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奴のプライドを汚せ


ティーア:高速道路上


 グナンテという剣士の言動は私を呆れさせる。バスを斬った時はそれなりに剣の腕があると思っていた。だが、奴は大きな弱点を抱えている。


「殺す! 雑魚が調子に乗るな!」


 奴が激怒しながら、荒々しく剣を振り下ろしてきた。感情に任せて剣を振り下ろしているせいか、奴の攻撃の正確さが減ってきている。ナルシストでプライドが高い。こんな奴の相手はすぐに終わる。相手をわざと怒らせて隙だらけにし、その間に攻撃すればいい。


「あんたって強くないわね。これなら本気出さなくても勝てちゃうなー」


 私は笑いながら、奴を挑発した。


「何だと……貴様、僕を見下すな!」


 おーおー、更に感情をむき出しにして襲ってきた。やっぱり、こいつは剣士としては底辺並みの実力だ。


「死ね!」


「そーらよ」


 難なく私は奴の攻撃をかわし、隙だらけの奴の横腹を蹴り飛ばした。奴は悲鳴を上げ、その場に倒れた。


「クソ! また僕の服が汚れた!」


 奴は服の泥を落とし、ゆっくりと立ち上がった。鬼のような形相を見て、私は少し引いた。


「うわっ、酷い顔」


「黙れ、小娘ぇ! 僕をこんなに汚しやがって……ぶっ殺してやる!」


 その時、奴の体から魔力のオーラが発生した。奴もそれなりに魔力を使えるのか。


「僕の美しき風で、貴様を斬り刻んでやる!」


 奴が使う魔力は風か。まずいな、広範囲に広がる技だと皆にも被害が及ぶ!


「皆! ヒレラピの二人を守って!」


 私の言葉を聞いたケンジたちが、一斉に魔力のバリアを張った。


「うわー、すごい! 魔力でバリアを張れる人、初めて見た!」


「クナブさん、少し静かにしてください。これ、結構神経使いますので」


 ケンジは抱き着いているクナブにこう言った。あの子……この状況が分かってないのかしら?


「まずは貴様から斬り刻んでやる!」


 おっと、あいつとの戦いに集中しないと。奴の狙いは私のようだ。まぁ、あれだけプライドをズタズタにしたからねぇ。


「風の刃よ、奴を斬り刻め!」


 奴が放った風の刃が、私に向かって襲ってきた。数はぱっと見で三十ぐらい。バリアを張ればいくつか防御はできるのだが、多少のダメージは覚悟しないと!


 私はバリアを張り、奴の風の刃を防御し始めた。予想通りいくつか防御はできたが、バリアが削れたせいで、体の一部に傷がついた。だが、酷い傷ではなかった。


「もっとだ! もっと貴様の体に傷を付けてやる!」


 奴は何も考えずに風の刃を放ち続けた。私はバリアを消し、槍を装備した。


「対処法はいくらでもあるわよ」


 装備した槍を振り回しながら、私は奴の風の刃を消しながら奴に接近した。奴も私がここにくることを察しており、すでに剣を装備していた。


「さぁ、この手で貴様を斬り刻んでやる!」


「無理だと思うよ!」


 剣と槍。奴は冷静を見失っているせいでリーチの差のことを頭に入れていない。私は奴から少し離れ、槍で攻撃を始めた。


「グアッ! クソ、剣が……届かない!」


「あんたバカだねぇ。剣と槍じゃあリーチが違うわよ」


「黙れ! 僕をバカにするな!」


 奴は飛び上がって私に斬りかかろうとした。それに対し、私は槍を振り上げて攻撃した。槍の矛先が奴の体に命中した。


「グァァァァァ!」


 飛び上がった奴のスピードは急に下がり、その場に落ちた。


「クソがぁ……これ以上僕を愚弄するな……」


「愚弄? 私は戦っているだけだよ、あんたが弱いだけじゃない? バスを斬ったことは褒めてあげるけどさ」


「貴様……貴様ぁ!」


 おーおー、まだ戦おうとしているのか。諦めない気持ちがあるみたいだね。


「戦いというのは……僕が勝つから成り立つ! そうだ、僕が勝たなくてはならないのだ!」


「何言っているの? あんたみたいな弱い奴が勝つなんてありえない」


「うるさい! 黙れ、雑魚野郎! まぐれで優位に立っているくせに!」


「まぐれか……じゃあさ」


 私は少し微笑みながら、右手に光を、左手に闇を発した。


「少し本気を出してあげるわよ。これで、まぐれかどうか分かるわよね?」


「何だ……その魔力は……」


「教えると思う? とりあえず、ぶっ飛べ!」


 私は奴に向けて、光と闇を放った。光と闇が混じった渦が空に舞い上がりながら、奴に傷を与えている。渦の中から、奴の悲鳴が甲高く聞こえていた。しばらくし、ボロボロになった奴が空から落ちてきた。


「まずい……一旦引くぞ!」


「俺たちじゃあ対処できない!」


「逃げろ!」


 私の戦いを見ていた飛行物体に乗っている連中は、悲鳴を上げながら逃げ始めた。


「あ! こら! あーあ、逃げたか」


 誰か一人捕まえて事情を聞こうとしたけど、まぁいいか。こいつから事情を聞けばいいし。その時、後ろの方から戦いを終えたナルセが戻ってきた。


「丁度そっちも終わったのね」


「うん。他の連中は逃がしたけど、一人は捕まえた」


 私はさっきズタボロにしたグナンテをナルセに見せた。その直後、上からヘリコプターが降りてきた。救助のヘリがきたのだろう。




剣地:デュークスーパースタービル内


 高速道路での戦いの後、俺たちは救助ヘリによってデュークスーパースタービルに戻って来ることができた。テレビを付けると、高速道路での事件が速報でニュースに流れていた。


「もうあの事件がニュースで流れているよ」


「この世界のマスコミも事件を知るのが早いわね」


 その直後、別の部屋にいたルハラとヴィルソルが部屋に戻ってきた。


「フッフッフ……プライドが高い奴のプライドをへし折るのは楽しいのう」


「奴を快楽に落とすのは楽しかったねー」


「あなたたち、何をやったの?」


 不穏なことを言った二人に対し、ヴァリエーレさんは少し不安げにこう聞いた。だが、二人はにやけただけで何も答えなかった。ただ、あの笑みで何をしたのかは察しがついた。


 その後、ルハラとヴィルソルは俺たちに尋問で得た情報を教えてくれた。


 ヒレラピの二人を狙っているのは、血染めの太陽という裏ギルドの連中。血染めの太陽は目的のためなら関係ない人を巻き込んで殺すという。だから今回のように高速道路で大暴れしたのだろう。


 ただ、奴らの狙いがヒレラピの二人とは話していない。多分そうだろうと思うけど、その辺に関しては話したらボスに殺されると言って、話をしなかったという。


「話はこれだけだ」


「狙う理由と依頼者が分からないけど……また戦って捕まえて話を聞きだそう」


「だな」


 俺はそう返事をし、テレビのニュースを見つめた。


 仕事初日でこんな大騒動が発生した。俺の予想だけど、連中はヒレラピの二人を始末するまでしつこく襲ってくるだろう。セントラー王国でのリーナ姫護衛を思い出す仕事だけど、今回はクァレバの連中よりしつこいかもしれないな。何か対策でも考えとかねーと。


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