表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/594

深い爪痕


成瀬:デュークスーパースタービル


 戦いが終わって数時間が経過したと思う。疲れ果てた私たちは、まだ気を失っている剣地を連れてデュークスーパースターへ戻ってきた。


「あ! あなた方は今回の事件を解決するために依頼されたギルドの戦士たちですよね!」


「すみません、今回の事件について何か教えてください!」


「何故、クナブさんがあんな事件を起こしたについて分かる範囲で教えてください!」


 はぁ、すでにビルの入口には無数のマスコミがいる。こっちは戦いで疲れてバッテバテなのに、質問に答える暇はない。


「すみません……疲れているので後日……」


「そこを何とか!」


「私たちは皆さんにこの事件のことを伝える義務があるのです!」


「お答えの方をお願いします!」


 もう……今の私たちの表情を見てもこいつらは何も感じないのだろう。休ませてよもう。


「休ませてください」


「お願いします! 一言だけでも!」


「今すぐにお願いします!」


 マスコミの連中は私たちを囲み、何が何でも取材をさせるつもりだ。イラッとしたから、魔力をぶっ放して追い払おうと思った瞬間、デュークスーパースターの社長が現れてマスコミの人たちにこう言った。


「皆様、本日はお帰りをお願いします。ナルセ様たちは戦いで疲れていて、あなた方の質問に答える余裕などありません。会見は後日開きますので、今日はお引取りの方をお願いします」


「ですが……」


「お引取りの方をお願いします」


 社長の睨みが聞いた声を聞き、マスコミの連中は驚いて去って行った。


「ありがとうございます。助かりました」


 ヴァリエーレさんが私たちの代表として、社長にお礼を言った。社長はいえいえと言いながら、私たちをビルへ入るよう促した。


 部屋に戻ってテレビを付けてみたが、どのテレビ局もクナブの凶行のことばかり話題にしていた。


「うわー、もうテレビで流れているよー」


「これだけ騒動が大きいからね」


「これまでのヒレラピが巻き込まれた騒動の黒幕がクナブだと知ったら、さぞ驚くだろうな」


 横になっているルハラ、ティーア、ヴィルソルが次々と口を開いた。そんな中、私はまだ気を失っている剣地に近付いた。今、剣地はヴァリエーレさんのマザーズボディで癒されているが、目は覚まさない。


「どうですか? 剣地の様子は?」


「まだ眠っているわ」


 ヴァリエーレさんの腕の中にいる剣地は、時々うなり声をあげている。変な夢でも見ているのかな……早く起きなさいよ、剣地。




 後日、デュークスーパースターの社長は会見を開き、クナブが起こした事件についての謝罪と説明を語った。社長は会見を開く前に、成瀬たちからこれまでのことを聞いていた。そのことを会見で話した後の新聞やテレビでは、人気アイドルが裏ギルドと関係があったと言って大騒ぎしていた。


 生き残った血染めの太陽の戦士たちは、そのほとんどが警察に逮捕された。だが、リーダーであるレーフェンと、一部の幹部が死んだことにより、血染めの太陽は解散となった。アジトに残っていたピスク、ヴォーデは終身刑となったが、ルクや女性の団員はしばらく牢屋の中での生活となった。レーフェンを失ったルクは、ずっと深く悲しんでいたという。


 一人になったリリオは、ソロで活躍すると発表した。その後、リリオは圧倒的な歌唱力とパフォーマンスのおかげでヒレラピの時よりも売れ始めた。だが、リリオはテレビに出ると、クナブのことを聞かされるだろうと思い、テレビの出演は断っていた。




 ジョンはうす暗いバーで酒を飲んでいた。他の客はヒレラピの事件のニュースを見て、嘆き騒いでいた。


「あー! 俺クナブ派だったけどなー!」


「うひゃひゃひゃひゃ! 犯罪者を好んだバカがここにいたよ!」


「お前、どうせ体つきがエロいからクナブ派だろ?」


「そりゃそーだろ。あんな体の子を見たら、誰だって興奮しちまうよ!」


「現実を見ろ、あんな子がこの世にホイホイいてたまるか。あいつ、整形したぜ。それにおっぱいもいじってある」


「マジで?」


「というか分かれよ、改造手術の跡がちらちらあったぞ」


 周りの声を聞いていて、ジョンはバカにしたかのようにフッと笑った。その時、ギャッツが隣の席に座った。


「一人で飲む酒は美味いか?」


「惚れた女が横にいたら数倍美味い」


「ふふっ……残した女房のことを考えていたか」


「ああ。常日頃考えているよ」


 ジョンの答えを聞き、ギャッツはおかしそうににやりと笑った。そして、テレビを見てジョンにこう言った。


「お前のお客さん、死んじまったな」


「スキルの使い方を間違えたようだ。よくあるよ、頭のないバカが禁断スキルを使いまくって自滅することが」


「お前にしたら、有名アイドルもよくいるバカと同じか」


「そうだな」


 ジョンはコップの酒を飲み干し、ギャッツにこう聞いた。


「お前さんがこっちにくるのは珍しいな」


「しばらく会えなくなるから、挨拶でもしておこうと思って」


「何だ、どこかで大きい戦争があるのか?」


 笑みを浮かべたジョンを見て、ギャッツは嫌な顔をした。その顔を見て、ジョンは慌ててこう言った。


「大丈夫だって。人の仕事は横取りしないよ」


「そうか。なら、お前に話してもいいかな」


 ギャッツはボトルの酒をコップに入れながら、ジョンにこう言った。


「とある国の大臣が革命を起こすと話を聞いた。その大臣が裏で武器の密売をしたいらしくて」


「高値で売りつけるわけか」


「ああ」


 ギャッツの話を聞いた後、ジョンはコップに酒を注いだ。そして、ギャッツにこう言った。


「一つだけ言っておく。あいつらが関わったら一目散に逃げろ」


「あいつらとは?」


「今話題のハーレムパーティー」


 この説明を聞き、ギャッツは小さな声で笑った。


「そうだったな。お前はそのうちの一人に命を狙われているな。俺も同じ過ちをしないように気を付けるよ」


「幸運を祈るぜ」


 その後、二人は乾杯をした後、酒を飲んだ。




成瀬:ギルドの部屋


 あの騒動から一ヶ月が経過した。リリオさんとデュークスーパースターの皆さんは気持ちを切り替えて何とかやっているそうだ。


 しかし、私たちの方はそうではなかった。


「ケンジ……まだ寝ているの?」


「ええ」


「あれから一ヶ月経つのに」


「変なスキルでもかけられたのかな?」


 ヴァリエーレさんたちが、心配そうにケンジの様子を見ながらこう言った。クナブとの戦いの後から、ずっと剣地は眠っているのである。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まさかの昏睡状態ですか。 つまり、今度の長編はその剣地を助けるために暫くは成瀬視点で進むというわけですな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