三人の合体技
成瀬:ホテルの部屋内
敵はヨーヨーを使って戦うようだ。ヨーヨーに風の魔力を込めて、投げた時にヨーヨーの中の魔力を使って攻撃している。
「三対一か? 上等だぜ、お前らの相手なんてこのベーゼ様が切り裂いてやるよ!」
ベーゼと名乗った男は、ヨーヨーを振り回して私たちに攻撃を仕掛けた。
「皆、ここじゃあ戦いにくいわ。外に行きましょう!」
ヴァリエーレさんがこう言うと、窓から下に飛び降りた。続いてティーアが窓から飛び降り、二人が降りたのを確認した後、私は窓へ向かった。
「逃しはしねーよ!」
「逃げる? あなたバカじゃないの? 戦いやすい所へ行くだけよ」
私は火で作った鎖を放ち、奴の体を縛り上げた。
「鎖か!」
「さぁ、一緒に落ちましょう!」
私は鎖を引っ張り、奴と一緒に窓の下へ移動した。下ではヴァリエーレさんとティーアが攻撃の準備をしていた。
「引っ張るわよ!」
「分かったわ!」
「どんとこい!」
私が鎖を引っ張ると、上からベーゼの奴が落ちてきた。
「なっ! このままじゃ……」
奴は鎖で体を縛られ、身動きができない状況。そんな中で、ヴァリエーレさんとティーアの攻撃を同時に受けた。
「ブッファッ!」
攻撃を受けたベーゼは空高く打ち上げられたが、私は手にしている鎖を強く引っ張った。すると、上空にいるベーゼの動きが止まった。それからもう一度鎖を引っ張り、奴を地面にぶつけた。
「ガハァッ!」
「さぁ、いろいろと話してもらうわよ」
私は炎と闇で作った剣を両手に持ち、奴に突き付けた。だが、奴は笑いながら私の顔を見た。
「誰が教えるか」
その時、奴の右手から何かが回る音が聞こえた。奴の右手は何かを握っている。まさか、隠し武器?
「そーらよ!」
奴が隠し持っていたヨーヨーの攻撃が、私に命中した。私は防御をしていたから大きなダメージはなかったけど、右腕から血が流れた。
「大丈夫?」
「はい。魔力ですぐに治ります」
「その間に、私が戦うよ!」
そう言うと、ティーアが私の前に立った。ベーゼはバカにしたような笑いをしながらティーアを見つめた。
「テメーみたいなガキが俺様の相手になるかな?」
「ただのガキじゃないよ。あんた、新聞やニュースを見てないね」
「あんなもん見ても役に立たねーだろ!」
「あっそ」
会話を終えると、ティーアは斧を持って高く飛び上がった。
「おいおい、そんな攻撃が俺に当たるかよ!」
ベーゼは笑いながら後ろに下がり、ヨーヨーを回し始めた。
「後ろに下がって大丈夫ですかー?」
「あぁ?」
ティーアの挑発交じりの言葉を聞き、ベーゼがイラッとしたようだ。奴は何か言い返そうとしたが、その時にティーアは地面に斧を振り下ろした。すると、地面に刺さった斧から、大きい衝撃波が発生した。
「なっ!」
「避けられるものなら避けてみな」
ベーゼは発生した衝撃波を見て動揺した。衝撃波のスピードはかなり速く、すぐにベーゼに命中した。衝撃波の一閃を受け、奴の軽鎧は木端微塵に吹き飛び、奴も悲鳴を上げながら遠くへ吹き飛んだ。
「ふー、弱い相手だったね」
ティーアは斧をしまいながら、私とヴァリエーレさんの元へ戻って行った。
「こっちも治療が終わったわよ」
「話を聞きだそうと思ったけど、ぶっ飛んだならしょうがないわね」
「早く部屋に戻って寝ましょう」
「そうね、明日も早いし」
「さんせー、もう眠いよ」
そう言うと、ティーアは大きなあくびをした。その時、奴の声が聞こえた。
「待てよ! 戦いは終わってねー!」
なんて頑丈な奴なのだろう。私は呆れて火を奴に向けて放った。だが、奴の右腕が蛇のように動き、私が放った火を飲み込んでしまった。
「何……あの腕?」
「教えてやろう、いざという時に習得していたスキル、バジリスクアームだ」
バジリスクアーム、この名前を聞いたティーアは、驚いて声を上げた。
「知っているの、ティーア?」
「あのスキルは自分の両手を巨大な蛇のようにするスキルだよ。それに……あのスキルは禁断スキル! かなり前から規制されているスキルだ!」
禁断スキル! クァレバのレッジが使っていたものと同じ種類のスキルだ! まさか、奴も使ってくるとは思ってもなかった!
「そら! 食われて死んじまいな!」
奴は両腕を操りながら、私たちに襲い掛かった。蛇となった奴の腕は、周辺の草や木、挙句の果てには道路やホテルの壁を食いちぎりながら私たちに向かって行った。
「まずい、このままじゃあ食べられる!」
「あの腕に攻撃しても、ダメージは通らないって聞いた」
「じゃあ……本体に攻撃してみる?」
私がこう言うと、二人は頷いて返事をした。
「ならさ、皆で同時に攻撃すれば、奴を倒せるかもしれないね」
「同時攻撃ってわけね」
「合図はどうする? おっと」
会話中、奴の腕が襲ってきた。私たちは飛んで攻撃をかわし、襲ってくる別の腕を対処しながら話を続けた。
「合図はシンプルに一、二の三で。魔力で攻撃しよう」
「賛成!」
「じゃあ、行くわよ!」
ヴァリエーレさんの声の後、ティーアは光を、ヴァリエーレさんは雷を、私は全種類の魔力を解き放った。
「それじゃあ行くわよ!」
「一」
「二の」
「三!」
合図と共に、私たちは同時に魔力を放った。私たちの魔力は一つにまとまり、巨大なビーム砲になって奴に襲い掛かった。
「くそっ! 両腕よ、戻って……」
奴は防御をしようとしたが、その前に私たちが放ったビーム砲が奴を包み込んだ。ビーム砲の音がうるさすぎるせいか、奴の悲鳴は聞こえなかった。しばらくし、ビーム砲が消え去った。その跡には、黒焦げになった奴が地面に倒れていた。
「とりあえず」
「勝ったわね」
そう言うと、私たちは笑顔で顔を見合わせた。
剣地:宿泊部屋
今日の仕事もレッスン中の護衛だったな。事件はなかったし、少し気を抜いてもいいかなと思っていた。
「俺、そろそろ寝るから」
「おー」
「分かった。テレビの音は少し静かにするからな。おやすみー」
テレビを見ていたルハラとヴィルソルがこう返事をした。俺はあくびをしながらベッドがある部屋へ向かった。ベッドの上で横になり、目をつぶって寝ようとした。その時、壁から物音が聞こえた。俺は銃を持ち、壁に近付いた。
「誰かいるのか?」
「私よ、クナブ」
へ? クナブさん? なんでここに?
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