ライブ前日
剣地:デュークスーパースターレッスンルーム
結局、クナブさんはレッスンに顔を出さなかった。明日ライブのはずなのに、大丈夫なのだろうか?
「オッケー、今日はここまで。明日本番だから、しっかり休むように」
「分かりました」
リリオさんはスポーツドリンクを一口飲み、コーチの声に返事をしていた。その後、リリオさんは着替えをしてビルにある宿泊施設へと向かって行った。
「さーて、我らも行くとするか」
「だねー」
ヴィルソルとルハラの声を聞き、俺は立ち上がろうとした。だが、何故か軽くめまいがする。
「めまいがしたのか?」
「ああ。朝からずっとこうだよ……」
今日の朝から、何故かめまいが発生している。何とか体は動けるが、だるさを感じている。何だろうこれ? 昨日まではこんなことなかったのに。
「今日は早く休むか? リリオさんの護衛は我とルハラに任しておけ」
「何かあっても私とヴィルソルで対処するから大丈夫」
「ああ……そうだな。悪いけど、俺は今日早く寝るわ」
俺はこう言って、一足先に宿泊部屋へ戻って行った。その途中、廊下の窓から明かりランプが見えた。何だろうと思ってみてみると、外に一台の車が止まっていた。そして、その車からクナブさんが降りてきた。明日ライブなのに夕方まで遊んでいたのか? 俺はこう思いながら、宿泊部屋へ戻って行った。
数時間後、俺は目をつぶって横になっていたが、なかなか眠りにつくことができなかった。
「明日は大事な日なのに……」
時計を見ると、針は十二時を指していた。もうこんな時間かよ。俺はそう思いながらなんとか眠れないか考え始めた。だが、焦りとめまいのせいでなかなか眠れなかった。水でも飲もうと思い、台所へ向かった。その時、隣の部屋から小さな声が聞こえた。よく聞いてみると、それはリリオさんの歌声だった。こんな時間まで練習をしていたのか、クナブさんと違ってプロ意識があるな。俺はそう思いながら、コップに水を入れていた。
水を飲んだ後、また横になったのだが、やっぱり眠れなかった。その時、ヴィルソルとルハラが部屋に入ってきた。
「お疲れ」
「まだ起きていたの、ケンジ?」
「なんか眠れなくて」
「明日のことを考えていたのか?」
「いや、何か分からないが眠れない」
二人はそうかと返事をすると、俺の横に寝転がった。
「なら、我らを抱いて眠るがいい」
「可愛い女の子を抱けば、眠りにつけるよ」
ルハラはこう言っていたが、すでに俺の背中から抱き着いており、胸や股間などをまさぐっていた。
「お前はすでに抱いているようだな」
「まぁいつものことじゃない」
「確かに」
俺の返事の後、ヴィルソルが前から俺を抱きしめた。
「これで幸せな気分で眠りにつけるじゃろ?」
「ああ」
俺は笑いながらこう返事をした。しばらくすると、二人はすやすやと寝息を立てて眠り始めた。何だか、二人の寝顔を見ていたら俺も眠りたくなってきた。ふぁぁ……大きなあくびが出たな。それに、徐々に眠くなってきた。これなら眠れるだろうな……。
クナブを禁断スキルセンターへ運んだ運転手は、コンビニに立ち寄って買い物をしていた。
「じゃあこれでお願いします」
運転手は菓子パンとコーヒーを買い、外に出て食べ始めた。その時、黒い服を着た男が運転手に近寄った。
「こんな所で買い物か」
「大物を案内していましてね」
「大物? 誰だ?」
「ヒレラピのクナブ。禁断スキルセンターに運んだだけで大金をくれたよ」
運転手は笑いながら男に話した。男はため息を吐き、運転手にこう言った。
「お前のような男はあまり表に出ない方がいいだろう」
「金のためなら表も裏も関係ありません」
「俺以上に商売魂がある奴だな……」
「金がねーとこの世界で生きられないからね」
運転手は菓子パンの包みとコーヒーの缶をゴミ箱に捨て、車に戻った。
「まさか、あんたがここにいるなんて思ってもなかったよ。ギャッツさん」
ギャッツと呼ばれた男はフッと笑い、運転手に向かってこう言った。
「その言葉をそのまま返すぜ。ジョンさんよ。また、生きていたらひょっこり会おうぜ」
「ああ。お互い生きてまた会おう」
と言うと、ジョンは車を走らせた。
車内に付けられたラジオを聞きながら、ジョンは車を走らせていた。その時、ラジオのニュースが流れた。
「本日からヒレラピのライブイベントがあります。ヒレラピが度々騒動に巻き込まれているため、デュークスーパースターはロイボの町の戦士、ケンジさんたちを護衛にしてイベントを開催すると報告しました」
この言葉を聞き、ジョンは驚きの声を上げた。
あいつらが関わっているのかよ……まぁ、今回は遭遇せずに済むから大丈夫そうだな。
と、心の中で思いながらジョンはアクセルペダルを踏み込んで車のスピードを上げた。
成瀬:深夜の森
はぁ……疲れた……あれからずっとヴァリエーレさんとティーアを担いで飛んでいたせいか、かなり体力を消耗している。
「大丈夫ナルセ?」
私はヴァリエーレさんのラブハートとマザーボディのスキルで疲れを癒していた。ティーアは剣を持ち、見張りをしていた。
「今のところ大丈夫だよ、モンスターはいないから! 安心してゆっくりして!」
「ゆっくりしてられないわ……早く……剣地たちの所へ……行かないと……」
「この調子じゃあ無理よ、少し休んでから行きましょう」
「うう……」
ヴァリエーレさんの言うとおり、体が悲鳴を上げている状態じゃあ動けもしない。早く行きたいけれど、今は休まないといけないな。そう思っていると、私はすぐに眠りについた。
翌朝。鳥の声を聞いて私は目を覚ました。私は寝袋で寝ていて、横にはヴァリエーレさんが私に抱き着いて寝ており、すぐ近くにはティーアが大の字になって寝ていた。
「朝か……ふぁぁ……」
私があくびをしたと同時に、ヴァリエーレさんの目が開いた。
「あれ……もう朝?」
「あ、起こしましたか?」
「大丈夫よ。うぅーん……」
ヴァリエーレさんは背伸びをし、爆睡しているティーアを起こした。私は寝袋から出て、軽くストレッチを始めた。
「誰か、時計持ってない?」
目を覚ましたティーアが、欠伸をしながらこう言った。私はヴィジョンマップを出し、下に出ている時刻を確認した。時間は今、十時少し過ぎだった。
「ライブが始まるのは確か……」
「十四時からよ。ここから間に合うかしら……」
「大丈夫です。ぐっすり寝たから体力が回復しました!」
私は腕を回しながら回復したとアピールをした。ヴァリエーレさんのラブハートとマザーボディのおかげで、完全に回復していた。
「よし、行こう!」
その後、ヴァリエーレさんとティーアは再び私に抱き着いた。私はスカイウイングを発動し、空を飛び始めた。私たちが到着するまでに、何も起きなければいいのだけれど。
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