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奪われる命


 クナブは子供の頃から自分が一番だと思っていた。勉強でも、運動でも、何らかの発表会でも彼女は目立つ存在であり、誰からも尊敬の眼差しで見られていた。そのせいで、彼女は変なプライドを持つようになってしまった。


 しかし、彼女は自分があの男、ムバの隠し子の一人であることを知ってかなりショックを受けた。隠し子と聞き、自分は普通の子ではないと思ったからだ。その当時からムバはテレビなどに出てそれなりに有名だった。テレビで映るムバを見て、クナブはムバに対し憎いと思っていた。


 その後、クナブはアイドルのスカウトマンにスカウトされた。芸能界に入ったから、何が何でも目立って一番になってやると彼女は意気込んだ。彼女はリリオとユニットを組まされ、ヒレラピというコンビで売り出すことになった。当時、リリオを見たクナブはこんな根暗が相方じゃあ私が目立つに決まっているじゃない。私の踏み台になるようせいぜい頑張りなさいと、心の中で思っていた。


 それから二人はアイドル、ヒレラピとして活動していったのだが、世間での人気はリリオの方が圧倒的に上回っていた。クナブがそのことを知ったのは、とある芸能雑誌を読んだから。その後、クナブはリリオ以上に目立って人気を奪ってやる。プロデューサーやテレビ局の偉い人と取引をして番組や雑誌で目立ってやる。整形をしまくってより美しくなってやる。そんな邪な考えでクナブはありとあらゆることを行ったが、結果は変わらなかった。


 何をやってもリリオには敵わない。そんな気持ちが悪い方向に傾き、次第にクナブはリリオに対し殺意を覚えた。そして、それと同時にもう一つの憎しみの対象である自分の父親のムバが、自分がアイドル活動をしていることをネタにして選挙で票を集めて大臣となった。その行動を知り、クナブはムバに対しても殺意を覚えた。だが、あのバカはいつでもやれると思い、そんなに気にはしなかった。


 それから、彼女は血染めの太陽にリリオ暗殺を依頼したのであった。




ヴァリエーレ:ステージ裏側


 クナブが直接リリオさんを殺そうとしている。何か手はないか……手はある! 私の左手はツタに絡まらず、自由に動ける状態だ! 急いで銃を持ち、クナブに向けて銃を発砲した。


「ギャア!」


 私が撃った弾丸は、クナブの脇腹に命中した。ダメージが大きいせいか、クナブは私たちの足元のツタを解除した。


「ナイスじゃヴァリエーレ!」


「ありがとうございます!」


 ヴィルソルは鎌を構えてクナブに近付き、ナルセは気を失ったケンジに近付いた。


「もう貴様は我の憧れのアイドルではない。貴様はただの腐れ外道だ」


「うるさいわね、劣等魔族。あんたなんてこれでぶっ飛ばしてやるわ!」


 クナブは接近したヴィルソルに対し、攻撃を仕掛けようとした。だが、クナブの攻撃は不発に終わった。


「チッ……力が欲しいわ……」


「力なんて」


「お前にやるか!」


 ルハラとティーアがクナブに接近し、攻撃を始めた。私も後ろから援護射撃をしている。徐々にクナブは弱ってきている。そろそろ倒せるか?


「ん? クフフフ」


 追い詰められたクナブは、黒焦げとなった男の元に逃げていた。男はクナブが近くにいることに気付いたのか、震えながら口を開いた。


「依頼主か……何故……そんな破廉恥な恰好を?」


「役立たずに答える義務はないわ」


 まさか……しまった! クナブはあの男をムバさんと同じように力を吸収するつもりだ! 私たちは邪魔をしようと思ったが、すでに遅かった。


「グァァァァァァァァァァ!」


 クナブはあの男の力を吸収し始めた。吸収を終えたクナブはにやりと笑い、干からびた男のミイラを踏み潰した。


「血染めの太陽のリーダーが、無様な最期を遂げるとは思わなかったでしょうね」


 どうやら、今死んだのが血染めの太陽のリーダーらしい。そんなことはどうでもいい。クナブは後ろを見て、にやりと笑った。


「あんたらを始末するにはもっと力が欲しいわね」


 クナブはそう言うと、両手を地面につけた。一体何をする気なの?




 トリュスは避難を終え、外に出ていた。護衛機能がある車に乗り込み、窓から外の様子を伺っていた。


「トリュスさん、ヒレラピの二人から連絡は?」


「まだない。ケンジさんたちからも連絡はない」


 トリュスは焦りながらスタッフにこう答えた。しばらくすると、周囲に轟音が響き渡った。


「何ですかこれ?」


「分かりません。このタイミングで地震か?」


 トリュスは地震が起きたと思っていた。だが、これはただの地震ではなかった。次の瞬間、会場全体にツタのような物が生えてきたのだ。


「な……何だ、あれは!」


「新手のスキルですか?」


 その後、ツタのような物は会場全体を包み始めた。しばらくし、ツタは会場全体を包み込んでしまった。トリュスは車から降り、ツタを調べ始めた。ツタの隙間から中を見ようと考えて必死で隙間を探したが、隙間は一つも見つからなかった。あの中にはヒレラピの二人、ファンや剣地たちがいる。彼らの命が危ないと察したトリュスは、スマホから警察へ電話をした。


「トリュスさん、中の様子は見ることができましたか?」


 この時、車に乗っていたスタッフが近寄ってこう聞いた。


「いや、隙間がなくて見ることができない。警察にも連絡をしたのだが……この状態じゃあ手が出せないかもしれないな」


 トリュスはツタを触りながら、スタッフにこう説明をした。




 今のクナブは上機嫌だった。今の自分なら、何でもできるという気持ちでいた。彼女は空を飛び、ステージ裏から外へ飛び出した。目の前には、ヴィルソルとの戦いで敗れたコンデが倒れていた。


「あ? 何だ、お前?」


「あんた、血染めの太陽の一人でしょ?」


 クナブはそう言うと、コンデは短く返事をした。その後、クナブはコンデに近付いて力を吸収した。


「ぬォォォォォォォォォォ!」


「役立たずは死んでしまいなさい」


 クナブは干からびたコンデを蹴り壊し、周りにいる血染めの太陽の戦士を見つめた。


「コンデさんが……」


「あいつ、なんかやばそうだな」


「逃げるぞ! 全力で逃げるぞ!」


「逃げるって、ツタに囲まれちゃあ逃げ場もないぞ!」


「じゃあどうすんだよ!」


「暴れるしかないだろ!」


 会話を終えた戦士は、一斉に銃をクナブに向けた。クナブはそれを見て、にやりと笑った。


「そんなものが私に効くわけがないでしょ?」


 そう言うと、クナブは右手から桃色の霧を発した。その霧を吸い込んだ戦士たちは、ふやけた顔となり、クナブの元へ近寄った。


「俺を食べてください」


「俺の方が美味ですよ」


「美しい人に食べられるなら光栄だぁ」


「フフッ。サキュバスの力って……本当に最高」


 クナブはそう言うと、血染めの太陽の戦士の力を吸収し始めた。数分後、干からびた戦士の中央にいたクナブは、高笑いを始めた。


「いい、いいわ! いいわ、この力! 吸えば吸うほど力が増してくる! あ~、なんていいスキルなの! 最初から使えばよかったわ!」


 クナブの声が、誰もいないステージの中響き渡った。その後、クナブはさらに力を吸収しようと考え、外へ向かった。


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