騒動の幕を下ろしたのは
ティーア:会場内
会場が震えている。恐らく、クナブが何らかの力を使っているのだろう。この広い会場が震えているから、力は大きいのだろう。
「さぁ、私の本気を見せてあげる!」
クナブの声の直後、会場全体は大きな音を立てて崩壊し始めた。
「皆!」
ナルセの声が聞こえた瞬間、私たちはナルセに近付いた。その時、ナルセは私たちを囲むようにバリアを作った。だが、ヴィルソルが慌ててこう言った。
「待て! リリオさんを守らねば!」
「大丈夫よ。いざという時に、リリオさんが隠れている部屋にバリアを張ったから!」
よかった。魔王の言葉を聞いて私も慌てたけど、すでにナルセはリリオさんを守る準備をしていたようだ。
「ちっ、バリアなんて張ったのね。しゃらくさいことしてくれるじゃない」
クナブは唾を吐き、こう言った。
「さーて、こっちから攻めますか!」
ルハラは高く飛び上がり、クナブに向けて飛び蹴りを放とうとした。
「はっ! そんな攻撃目に見えているわ!」
「だけど、こっちには目に見えてないようだね」
私と魔王はクナブの横に移動し、同時に攻撃を仕掛けた。
「なっ!」
不意打ちを受け、クナブはその場に片膝をついた。
「クソが!」
クナブが吐血した瞬間、上空にいたルハラの飛び蹴りがクナブに命中した。
「ガァッ!」
攻撃を受けたクナブは、悲鳴を上げながら後ろに吹き飛んだ。
「皆下がって!」
「ナルセ、力を貸して!」
「はい!」
ナルセとヴァリエーレが同時に前に飛び出した。ナルセは両手に風を発していた。その力をヴァリエーレに託すつもりなのだろう。
「今よ!」
「分かりました! ありったけの魔力を送ります!」
ナルセはヴァリエーレが持つ剣に風を送った。すでに剣には雷が発生していた。
「荒れ狂う風と雷を喰らいなさい!」
ヴァリエーレは風と雷が交じり合った剣をクナブに突き刺し、後ろに下がった。
「ハッ! こんなの……痛くも何ともないわ!」
この直後、クナブの顔が歪んだ。そして、彼女の腹の中から雷と風が暴れだした。多分そんな気がする。クナブの腹からは風の音と落雷の音が響き渡っている。
「ギャァァァァァァァァァァ!」
「いくら化け物でも、この攻撃は通じるみたいね」
「さぁ、今度は私の番よ!」
ナルセは両手に発している巨大な光の玉をクナブにぶつけた。光の玉は大きな音を立てながら破裂し、クナブの体を粉々にしていった。
「は……はは……ヒャーハッハ! 私の体をこんなにしても、意味はないわよ! 再生できることを忘れたのかしら?」
クナブは笑い声を上げながら再生を始めた。これだけ猛攻を受けても、奴の体は再生してしまうのか!
「はぁ……はぁ……さぁ……今度は……私の……番よ!」
あれ? 気のせいかな? なんだか奴の様子がおかしい。体は再生したが、受けた傷の回復はしていないようだ。
「死になさい!」
クナブは両手を地面にくっつけた。またツタを操るつもりか!
「ハァァァァァ!」
また地面からツタが生えてきた! けど、ツタの数と大きさが違うような気がする。
「グッ……力が入らない」
いいことを聞いた。理由は分からないけど、今のクナブに力はないようだ。
「皆! 分からないけど今がチャンスだよ!」
私はツタを斬りながら、皆の所へ近づいた。
「そのようね」
「じゃあ、皆の全力をぶつけて終わりにしようよ!」
「よし! 我から行くぞ!」
魔王は槍を装備し、闇を纏わせた。そしてクナブに接近し、連続突きを始めた。
「フィニッシュ!」
力を込めた一撃で槍を振り下ろし、クナブを地面に叩きつけた。
「この隙に私が!」
ルハラは地面にめり込んだクナブに近付き、風の弾丸をマシンガンのように発射した。風の弾丸はクナブを貫き、ダメージを与えた。
「ヴァリエーレ、次はよろしく!」
ルハラはクナブをヴァリエーレに向けて蹴り飛ばした。ヴァリエーレはすでに剣を構えていた。
「任せなさい」
ヴァリエーレは飛んでくるクナブに対し、連続で攻撃を仕掛けた。
「ギャァァァァァァァァァァ!」
急所を斬られているのか、クナブは痛々しい悲鳴を上げていた。
「ティーア、今のうちに力を溜めましょう!」
ナルセが私に近付き、こう言った。その後、私とナルセは剣を取り出し、刃に光と闇を発生させた。
「ヴァリエーレさん! 準備はできましたよ!」
「後は任せて!」
「分かったわ!」
ヴァリエーレはクナブを一閃した後、後ろに飛んだ。私とナルセはクナブに近付き、強烈な一閃をクナブに与えた。剣による一閃と、光と闇の魔力で受けた傷が大きかったせいか、クナブは悲鳴を上げて、その場に倒れた。
成瀬:会場外
戦いは……終わったのかしら? 私とティーアの一閃で終わったことを信じたいけど。ううん。終わってない。まだかすかにクナブから魔力を感じる。
「は……ははは……ははは! これで終わりなの?」
まずい! 今まで受けた傷を全て回復するつもりだ!
「くるわよ!」
「かかってこいや!」
「何度でも返り討ちにしてやろう!」
「皆、少し落ち着いて」
よかった。皆はまだ元気みたい。
「さぁ……これで……私の……体……体が……え?」
予想外のことが起きた。体力が回復したと思っていたけど、クナブの体はさっきより老いて見える……いや、確実に老化している。いきなりどうして?
「何で……こんな姿に?」
この直後、クナブの皮膚にひび割れができた。小さなひびだったが、それが急に広がって行く。
「そんな……あ……ああ……」
「そうか、思い出したぞ」
ヴィルソルが急激に老化したクナブを見て、何かを思い出した。
「サキュバスパワーはサキュバスと同じ力を持つ。じゃが、体中の力を使い果たしてしまうと……体が朽ち始め、最期には塵となって消えてしまう」
ヴィルソルの言葉を聞き、クナブはよろよろしながら周囲を歩き始めた。
「誰か……助けて……私の……力に……なり……なさ……」
歩く中、クナブの乾いた皮膚は地面に落ち始めた。落ちる自分の肌を見て、クナブは絶望したようにぼやいていた。
「い……や……死に……た……く……ない……」
歩く中、クナブは足をくじいて転倒してしまった。その際、クナブの体は地面にぶつかった。ぶつかった衝撃で、クナブのひびだらけの体は塵のように崩れた。
「終わったな」
塵となったクナブを見て、ヴィルソルが小さく呟いた。その直後、突風が吹き荒れ、塵となったクナブを吹き飛ばしてしまった。
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