どんな時でも奴らは襲ってくる
成瀬:クナブが住むマンションの部屋
「えあー、いらっしゃい」
クナブさんが、情けない声と共に扉を開けた。中に入ってと言われたので、中に入ったが……こりゃ酷い。脱いだ服があちらこちらに散らばっている。
「うわー、すごい服の量」
「いらないから、貰っていいよー」
と、クナブさんはあくびをしながらこう言った。ヴァリエーレさんが近くの服を調べて、驚きの声を上げた。
「どうかしましたか? ヴァリエーレさん」
「この服、二百万ネカする高級物よ!」
「あー、それ? テレビ局の会長から貰ったの。似たようなのが数着あるから、欲しければ貰っていいよー」
クナブさんはソファーの上で寝転がりながら、近くにあったお菓子を食べ始めた。
「はぁ、ケンジ君がいたらよかったのに」
心の声を言っているのだろうか、まぁ……そんな独り言は置いておこう。剣地の方は大丈夫かしら。
ヴィルソル:ジム屋上
敵は一人とはいえ、どんな攻撃を仕掛けてくるか分からない。この前のようにバズーカのような物を使う奴、剣でバスを斬った奴もいた。もしかして、こいつも強いのだろう。
「あーあ、ばれちまったよ」
屋上に到着したのは、背中に二つの斧を装備した男。男は我を見て、にやりと笑っていた。
「あらら、これは有名なハーレムパーティの魔王様ではありませんか」
「貴様らのような下種野郎に我が名が伝わっているとは」
「これから私、血染めの太陽の一員であるランディはとある理由でとある人を殺さなければなりません。死にたくなければ、そこをどいてください」
「無理だな。守るのが我の仕事だからな」
「そうですか、じゃあ死ね!」
過激な奴じゃのう。ランディは斧を手にし、我に向かって襲ってきた。我は奴の攻撃を防御しながら、奴の攻撃手段を探った。
どうやら奴は斧を使った攻撃が得意のようだ。それに、魔力も感じる。何の魔力やスキルを使うか分からないが、少し様子を見ながら奴の手の内を暴いていこう。
「なかなかやるようだな。流石魔王と言ったところか」
「貴様に褒められても、嬉しいとは感じぬ」
互いの武器で攻撃していた我と奴は一旦離れた。すると、奴は魔力を発生し、何かを始めた。
「では少し本気を出すとしよう!」
その直後、奴は手にしていた斧を我に向かって投げ飛ばした。二つの斧をかわし、我は今がチャンスと察し、奴に接近していった。しかし、攻撃の手段を失った奴は何故か笑っていた。
「引っかかったな。魔王さんよ」
「察しておる」
我は奴の考えを察している。斧を投げて攻撃し、かわしたところブーメランのように戻して奇襲する。
「魔力を使って武器を遠隔操作する奴と戦ったことがある」
「ヘッ。じゃあ俺はそいつより一つ上だな!」
どういう意味だ? 我がそう思った直後、我の目の前にもう一つの斧が飛んできた。何とか攻撃はかわしたが、少し傷ができてしまった。
「チッ、かわしたか」
斧はもう一つあったのか。少し考えが浅かったな。しばらくし、奴が放った二本の斧は、奴の元へ戻ってきた。
「仕方ねー、もう一つの技をぶつけるしかないな!」
奴はそう言うと、三本の斧を地面に突き刺した。何をするつもりだと思いながら様子を伺っていると、突如メキメキと音が鳴り響いた。どうやら、斧が突き刺さったせいでできた亀裂が徐々に大きくなってきているのだ。こいつ、ビルを壊すつもりか!
「さぁ、一緒に落っこちようぜ!」
「断る!」
我は奴に近付き、槍で攻撃を始めた。しかし、奴は魔力で盾を作り、攻撃を防いでいた。
「言っておくが、瓦礫の中に埋もれるのはお前だけだぜ!」
奴は勝ち誇ったかのように我に向けてこう言った。何をバカなことを言っていると言い返そうとしたが、奴は我を下の地面に向けて殴り飛ばした。
「じゃーなー、魔王さん! 一生そこで眠っていろ!」
ふっ……この程度で勝ち誇るとは……奴もまだまだ未熟な戦士だな!
「愚か者が……こんなもので魔王を倒したとでも思っているのか!」
我は魔力を開放し、落ちてくる瓦礫を弾いた。奴は我の魔力を見て、悲鳴を上げながら後ろに下がった。だが、ビルが傾いているせいで逃げることはできなかった。
「クッ……こうなったら……」
奴は意地でもこの場から逃げようとするつもりだ、奴が乗っていた飛行物体に近付こうとしている。
「逃がすか」
我は光を発し、奴の飛行物体を破壊した。
「嘘だろ……マジか?」
奴はここから逃げられないことを察し、我の方を向いて睨んできた。
「こうなったら、道連れだ!」
「アホ。我もお前も死なせはせん」
その後、私は奴に向けてイレーズフォースを使った。全身の魔力が抜けたせいか、奴は気を失ってしまった。さーて、ここから脱出しないと。
剣地:トレーニングジム跡
たった数分で大きなトレーニングジムが瓦礫の山となってしまった。利用者や職員が、瓦礫の山となったジムを見て茫然としている。少し遅かったら、あの山の中で生き埋めになっていたかもしれないからだ。
しばらくし、瓦礫の山の上にヴィルソルと変な男が着地した。
「終わったぞ」
「お疲れ。でも……このジムが……」
「それはこやつがやったことだ。我を生き埋めにするためにこのジムを破壊したのだ」
恐ろしいことを考える奴だな。俺はそう思いながら白目をむいている男を見た。その時、ティーアが不安そうなリリオさんを見てこう言った。
「大丈夫です。ここからは私たちが何とかしますので」
「さすがにジムの建て替えは難しいけどな……」
俺たちの言葉を聞き、リリオさんは静かに頷いた。
数時間後、無事リリオさんをマンションに送り届けた俺たちは、デュークスーパースタービルへ戻っていた。
「今戻ったぜー」
「あ……おかえりー」
先に成瀬たちが戻ってきていたようだ。だが、その顔に疲れの色が見えている。ルハラもヴァリエーレさんも疲れたのかその場で倒れている。
「大変だったようだな……」
「大変だったわよ! あの子ったら、昼間から酒を飲んで悪酔いして……ああもう言いたくない」
「酒のせいで酷い目にあったようだね」
「両チームとも忙しかったようじゃのう。我の方は血染めの太陽に襲われたし」
この言葉を聞いた成瀬たちが、瞬時に起き上がった。
「襲ってきたのね」
「じゃが、大した奴ではなかった。リリオさんが通っていたジムは崩壊してしまったが、皆怪我はない」
「微妙な所ね……」
「確かに。じゃが、新しい敵を捕まえることができた。明日、我はこやつと話をしようと思う」
この時、ヴィルソルは笑っていたが、その笑顔は少し怖かった。
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