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クナブの父親


剣地:デュークスーパースター入口


 翌日。昨日行われた成瀬とヴィルソルの非人道的拷問のおかげで血染めの太陽のアジトが判明した。それから成瀬たちは準備をし、今出かけようとしている。


「それじゃあ行ってくるわ」


「ナルセのことは任せてね」


「そっちも何かあったらすぐに連絡して」


「ああ。皆、頼んだ」


「うん。じゃあ行ってきます」


 俺の言葉の後、成瀬たちは出かけて行った。成瀬たちが直接血染めの太陽のアジトを潰すことについては、事前にトリュスさんに連絡している。見送りの時に一緒にいたし。


「すみません……護衛の数が半分になってしまったのですが……本当に大丈夫ですか?」


 意外とトリュスさんは心配性だな。昨日も同じことを聞いてきた。


「大丈夫ですって。成瀬たちは強いので」


「逆に、ナルセを怒らせたら死人が出る可能性がある」


「ま、ジョンのような人を操るスキルを持っている奴がいなければいいが……まぁ大丈夫じゃ」


 俺たちの言葉を聞き、トリュスさんは短く返事をした。その時、トリュスさんの胸ポケットから音が鳴った。


「すみません、失礼します」


 トリュスさんはスマホを取り出し、電話を始めた。最初は返事をしていたが、最後は驚きのあまり声を高く上げていた。


「すみません。急な物なので。ええ……ええ……分かりました。すぐに報告します」


「誰から電話だったのー? 結構慌てていたけど」


 ルハラがこう聞くと、トリュスさんはため息を吐いてこう答えた。


「ムバさんがくるのです」


「ムバって、あの有名な政治家?」


「クナブさんの父親じゃ」


 はぁ。いきなりそんな大物がこっちにくるなんて予想外だ。クナブさんの父親が政治家って何かで聞いたことがある。それと、二人の仲はかなり悪いと聞いている。うーん……何もなければいいが。


 数時間後、ビル内でヒレラピの二人を護衛していた俺たちは、不意にクナブさんにこう言われた。


「あいつがくるの?」


「あいつって?」


「ムバ。私の父親」


 この時のクナブさんは、かなり機嫌が悪いようだった。やはり、あの親子の仲は悪いようだ。


「そう言ったが……到着はいつか聞いていないのう」


「はぁ……何のようなのかしら? あのクソ野郎」


 アイドルがクソ野郎とか言っていいのかな? この言葉を聞いた俺たちは、少し引いていた。その時、リリオさんが俺たちを廊下に出てくれと合図をした。


「どうかしましたか?」


 俺がこう聞くと、リリオさんは部屋の中を振り返りながら、小声でこう言った。


「気付いていると思いますが、クナブさん……父親と関係が悪いのです。だから、いつもよりも機嫌が悪くなるの」


「あー、そのことですか。大丈夫ですよ、俺も察していましたし」


「何かあったのか?」


 ヴィルソルの問いに対し、リリオさんは少し考えてこう言った。


「実は……ムバさんはかなり女癖が悪く、隠し子もたくさんいるみたいなんです。クナブさんも、その中たくさんいる隠し子の一人のようです」


「うわー、最悪な男」


「隠し子であるクナブさんが成長して、アイドルになった途端にムバさんはそのことをダシにして選挙を行ったのです。その結果、政治家になりました」


「それが理由で、関係が悪くなったのですか」


「いいえ、前から関係は悪かったみたい。それがあったから、悪化してしまったようで……」


 ふーむ。何か複雑な事情があるようだ。俺がそう思っていると、外から車の音が聞こえた。窓から覗いてみると、そこには黒塗りの高級車がビルの中へ入ってくる光景が見えた。うわ、リムジンよりでかいや。


「あの人がムバさんよ」


 リリオさんは、助手席に座っている中年男性を見て俺たちにこう言った。その時、トリュスさんが慌てて俺たちの元へ走ってきた。


「二人とも、皆さん、今ムバさんが到着しましたので、挨拶の方をお願いします」


「え? 俺たちも?」


「はい、念のため」


 念のためって……俺たちは護衛の依頼できただけど。だけど、この時に二人が狙われたら危ない。なので、俺たちもムバって人の所へ向かった。


 入口に到着すると、すでに社内のスタッフがムバさんの見送りをしていた。


「どうも、ムバ様。今日はどのようなご用件で」


 デュークスーパースターの社長が、笑顔でムバさんに近付いた。ムバさんは周囲を見回してこう答えた。


「来週から始まるヒレラピのコンサートを見に行こうと思っている」


「そうですか! 娘であるクナブ様のご活躍を見にくるのですね!」


「ああ。たまには見ないと」


 と言って、ムバさんは笑い始めた。そんな中、クナブさんがムバさんに近付いて胸元を無理やり引っ張った。


「何の用よ、クソ親父!」


「クソ親父……ただ、娘の晴れ舞台を見に行くと伝えにきただけだが……」


「私はあんたを父親だとは思わないわ! もう二度と顔を見せないでと言ったはずよ!」


「それは……何故だ? 私と君は親子ではないか」


「親子? 娘を選挙活動に利用する男を父親と呼べる?」


 クナブさんはそう叫んでムバさんを蹴り飛ばすと、睨みながらこう言った。


「死んだお母さんが言っていたわ。あんなバカな男に騙されるな、使われるなって……あんたのせいでお母さんは死んだのよ!」


「君のお母さんは……えっと……」


「自分の性欲を満たすために抱いた女のことは覚えてないのね、このクソ野郎! 今度私の前にきたらぶっ殺してやるからな!」


 クナブさんは叫んだ後、ビルの中へ戻って行った。ムバさんは運転手の人の肩を借り、その場に立ち上がった。そして、頭を下げてこう言った。


「では、来週のコンサートにきますので。その時はよろしくお願いします」


「はい。お待ちしています」


 そう言って、ムバさんは車の中へ戻って行った。いやぁ……こんな状況で娘のコンサートに行くって言うか? ルハラもヴィルソルも呆れた顔をして、ムバさんの乗った車を見つめていた。




成瀬:アジトへ向かう道中の峠道


 デュークスーパースターのビルから奴らのアジトまでは、車で二日かかるようだ。車を運転しているヴァリエーレさんは、助手席に座っているティーアにこう言った。


「ねぇ、どこか休める場所はないかしら?」


「うーん」


 ティーアはナビを操り、休める場所がないか調べた。


「あ、あったよ。近くにガソリンスタンドもある」


「よし、今日は遅いからそこへ泊りましょう。その時、一旦作戦を練るわよ」


「うん。だけどさ……まぁ……休めるといえば休めるけどさ……こんな所のホテルって大丈夫?」


 この言葉を聞き、ヴァリエーレさんの動きが止まった。


「ヴァリエーレさん! 前、前!」


 私の声を聞き、ヴァリエーレさんは我に戻り、目の前の急カーブを見事なドリフトで通過した。


「うーん……少し不安ね、他にないかしら」


「ない」


「うーん……仕方ないわね。そこへ泊りましょう」


 というわけで、私たちはそこのホテルに泊まることになった。峠道のホテルか……何か出そうで少し不安だな。


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