戦場と化したライブ
クナブの父であるムバは、ライブのイベント会場へきていた。だが、スタッフによって入口は封鎖されている。それに、周りには怯えて逃げている男性ファンの群れがあった。
「一体、どうなっているのだ?」
奇妙な空気の中、ムバは震えながらこう言った。
ヴィルソル:イベント会場内
ふぅっ、これで雑魚の群れは倒しただろう。我とルハラの目の前には、倒した雑魚の群れがあった。
「いやー、案外楽勝だったねー」
「我らが強くなった。数々の任務を乗り越え、経験を積んで強くなったのじゃ」
そう。これまで何度も激しい戦いを我たちは生き抜いてきた。その数だけ、我は強くなったのだと思う。そう思っていると、遠くから何かが迫ってくる音が聞こえた。
「ルハラ」
「分かっているよー」
我とルハラはステージ側の方へ移動し、音から遠ざかった。しばらくし、我たちがいた場所で大爆発が起こった。
「あらら、遠くからやったはずなのに避けられたよ……」
「コンデ、あんたの攻撃はばれやすいのよ」
ほう。どうやらさっきの雑兵よりも強そうな奴が出てきたではないか。敵は男と女。女……か。しかも色っぽいビキニ姿だ。うわー、ルハラが別の意味でやる気満々だ。
「ヴィルソル、私はあのお姉さまと一発やってきます!」
「こんな所で発情するな……と言いたいが、言っても無駄か」
「その通り! 行ってきます!」
発情したルハラは、猛スピードであのビキニ美女の所へ向かって行った。それを見たコンデと言う男は、軽く笑ってこう言った。
「ハッ! 自分の方から向かってくるなんてバカじゃねぇの?」
「バカはお前だ」
我は猛スピードでコンデの所へ接近し、蹴り飛ばしてルハラから遠ざけた。
「グッハッ!」
「この魔王ヴィルソルが貴様の相手になってやろう」
「魔王だと……ハッ!」
コンデは両手にナイフを装備し、我に向かって降り下ろした。
「ガキが調子に乗るな!」
奴がナイフを振り下ろした瞬間、空間が少し歪んだ。そうか。見えない風を発し、攻撃をしているのか。
「よっと」
我は上に飛んで攻撃をかわすと、見えない風は壁に当たって爆発を起こした。見えない風の中に、触れた瞬間に爆発するように火属性の魔法を入れてあるのか。風の中に火を入れるのはかなり難しいとされている。ほう。コンデという奴はそれなりにできるようだ。
「貴様の腕は察した。我も本気を出すとしよう」
我は闇で作った鎌を持ち、奴に向けて投げた。ブーメランのように回りながら飛んで行く鎌は、徐々に奴に近付いて行った。
「闇の魔力か……食ったことがないからどんな味か楽しみだな」
食ったことがない? 何を言っているあいつは? 闇を食べる気なのか? そう思っていると、奴は口を開いた。奴の口の中は、白い空間ができていた。
「いただきます」
その直後、我が放った闇の鎌は、奴の口の中にある空間に吸い込まれてしまった。
「うっぷ……不味いな」
奴の姿を見て、我はあるスキルを思い出した。トリガースキル、カビームント。口の中にどんなものでも食材のように変えてしまう空間を発し、何でも飲み込んでしまう。奴はそのスキルを手にしていたのか。
「さぁ、次はどんなものを食わしてくれる?」
「貴様に食わすようなものは……何もない」
攻撃を仕掛けたいが、闇を放っても奴に食われてしまう。確か、カビームントは飲み込んだものを魔力へと変換してしまう。なら……接近戦しかないか。
我は闇で槍を作り、奴に接近していった。
「ほう。直接叩くか。活きがいいねぇ」
我が接近すると、奴は大きな口を開けて我を飲み込もうとした。確か、あれは魔力以外でも生き物も飲み込むことができる。虫や動物だけでなく、人間も飲み込むことができる! まずい、奴に近付いたら食われてしまう! 我はそう思うと、走るのを途中で止めた。
「何だ、こないのか。じゃあ……」
奴は足元の地面を食い、体が入れるくらいのスペースを作った。何をするつもりだ?
「こっちからきてやるよ!」
その後、奴はプールで泳ぐように壁を蹴った。すると、奴は我に向かって猛スピードで襲ってきた。
「クッ! これでも喰らえ!」
我は奴がくると思われる通路に闇を発したが、奴は体を動かし、我の闇をかわしていった。
「さぁ、お前の健康的な褐色肌を食ってやるぜ!」
「食われてたまるか!」
奴が近付いた時、我は自身の中にある魔力を奴にぶつけた。我の右手から放たれる闇の波動が奴の体を飲み込んだが、闇の波動の中で奴はまだ動いていた。闇の波動を食べ、傷を抑えているのか!
闇の波動が消えた後、中にいた奴が姿を現した。
「ふぃー、食いすぎたな。腹の中がパンパンだぜ」
奴は腹を叩きながら、こう言った。
「さて、少し吐き出すとするか」
吐き出す? おいおい、食べ過ぎで吐くつもりか? 何てそんな安易な考え、我は持っていない。奴は今まで溜めたものを何かに変換して我に放つつもりだ!
「すぅ……ボッ!」
奴の口から、巨大な魔力の塊が放たれた。あまりにも大きすぎる、そして早すぎてかわせない!
魔力の塊の直撃を受けた我は悲鳴を上げ、勢いを付けて壁に向かってぶっ飛んでしまった。
「があっ……」
「おいおい、この攻撃を受けておねんねか?」
奴が挑発しながら我に近付いてくる。傷は受けたが、まだ動けるレベルだ。しかし、いくら攻撃をしても奴は攻撃を飲み込んでしまう。どうしようか……。
この時、我はあることを思い出した。奴は確かにこう言っていた。さすがに食いすぎたな、腹の中がパンパンだぜと。
そうか。あの手があったか。攻略法がないと思ったが、あの手なら奴を倒すことができる。
「さぁ、覚悟しな。魔王!」
「覚悟をするのはお前の方だ」
我は両手から闇の波動を放った。それを見たコンデは、笑いながらこう叫んだ。
「バカかお前は! その攻撃が通用しないことは分かっているはずだ!」
「黙れ」
「そうか。ならお望み通り食ってやるよ!」
計算通り。奴は我が放つ闇の波動を吸収し始めた。さて、このまま奴の腹を壊すまで、闇の波動をぶち込むとしよう!
我が闇の波動を放ち続けていると、余裕の表情だったコンデの顔が、徐々に苦痛の表情に変わって行った。ほう。そろそろ腹がいっぱいのようだな。
「ムガ! ムガムガムガムガガガ! ムガガガガガ!」
何を言っているか分からないのう。まぁ、あの態度から見るに、腹がいっぱいだからもういらないと言うことだろう。じゃが、我は攻撃を止めるつもりはない。
「ムガ! ムガガガガガガガガ! ムガァァァァァァァァァァ!」
「限界まで我の魔力を味わえ」
我はにやりと笑い、奴にこう言った。その後、奴の体が破裂する寸前に、我は闇の波動を止めた。
「ウプ……気持ち……悪い……」
「食いすぎは体を壊す元じゃ。ほどほどにしておかないと」
我は奴にそう言うと、手にした鎌で奴を攻撃した。この攻撃を口にしたせいか、コンデの口から無数に魔力の塊が放たれた。今まで腹の中で抑えていた魔力が、倒れたことによって溢れ出たのか。まぁそんなことはどうでもいい。奴を倒した、それでいいだろう。
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