回る刃にご用心
ヴァリエーレ:着ぐるみキャラオンパレードイベント会場
「ガハァッ!」
ふぅ……今倒したので敵は片付いた。他の奴は私とルハラの力を見て、怖さのあまり引いている。
「何だよ、こいつら……」
「強すぎる……俺たちだけじゃあ敵わない」
「くっそ、こんなの聞いてない!」
「はいはい。あんたらは少し黙ってねー」
ルハラの風が、後ろに引いた奴を切り裂いていった。だが、まだ魔力を感じる。
「気を付けてルハラ、敵の中に強い奴がいるみたいよ」
「分かっているよー。だから手を抜いて戦っていたよねー」
「ほう。私たちがいることを察しているのですね」
後ろから白い着物を着た男性と、上半身裸の男性が姿を見せた。そいつらから、さっき感じた魔力を同じものを感じた。私の勘だと、こいつらはただの雑魚ではない。
「あんたたちみたいな強者がいるとの予想はしていましたよ」
「さぁ、とっとと始めようぜ!」
敵はやる気満々のようだ。私はルハラとアイコンタクトをし、それぞれ目を付けた敵に襲い掛かった。私は着物を着た男性、ルハラは上半身裸の男性に向かって行った。
「ほう。ヴァリエーレ嬢が私の相手ですか」
「裏ギルドの連中に名前が知れ渡っているとはね……」
「有名な騎士の家、そしてハーレムパーティの一員だから、名が知れ渡るのは当然では?」
着物の男性はこう言うと、魔力で私を弾き飛ばした。そして、魔力で作られた糸を周囲に伸ばし始めた。その直後、床に倒れていた奴らの仲間が一斉に宙に浮いた。
「なっ……何をするのですかイブレさん!」
奴の名前はイブレというのか。イブレは仲間を宙づりにして何をするつもりなのだろう?
「何をするかって? こうするのです!」
奴の叫びの直後、宙づりの部下が私に向かって飛んできた。奴は糸を使って周囲のものを操り、飛ばして攻撃するのか! だとしても、自分の仲間を武器として利用するなんて!
「うわァァァァァ!」
「止めてくれ!」
私の周囲に奴の仲間が飛んでくる。私はそいつらをかわしながら移動しているが、目の前に部下が迫ってきた。
「うわっ! 助けて!」
私は雷で弾き飛ばそうとしたが、奴の後ろから金属音が鳴り響いた。すると、奴の腹から何かが切り裂いて現れた。それを剣で床に叩き落とし、何なのか調べた。
「これは……コマ?」
それは周囲に刃のついたコマだった。まさか、奴は糸以外にもこのコマを使って攻撃をしてくるのか? その直後、辺りから金属音とイブレの仲間の悲鳴が轟いた。私の周囲に、刃の付いたコマが現れたのだ。
「さぁ、斬り刻まれろ!」
「それはどうかしら!」
私は持っていた剣に雷を発し、地面に突き刺した。地面に突き刺さった剣から雷が発し、私をバリアのようで包み込んだ。このおかげで奴の攻撃を防ぐことができた。
「やるようだね」
奴は血まみれの部下を操りながら、コマをブーメランのように戻していった。だが、私が手にしていた一つは奴の元へは戻らなかった。
「な……何で……俺たちを……」
奴の近くにいた部下が、途切れ途切れにこう聞いた。その質問を聞いたイブレは、汚物を見るような目で答えを言った。
「役立たず共を、どう使おうが私の勝手だ! 私の攻撃で使われて勝手に死ね。それが役立たず共に似合う仕事だ」
「き……貴様……」
「おいおい、血染めの太陽の掟を忘れたのか? 役に立たない奴は始末するって」
奴はこう言った後、質問をした部下に攻撃を仕掛けた。あいつ……なんて酷い奴なの!
