? 誰もいないけど」


 ヴァリエーレさんは扉の外側を見て、ティーアに聞いた。


「ああ。師匠は多分この下にいると思うよ」


 下にいる? この部屋には階段らしきものは存在しない。どういうことなのだろうか? そう思っていると、部屋の中央の床が開き、そこから白髪で金色のローブを着た老人が現れた。


「いやー、お久。お前の活躍はスマホやテレビで見ているぞー」


「ははは。師匠も相変わらず元気ですね」


「いくつになってもワシは元気じゃ。勇者の師匠だぞ、わしは。お前らがここにきたのを魔力で察したわ」


 嘘? 私たち、魔力は使ってないのに! この時、フォレさんは笑いながら私の顔を見た。


「魔力を使ってないのに何で分かったの? と、言いたそうな顔をしておるな? 鍛えれば、人の中にある魔力を察して個人を確定することができる。マジックマスターのスキルを持っているお前さんなら、すぐにマスターできる」


「は……はぁ」


 なんだかこの人、私より強そうな気配がする。まぁ、そんなこんなで私たちはフォレさんの家の地下へ行くことになった。地下へ向かうエレベーターの中、フォレさんは剣地の様子を見ていた。


「ふーむ。サキュバスの呪いじゃのう。だが、たいして強い呪いではないが……少し時間が流れすぎたか? そろそろ死ぬぞ、この坊主」


「どうすればいい! 我らはケンジを助けるためにここへきたのだ!」


「とりあえず、落ち着け魔王の嬢ちゃんよ。移動が終わったら話をするから」


 その後、私たちを乗せたエレベーターは地下に到着した。


「さ、ここがわしの本当の家じゃ。上の小屋はカモフラージュのようなものだ」


「何でそんな面倒なことをしたの?」


「遊び心」


 ルハラの質問に対し、フォレさんは簡単にこう答えていた。遊び心でそんなことをするなんて……でも、人は見た目で判断してはいけないというし、多分強いのだろう。


「さ、ここがわしの部屋じゃ」


 しばらく歩いた後、私たちはフォレさんの部屋の前に付いた。扉を開き、私たちは絶句した。部屋の中にあったのはエッチな本やエッチなDVDがあり、奥にあるテレビはエッチなシーンで一時停止されていた。


「師匠、またスケベな映画を見ていたのですか?」


「当たり前じゃ! エロがない人生なんてまっぴらじゃ!」


 何だかこの人の言うことが信じられなくなってきた。こんなエロ爺が剣地を助けてくれるのかどうか、不安になった。


「あー! そこの嬢ちゃん、わしのことを甘くみとるな?」


「はい」


 どうやら、私の表情でどんな気分か分かったようだ。まぁ、ヴァリエーレさんもヴィルソルも私と似たような表情をしている。二人とも、あのエロ爺が胡散臭くなっているのだろう。


「大丈夫じゃ、スケベな性格でもあらゆる知識はちゃんと備えてある。ほら、そこのベッドの上に坊主を寝かせるのじゃ」


 その後、私たちはエッチな抱き枕で散乱してあるベッドの上に剣地を寝かせた。


「ねぇ、師匠のベッドじゃないよね」


「大丈夫じゃ。ここはエッチな抱き枕専用のベッドじゃ。わしは別のベッドを使っている」


「ならよかった。加齢臭まみれのベッドにケンジを寝かせたくないからね」


「ティーア、しまいにはわし本気で怒るぞ」


「あーい、すいません」


 ティーアの簡潔な詫びの言葉を聞きながら、フォレさんは指先に魔力を込め、魔法陣を描き始めた。


「これは?」


「わしが編み出した新しい魔力を使った技じゃ。まぁ、あまり使わないから、使い方も教え方も難しいんじゃがな」


 しばらくし、フォレさんは魔法陣を描き終わり、両手で魔法陣に触れた。すると、描かれた魔法陣が紫色に光出し、剣地を包み込んだ。


「これは一体……」


「解呪用の魔法陣を描いた。サキュバスの呪いは厄介だから効かないと思ったけど、試してみるものじゃったな」


 すごい……この人なら、本当に剣地を救えるかも!




ヴィルソル:フィルの地下部屋


 魔法陣による魔力を使った技。我もこんなことは聞いたことがない。もしかして、このジジイはこれまで誰もが考え付かなかった魔力の技を使えるかもしれない。しかし、これで厄介なサキュバスの呪いを解くことができるのだろうか? 我は少し不安だった。何もかも簡単すぎる。


「ふーむ。やはり難しいのう」


 やっぱり難しいか。フォレさんの小声を聞き、我はこう思った。だが、フォレさんは近くの本棚を漁り、何かを探し始めた。


「師匠、こんな時にエロ本探しですか?」


「違うわ! ティーア、お前も手伝え。サキュバスに関する本がここにあったはずだ」


「師匠、モンスターの図鑑とエロ本を一緒の本棚に入れるなって言ったよねー?」


「仕方ないだろ、本棚がないから!」


 勇者とフィレさんが会話をしながら、本を漁っていると、我の額に何か本が飛んできた。そこには、サキュバスの全てと書かれた本があった。


「おい。我の額に飛んできたぞ」


「でかした! ではサキュバスの弱点に関する部分を見てくれ!」


 我が本を開くと、ナルセたちが一斉に集まってきた。


「ここじゃ。サキュバスの苦手な物を合成してアイテムを作り、それで呪いを弱めるのじゃ」


「え? 弱めるの?」


「そうじゃ。呪いを弱めて、君たちの愛がこもったキスで坊主を目覚めさせるのじゃ」


 なんだかロマンチックな話じゃのう。眠った姫を起こすために、戦士がキスをして姫を起こす話は聞いたことがあるが、今回はその逆パターンじゃのう。


「よし皆、今から森に出てサキュバスの苦手な物を集めるのじゃ。この森はありとあらゆる植物やモンスターが生息しておる。奴らの苦手な物はすぐに集まるはずじゃ! この坊主のことはわしに任せろ!」


「大丈夫……なの?」


 ナルセが心配そうにこう言った。確かに、こんなエロ爺にケンジのことを任せられない。我も不安だった。


「なーに、これでも元勇者じゃ! 何が何でも守ってやるさ!」


 そう言うと、フィレさんは魔力を解放した。ただのエロ爺と思っていたが……この魔力の量は我以上だ。


「すごい……なんて魔力なの……」


「これでも本気は出しておらん。話に戻るぞ、わしができるのは坊主があの世へ逝く時間を延ばすだけじゃ。いずれにせよ、わしの魔力が切れた時にこの坊主は死ぬ。その前に早く持ってくるのじゃ!」


「分かりました!」


「ケンジのこと、よろしく」


「おう! 非常口があるから、それを使って外に出られるぞ!」


 その後、我らは返事をし、サキュバスの苦手な物を集めるために外へ向かった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 何だかこのスケベ爺さん、剣地とは結構ウマが合いそうな雰囲気がしますね。 剣地「爺さん、いい趣味してんな。俺もこういうのには目がないんだよ」 フォレ「お主、この儂の趣味を理解してくれんのか…
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