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アイドルの素顔


ルハラ:デュークスーパースタービル前


 ギルドから車で二時間。私たちを乗せた車はデュークスーパースターがあるビルの前に到着した。この事務所は多数のタレントやアイドルが所属している。仕事が多いから稼ぎがある。だからこんな大きなビルが建てられたのだろう。


「では皆さま、こちらへどうぞ」


 私たちはトリュスさんに案内され、ビルの中へ入って行った。長いエスカレーターを降り、トリュスさんはとある部屋の前まで案内した。


「少々お待ちください」


 トリュスさんは部屋を開け、中にいる人にこう言った。


「ギルドの人がきました。挨拶の準備をお願いします」


「分かりました」


「はーい」


 聞いたことのある声が聞こえた。もしかして……あの扉の奥にヒレラピの二人が!


「ではどうぞ」


 部屋の中に入ると、普段着のヒレラピの二人が立っていた。


「あなたたちが護衛の人ね。よろしくお願いします!」


 ヒレラピの一人、クナブが愛想よく挨拶をした。


「私がクナブです! 知っていると思うけど、ちゃんと私のことを知ってよね」


 クナブさんは笑顔で私たちに握手をし始めた。ティーアとヴィルソルは、握られた手を見て笑っていた。そう言えばこの二人、テレビが好きだからヒレラピのことはよく知っている。よくヒレラピはテレビに出るし。


「リリオです。危険な仕事なのに……本当にすみません」


 リリオさんは申し訳なさそうに頭を下げた。それを見たケンジは、慌てながらこう返事を返した。


「いやー、気にしないでくださいよ。これが仕事ですし、どっちかっつったらイルシオンシャッツでの仕事の方がきつかったですよ」


「そうですか……」


「気にしないでね。何かあったら私たちが守りますので」


「気を楽にしてください」


 ナルセとヴァリエーレがこう伝えた。この言葉を聞いたのか、リリオさんの顔は少し安堵した表情を見せていた。


 その後、私たちは今後の二人のスケジュールを確認した。人気アイドルだけあって、各地のイベントやテレビ局に引っ張りだこ。休む暇もない。帰って来たと思ったら、ダンスや歌のレッスンがある。アイドルって大変だなー。


「では今から、DCSでテレビ番組の収録があります。早速向かいましょう」


「はーい。準備はできていますので、よろしくお願いします」


「お願いします」


 私たちはまた下へ移動し、一緒のバスに乗り込んだ。


「何も起きなければいいけど……」


 バスを見たナルセが、不安そうにこう言った。確かに狙われているっていうのに、バスには何も装備がされていない。防弾仕様にもなってないし、反撃用の武器もない。


「ねー。何も防御策がないのに、大丈夫なの?」


「ええ……君たちがいれば安心だろうって上が言っていまして……」


 なるほど。私たちが最強の防犯システムってわけか。私たちがいるから、バスに防御は要らないか。簡単に言うね。


「上の人に伝えてくれない。もし、戦いの巻き添えでバスが壊れても知らないよって」


「は……はぁ」


 トリュスさんは少し困ったような表情を見せた。上司にあれこれ言われたら、何も言い返せないタイプだね、こりゃ。




ティーア:バス内


 私たちを乗せたバスはDCSテレビ局へ向かっていた。事務所からテレビ局までは高速道路を使って一時間半ほどかかる。渋滞とか考えずに行けた時の時間だけど。この間、ヒレラピを狙う連中が襲ってくる可能性がある。そうなった場合は、すぐに戦いに入らないと!


 私は武器を持ち、後ろを見渡せる後部座席へ座っていた。横にはナルセが座っている。だけど、ナルセは何故か怖い顔をしていた。


「どうかしたの? 酔った?」


「違うわよ。あれ」


 ナルセが指さす方向は、ケンジにやたらと話しかけているクナブさんの姿があった。


「あちゃー、唯一の男だから」


「剣地の奴、こんな時にナイスフェイスを使って……」


「え? 今ケンジはナイスフェイスを使ってないよ」


 私の言葉を聞き、ナルセの目が点となった。


「何で分かるの?」


「ナイスフェイスはトリガースキルだよ。エンチャントスキルと間違えやすいけど」


 説明を聞いたナルセは、ブツブツ言いながら考え始めた。


「だとしたら……まさか……あの子……横取りする気? いや、剣地の奴はああ見えて鈍感だから気付くわけないと思うけど……」


 考えるナルセを見て、私は大変だなと思った。そんな中、リリオさんはずっと窓の外を眺めていた。


 テレビでのヒレラピは、いつもクナブさんがいろいろ話し、激しいダンスで活躍している。ダンスはあまり上手とは言えないけど。ただ、一部週刊誌では彼女に関して悪い噂がいくつか掲載されている。中には番組関係者やCD会社の人と一緒に歩いている写真まである。逆にリリオさんは、クナブさんよりもダンスも歌も上手だ。そして、浮ついた噂が一切ない。しかし、トーク番組ではあまり目立っていない。いつも静かにクナブさんの様子を見ているだけだった。


「あの、リリオさん?」


 ヴァリエーレが、リリオさんに声をかけて隣に座った。


「ずっと喋ってないけど、体調が悪いの?」


「いえ。私、窓から外を眺めるのが好きなので」


「そう。ごめんね、邪魔しちゃって」


「気にしないでください」


 会話を聞く限り、本当に静かな子だな、リリオさんは。逆にクナブさんまだケンジに話しかけている。ケンジが困っているじゃないか。近くにいるヴィルソルやルハラに助けを求めているけど、二人は窓から外を覗くリリオさんの姿に見惚れている。あーもう。何をやっているのやら。そう思っていると、リリオさんが声を上げた。


「何……あれ?」


 私とナルセは窓を覗くと、右の方から謎の物体が現れた。


「鳥かな?」


 よく見ると、その物体の上には、バズーカ砲らしきものを持った人が立っていた。


「運転手さん! できるだけあれから離れて!」


 私は運転手にそう伝えると、窓を開けて魔力を放った。ナルセも同じように窓を開け、魔力を放った。奴らは私とナルセの攻撃をかわし、バスの後ろに回ろうとした。


「後ろに回ったね」


「ナルセ、ティーア、前は私たちに任せて!」


「お主らは後ろからくる敵を倒すのじゃ!」


 ヴァリエーレさんとヴィルソルがバスの前に移動し、敵の接近を待った。ルハラはバスの中腹に移動し、すぐに戦える準備をした。だが、ケンジは……。


「いやーん! 私こわーい! 助けてケンジさん!」


「分かったから、俺も戦うから離れて安全な所に……」


「いやー! 私の近くにいてー!」


 あの人、自分が狙われていることに気付いていないの? しゃーない。ケンジはこのままにしておこう。


「窓を開けたわよ」


 後ろの窓を開けたナルセが、私にこう伝えた。その後、私とナルセは魔力を開放し、後ろから飛んでくる敵を睨んだ。


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