悪女を止めろ
他人の力を奪い、自分の力にしているクナブは、さらに力を得るために外へ向かった。クナブは自分の力が強まることを察し、テンションが上がっているのだ。外に避難したファンや隠れている血染めの太陽の戦士たちが、空を舞うクナブを見つけた。
「あ、クナブちゃんだ!」
「なんか様子が違うぞ?」
「というか、空飛んでいる!」
「何かの演出だろ」
と、ファンはこう言った。次の瞬間、ファンを見つけたクナブはにやりと笑った。
「いい餌、発見」
クナブはファンに近付き、ファンの力を吸収し始めた。急に降りてきたクナブに驚いたせいか、ファンは身動きすらできなかった。だが、目の前にいた人が干からび、地面に倒れたのを見た別のファンが悲鳴を上げた。
「うわァァァァァァァァァァ!」
「何だ、今の? 人が……死んだのか?」
目の前で死人が出たことを察したファンは、大急ぎで逃げようとした。しかし、クナブはそのファンを見つけてしまった。
「逃がさないわよ」
クナブは後を追おうとしたが、後ろから衝撃を受けた。背中を触ると、緑色の液体が手についていた。
「ハッ! やったぜ、あのバケモンに命中した!」
「ザマーミロ!」
生き残った血染めの太陽の戦士は放った弾丸がクナブに当たり、勝った気でいた。それを見たクナブは大声で笑い、連中にこう言った。
「こんなもので私を殺せると思ったの?」
そう言うと、背中に命中した銃弾を気合で取り出した。
「痛くもないわ。これ、返すわ」
その後、クナブは力強く銃弾を弾き飛ばし、戦士の一人に攻撃した。
「うわっ! 弾き返しただと!」
「まずいぞ、さっきの銃弾を受けた奴……一発で死にやがった!」
「逃げろ、中にいるレーフェンさんたちと合流するぞ!」
クナブに敵わないと察した戦士たちは、中にいるレーフェンたちと合流しようと考えて会場内へ向かった。戦士たちが中に入ると、そこには干からびた仲間たちの死骸が大量に落ちていた。
「嘘……だろ……」
「俺たちの仲間……だよな。何で……そんな……」
仲間の死体を見た戦士たちは、その場に止まってしまった。
「そうだ、一ついい忘れていたわ」
入口にいたクナブが、ショックで身動きが取れなくなっている戦士たちに対し、笑いながら話した。
「あんたらのリーダーだけど、さっき私が殺したから」
「殺した……だと……」
「ええ。力を吸収したの。奴の力、すごくよかったわ」
その直後、連中は一斉に銃を構え、クナブに向けて発砲した。無数に放たれる銃弾はクナブの体を撃ち抜いた。
「このアバズレ女! てめぇなんて跡形もなくぶっ潰してやるよ!」
戦士たちは怒声を発しながら発砲を続けた。数分後、戦士たちが放つ銃弾は底をついてしまった。
「チッ、弾切れか!」
「弾がいくつあっても無駄なのに。こんなので私を殺せると思う?」
クナブは体を再生させながら、連中にこう言った。
「そこを動かないでね。今すぐあんたらのリーダーの所へ送ってあげるから」
その後、クナブは連中の力を吸収し始めた。数分後、力を得たクナブは、ステージ裏の扉を見てこう思った。
この力をリリオの奴にぶつけよう。そうすれば、奴の体は粉々になって吹き飛ぶはずだ。
成瀬:ステージ裏の小部屋
「ではリリオさん、ここで避難していてください」
「私たちはあいつと戦ってきますので」
私とヴァリエーレさんは、リリオさんにこう伝えた。すでにクナブと戦う準備はできている。
「皆さん……気を付けてください」
「分かったよー」
「ケンジのこと、よろしくお願いします」
「もし目覚めたら、今は休めと伝えてくれ」
ルハラたちはリリオさんの近くで倒れている剣地を見て、こう言った。
「さぁ、行きましょう」
私は先頭に立ち、クナブの元へ向かった。
今のクナブははっきり言って強敵だ。力を吸い取って自分の元にしてしまう力があるから、ブレアよりも強いかもしれない。しかし、何か策はあるはずだ。剣地がいない分、私がしっかり頑張らないと!
私たちがステージへ向かうと、そこには血染めの太陽の連中から力を吸い取っているクナブの姿があった。
「あらあんたたち、私に殺されにきたの?」
手に持っている死体を地面に叩きつけ、クナブは私たちにこう言った。
「殺されにきた?」
「あんたをやっつけにきたのよ」
私たちは武器を向け、クナブに返事を返した。
「やっつけにきた? もしかして、この無敵となった私に敵うとでも思ってるの?」
「やらないと分からないじゃない」
言葉の後、私はクナブに向けて炎のビームを放った。ビームはクナブの体に風穴を開けたけど、痛みはなかったようだ。
「酷い攻撃ね。だけど、こんなのすぐに治るわ」
クナブの言葉の直後、風穴があいた体はすぐに再生された。何なのこいつ……化け物なの?
「ナルセ、あまり派手に力を使うな。あれもスキルの力による影響じゃ」
「でも、サキュバスって体の再生できないでしょ?」
ティーアがヴィルソルにこう聞いた。
「確かに。じゃが、最近のサキュバスは体内に相手から吸収した力があれば、何でもできると話を聞いた」
「うわー、それじゃあ腕や足を斬り落としても生えてくるってこと?」
「そうじゃ」
私たちが話していると、クナブが突進してきた。
「ごちゃごちゃ話している余裕はないわよ! さぁ、とっとと死になさい!」
クナブは右手にツタを生やし、剣のような形に形成した。
「たぁっ!」
ヴァリエーレさんが前に出て、剣を振ってクナブの攻撃を阻止しようとした。しかし、ツタの剣は思っていたよりも頑丈だった。
「意外と固いわ」
「私の力を甘く見ないで欲しいわ」
ヴァリエーレさんが奴と斬り合いをしている隙に、私とティーアはクナブの横に移動し、クナブの両腕に斬撃を与えた。
「なぁっ!」
目の前にいるヴァリエーレさんの相手で私たちの動きが読めなかったのか、クナブは驚きの表情をした。
「次は私の番だねー!」
クナブの下の潜り込んだルハラは、強い蹴りでクナブを上に蹴り飛ばし、追撃で高く飛び上がった。そして、風を纏った拳でクナブを殴り始めた。
「ルハラ、思う存分殴ったらこっちへ飛ばせ!」
鎌を構えたヴィルソルが、ルハラにこう叫んだ。
「オッケー! 任せたよ!」
ルハラはクナブさんを下にいるヴィルソルに向けて蹴り飛ばした。
「これで……終わりじゃ!」
ヴィルソルは鎌を強く降り、クナブの体を一閃した。だが、攻撃を受けたクナブはヴィルソルの方を向いて笑みを浮かべていた。
「これでも生きているのか」
「言わなかった? 私は無敵だって」
クナブは笑みを浮かべながら地面に落ちた。それと同時に、深手を負った両腕から紫色の泡が発生し、傷を治してしまった。
「意外とやるわね。ここまでやられるとは思ってもなかったわ」
体の傷が治ったことを確認しながら、クナブは私たちにこう言っていた。
「だけど、少し本気を出すわ。あんたらをさっさと殺して、リリオを殺しに行かないといけないから……」
クナブはそう言うと、体の周りにオーラのような物を発した。この直後、ステージ全体が震えだした。壁にはひびが入り、天井から砂のような物が落ちてきた。この戦い、少し長引きそうだ。
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