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真夜中の出来事


剣地:宿泊部屋


 俺の目の前にクナブさんがいる。俺は驚き、声を上げようとしたが、クナブさんが俺の口をふさいだ。


「しーっ。静かにして」


「はぁ。で、どうしてここに?」


「隠し通路があるのよ。それを使ってここまできたの」


 そう説明すると、クナブさんは俺に抱き着いてきた。


「うふふっ。君みたいな男の子と抱き合うなんて夢みたい」


「いやあの、そんなことを言われても……それでも俺、嫁が五人いますので……」


「そんなの関係ないわよ。あなたを独り占めにするのは私。きっとね」


 と、クナブさんはそう言うと、俺の首筋にキスをした。


「頑張ってくれているご褒美よ」


「あ……ありがとうございます……」


 喜んでいいのか、どうしたらいいのか分からないため、俺は動揺しながらこう言った。その後、クナブさんはじゃあねと言って去ってしまった。うーん、一体何のために俺に会いにきたのだ?


「誰かきたのか?」


 ここで、ヴィルソルが部屋に入ってきた。後ろには不思議そうな表情のルハラがいた。俺は二人にさっきのことを簡単に説明した。


「へー、隠し通路があったなんて気が付かなかったなー」


 ルハラはさっきクナブさんが使っていた通路を目にし、珍しそうにこう言った。だが、ヴィルソルはクナブさんが言っていた言葉のことを気にしていた。


「ケンジを独り占めにするか……結婚したいというのか?」


「いや、俺としては成瀬たちがいるからそれ以上嫁はとらないつもりだけどな……」


「えーどうしてー?」


 ルハラがこう聞いてきたため、俺は少し恥ずかしいけどこう言った。


「愛しているのは五人だけだから」


 この言葉を聞いた二人は、興奮しながら俺に抱き着いてきた。もし、成瀬たちがいた状況で同じセリフを聞いたら、きっと同じようなことをするだろうなと俺は思った。




ヴァリエーレ:ホテル外


 少しやりすぎたかしら。ベーゼという男は私たちの攻撃を受け、丸焦げになってしまった。だが、蛇となった両腕はまだ動いていた。


「うわー、倒したのにまだ腕が動いているよ」


 ナルセが近付こうとした瞬間、ベーゼは大きな声で笑い始めた。


「はーっはっは! 残念だったな……俺に話を聞きだそうと思っているのか?」


「何よ、文句あるの?」


 この時、ティーアが何かに察したらしく、急いでナルセをベーゼから離れさせた。


「どうしたの、ティーア?」


「気を付けて……バジリスクアームの効果は両腕を蛇にする……そして、使用者が大きなダメージを負った時、両腕の蛇はその使用者を食い殺してしまう!」


 ティーアがこう言った瞬間、ベーゼの悲鳴が聞こえた。ベーゼの両腕の蛇は、大きな口で本体であるベーゼを食べ始めていた。


「残念だったなぁ……俺は口を閉じたまま死ぬために……このスキルを使った」


「何でこんなことを?」


 ナルセがこう聞くと、ベーゼは小さく笑ってこう返事した。


「負けて信頼している人に殺されるよりも、こうやって死んだほうがまだましだからさ」


 ベーゼの返事の直後、右腕の蛇が彼の頭を丸のみにした。


 翌日、私たちはホテルの従業員に話をし、ホテルを後にした。


「うわー、まだ血が残っているよ」


「腕も残っているし……」


 私たちが目にしたのは、両腕だけが残されているベーゼの死体だった。あれからすぐに私たちは部屋へ戻り、シャワーを浴びて眠りについた。そんな中でも、蛇となった両腕がベーゼの体を食べていると思われる音を思い出してしまう。あまりにもグロテスクな音だったので、気になって眠れなかった。


「ヴァリエーレ、大丈夫? 運転変わる?」


 後部座席に座っているティーアが、心配して私にこう言った。


「大丈夫よ。さっき、たくさんコーヒー飲んだから」


 私は笑顔でこう答えた。少し疲れているのはあるけれど、運転できる余裕はある。


「じゃあ行くわよ」


 皆にこう言って、私はアクセルペダルを踏み込んだ。


 今日の朝、私たちは最初に部屋を襲ってきた二人組の尋問をしていた。二人はベーゼより口が軽く、血染めの太陽のアジトのことを教えてくれた。


 奴らのアジトは廃墟となったビルで、侵入者対策でいくつか罠が存在する。


 それと、内部の情報も得ることができた。リーダーの他にも幹部というリーダーとほぼ同じ強さの戦士が四人いるという。その中に、以前ナルセが話していたヴォーデと名乗った男のことも話題に出た。


 もしかしたら、アジトで戦う中、幹部の連中と戦いになる可能性がある。少し緊張してきたかも。


「うーん……やっぱりあのビルの中に黒幕がいるだろうな……」


 考えごとをしていると、二人の会話が聞こえてきた。


「何の話?」


「黒幕の話。やっぱりあのビルの中にいるよ。だとしたら、私たちがアジトを潰しに行ったなんてこと分からない」


「だけど、ホテルの特定なんてできるのかしら?」


「それは……うーん……分からない」


 話を聞いているうちに、ラジオからこんなニュースが流れてきた。


「昨夜、ウロノネ峠周辺のホテルにて、何者かの襲撃がありました。警察によると、被害はホテルの損傷で収まったようです。ですが、ホテルを襲撃したのか理由が分からないと言うことです。実際、ホテル内の従業員や客の中に負傷者は誰一人出ておらず、何か盗まれたという情報はありません」


 このニュースを聞いたナルセは、ため息を吐いてこう言った。


「もしかして、私たちがこの周辺のホテルに泊まったことを考えて、周囲のホテルを襲ったのかも……」


「そうかもね」


「だとしたら、私たちの情報が奴らに伝わっているね」


 ティーアの言うとおり、私たちがアジトへ向かっているという情報を奴らは掴んでいる。こうなったら、真正面しか戦うしか道はないだろう。


「二人とも、この戦い結構きついことになりそうね」


「真正面の戦いね、関係ない! 血染めの太陽なんてコテンパンにしてやる!」


「私の魔力で何とかします!」


「フフッ。それじゃあ私も頑張らないとね」


 その後、私はアクセルペダルを思いっきり踏み込み、急いで奴らのアジトへ向かって行った。




ルハラ:デュークスーパースターレッスンルーム


 今、レッスンルームではリリオさんとクナブさんが次のライブに向けての練習をしている。何時間も体を動かしているのに、休憩時間はあまりない。ダンスの他に、歌の練習もある。もしかして、アイドルって私たちより体力があるだろうと思う。


「はい、少し休憩!」


 レッスンのコーチがこう言うと、クナブさんはその場に崩れるように倒れたが、リリオさんは呼吸を整えながら水を飲みに行った。


「あー……コーチ……少しは緩くしてよー」


 苦痛の表情をするクナブさんがこう言ったが、コーチはきつい顔をしてこう言った。


「緩くはしません! 次のライブで成功するにはきつい練習が必要です! ファンのためと思うなら、ちゃんと練習しなさい! 見てみなさい、リリオは文句も言わずに練習をしているのですよ!」


「あいつはあいつ、私は私だよ」


「いいえ! あなたがしっかりしなければ、ヒレラピの名前にも傷がつくのですよ!」


 その後、レッスンのコーチはクナブを叱り始めた。その内容は全て、リリオさんと比べられているような感じがした。その時のクナブさんの視線はコーチではなく、水を飲んでいるリリオさんに向けられていた。


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