「さぁ、戦いを続けよう! 役立たず共よ、私の武器となれ! そして死ね!」
奴は瀕死の部下を操りながら、自分の攻撃を隠し、私に奇襲を仕掛けてきている。もし、ナルセが奴と戦っていたら、ジョンの奴と戦っていた時と同じくらい切れていただろう。現に私も、あいつに対してブチ切れている。
さっさと奴に近付いて一撃をお見舞いしたい。だが、あいつの攻撃が部下で隠れているため、どのタイミングでコマが出てくるか、どこから襲ってくるか察知ができない。本当にどうしようかしら。そう思っていると、私は奴が回収し忘れたコマを見つめた。
「さぁ! これで斬り刻んでやる!」
再びコマが私に襲ってきた。部下を切り裂いて現れたせいか、辺りに血が舞っていた。私はそれを回避し、奴の近くへ行こうとした。
「私に近付くつもりか? 無駄なことを! 貴様は私に一撃も入れることなく死ぬのだからな!」
奴の声と共に、私の後ろにあったコマがブーメランのように戻ってきた。私は後ろを振り返り、剣でコマを弾き落とした。だが、その隙を奪われた。
「なっ! 体が!」
突如、剣を持っていた右腕が勝手に上に上がった。そして、体も動かなくなり、足も自由が利かなくなった。まさか……奴の糸が私を捕らえたの?
「おやおや、私の糸に気付かないとは……案外あなたも間抜けですねぇ」
しまった……コマに気を取られていて、奴の糸のことを忘れていた。奴は私の目の前に立ち、いやらしそうな笑みで私の体を見つめていた。
「美しい体だ。胸も、腰も、顔も……全て並の女性よりランクが上だ……こんな美しい女性と毎日寝ている男が羨ましい……」
「女も一緒にいるわよ」
「そうかそうか……」
奴は私の手の甲にある婚姻の紋、そしてエルフ、勇者、魔王の紋を見て呟いた。
「エルフと魔族と勇者の一族と交わったことには驚いたが……まぁ、いい」
その後、奴は糸を操って私を近くに下ろした。
「君のような美しい女性は、私がいただく。さぁ、今晩早速一緒に寝よう」
「嫌よ。私が心に決めた男性は、ケンジだけよ」
この言葉を聞いた奴は驚いた表情をした。奴は私のことを間抜けと言ったが、一番の間抜けは奴だろう。奴は私の左腕を糸で操るのを忘れていた。そして、その左手の中には奴が回収し忘れたコマがある。私は左手を開き、奴のコマを見せた。
「何と! まさか……一つ回収し忘れていたとは……ん?」
流石の奴も、異変に気付いただろう。このコマには、操られるほどの魔力を込めているからだ。
「自分のコマで斬り刻まれなさい」
私はコマを発し、奴に攻撃を仕掛けた。
「ギャァァァァァァァァァァ!」
防御の構えを取らなかったあせいか、大きなダメージを与えることに成功した。ダメージを受けた奴は悲痛な悲鳴を上げていたけど、これだけじゃあ私の気は収まらない。
「さーて、あなたのような下種野郎には……少しお仕置きが必要のようね」
私が手にしている剣の先に、物凄い量の雷が溜まっている。それに察したのか、奴は悲鳴を上げながら後ろへ下がって行った。
「止めろ……止めてくれ。何でも言うことを聞くから」
「何でも言うことを聞く? じゃあ……この攻撃を喰らった後、いろいろとお話をしなさい!」
私は奴に接近し、鋭い一閃を浴びせた。剣による一撃と雷の合体技は、かなり効いたようだ。電撃で黒焦げになった奴は、情けない声を上げてその場に倒れた。ふぅ……こっちは何とかなった。後は……ヒレラピの二人が見つかればいいけど……。
ルハラ:会場外
私と上半身スッポンポンの男の戦いは、激しさのあまり周囲の建物を壊していた。ぶっ飛ばしながら戦っているせいか、いつの間にか外に出ていた。
「うわー、ちょっと遠くにきちゃったなー」
さっきいたイベント会場が、少し離れて見える。さっさと奴を倒して、皆の元へ戻らないと。そう思っていると、男の回し蹴りが私を襲った。
「そらそらそらそら!」
「情けない蹴りだね」
私は奴の足を掴み、その場に叩き落とした。
「真面目にやる気あるの?」
「俺はいつだって本気だ! さぁ、このザンカの本気を受け取るがいい!」
その直後、ザンカという男は炎を発した。あーあ、こいつは意外と倒れなさそう。
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