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剣地:デュークスーパースタービル宿泊部屋
昨日の事件のことがニュースで流れている。映像の中では、俺とティーアがリリオさんたちを逃がしている映像が流れていた。一体どこの誰がこの映像を撮ったのだろう?
「うわー、通行人がスマホで動画を撮っていのね」
「それをテレビ局に渡したのね」
と、ティーアとヴァリエーレさんがこう言っていた。よく見ると、横の方にテロップで動画の提供人らしき名前が載っていた。俺たちがテレビを見ていると、トリュスさんが部屋に入った。
「皆さん。今日の予定ですが、通常通りに着ぐるみキャラオンパレードへ向かいます」
今日の予定は、着ぐるみキャラオンパレードというイベントの参加。ヒレラピの二人はそのイベントのサプライズゲストとして登場するのだ。ちなみに、着ぐるみキャラというのは日本でいうゆるキャラみたいなものである。
「一時間後に出発しますので、準備の方をお願いします」
と言って、トリュスさんは去って行った。
「昨日あんな事件があったのに、よく働かせるのう」
「結局、商売が大事なのね」
皮肉っぽくティーアがヴィルソルにこう返事を返していた。皆が着替えだしたので、俺も立ち上がって着替えをしようとした。
「さて、俺も着替えるわ」
その後、俺は別室で着替えをし、装備を点検して皆のいる部屋へ戻った。
「準備できたかー?」
「あ! ちょっ!」
成瀬の慌てた声が聞こえた。そりゃそうだ。だって成瀬はまだ下着姿だったからだ。他にも、ヴァリエーレさんの胸を揉んでいるルハラや、下着姿のままテレビを見ているティーアとヴィルソルの姿が映った。
「あー……ごめん」
俺は急いで別室へ戻った。その後、成瀬から物理的にも精神的にもきっついお仕置きを受けた。一緒に風呂入った時に互いの全裸を見ているのに、どうして恥ずかしがるのだか。
一時間後、俺たちはデュークスーパースタービルのバスに乗り込み、イベント会場へ向かっていた。バスに乗る前、ヒレラピの二人は爆発アフロになった俺を見て、驚いていた。
「何かあったのですか?」
「何も聞かないでください」
俺はこう言って、バスに乗り込んだ。
デュークスーパースタービルからイベント会場までは、この前と同じように高速道路で移動することになっている。ただ、前回と同じようなことを起こさないため、俺たちでバスの周りを見張っていた。まず、バスの中にルハラとヴァリエーレさんとティーア。スカイウイングを使える俺と成瀬、魔力で空を飛ぶことができるヴィルソルがバス周辺を飛んで警備していた。
バスが高速道路に入って数分が経過した。あの時はしばらくして連中が襲ってきたのだが、今日はそうでもなかった。
「何起きないな」
望遠鏡で周りを見ながら、マイクで成瀬とヴィルソルにこう告げた。
「こっちもそうじゃ。空を飛んでいるのは我らと鳥ぐらいじゃ」
「今日は襲ってこないのかしら?」
「とにかく、警戒を続けよう。油断したら、奴らがくるかもしれん」
俺はそう言った後、もう一度望遠鏡で周囲を見回し始めた。
ヴァリエーレ:バス内
バスの中には一台のモニターがある。テレビ代わりのような物。今、そのモニターには最近のニュースが流れていた。血染めの太陽のことが流れているかもしれないので、ニュースを流してもらっているのだ。
「どれもこれも昨日の事件のことしか言わないねー」
「そうね。他にも事件はあったと思うのに」
流れるニュースは、ほとんど昨日のケンジたちの戦いのことだった。他にニュースはないのかと思っていると、次のニュースで政治家であるムバのことが流れた。その時、スマホをいじっていたクナブさんが機嫌悪そうにこう言った。
「チャンネルを変えて」
運転手はその声に従い、慌てて別のチャンネルに変えた。どうしたのだろう、ムバのことが流れただけであの人の空気が変わった。
「ねぇねぇ、ヴァリエーレ」
と、ティーアが小声で私の肩を叩いた。
「どうかした?」
「小声で話して」
私はティーアに言われた通り、小さな声で話し始めた。
「何かあったの?」
「やっぱり、クナブさんとムバってなんか似てない?」
ティーアにこう言われた後、私は脳内でムバの顔とクナブさんの顔を移し、照らし合わせてみた。言われてみたら、この二人の顔のパーツはどこか似ている箇所がある。
「ええ。目のあたりと口の所が少し似ているわね」
「そのあたりに整形した後がある。もしかして……」
「その話は止めましょう。あの子の態度、見たでしょ?」
私がティーアにこう言い、この話を打ち切った。ムバが出た瞬間、クナブさんの態度が悪くなった。もしかして、あの親子……険悪な関係なのかしら?
とある廃ビルにて。傷だらけとなったシュージィーが目の前の男と話をしていた。
「そうか……ヒレラピの二人を殺そうと思って、奇襲を仕掛けたが逆にやられ、グナンテも捕まってしまったと」
「は……はい。そうですリーダー……」
リーダーと呼ばれた男は、ため息を吐いて立ち上がった。
「シュージィー、次の作戦ではお前も行ってこい」
「は……はい!」
リーダーは背伸びをしたシュージィーに近付き、手にした煙草を彼の頬に近付けた。煙草に付いた火が、彼の頬を少しずつ焼いた。
「ひ……ひっ……」
「次の作戦で失敗したら……どうなるか分かっているよな?」
「はい。了解しています……」
「じゃあとっとと行ってこい。遅れるなよ」
慌てて走り出すシュージィーを見ながら、リーダーがこう言った。話を終え、彼は再び座っていたソファに座り込んだ。手にしていた煙草を口に加え、煙を深く吸い込み、吐き出した。そして、横にいたビキニ美女の腰を触りながら、彼女にこう聞いた。
「ランディから連絡は?」
「いえ、まだよ」
「そうか」
彼はビキニ美女を自分の元へ抱き寄せ、熱く抱擁を始めた。
「今日のニュースを見たか。奴が向かった先で事件があったらしい」
「フフッ。こんなことをしている時に、仕事の話をする?」
「愚痴を誰かに聞いてもらいたい気分だ」
そう言って、リーダーはビキニ美女の唇にキスを始めた。
「俺の予想じゃあ、あいつは護衛の誰かに倒されて捕まっている。俺たちのことを話した可能性がある。グナンテも同様に捕まっている」
「じゃあ、あの二人はどうするの?」
うっとりした目でビキニ美女に見つめられ、彼はやれやれと言いながら美女に近付いた。
「帰ってきた時に処分するさ。役に立たない奴は消すに限る」
「酷いことをするわね、レーフェン」
「部下なんて基本使い捨てだ。適当にスカウトして、集めた連中だからな。底辺のゴロツキを集めるのは簡単だから、いくら減っても関係ない」
そう言って、レーフェンはにやりと笑っていた。その言葉と態度を見た美女は、フフッと笑って小さく呟いた。
「血も涙もない人ね」
「よく言われるさ」
レーフェンはそう答えると、テーブルの上にあったワインを一口飲んだ。
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