赤い光の正体
成瀬:深夜の廊下
うぅ……何でこんなことになったのだろう。
「いやー、あの赤い光について解決してくれって病院の方から言われるなんてねー」
笑いながらティーアがこう言っている。そう、今日の昼にティーアが深夜に廊下を歩く許可を得るため、先生に話したのだ。すると、先生は丁度いい、最近騒ぎになっている赤い光をどうにかしようとしていたのだ。君たちが何とかするなら心強い。頼むと言っていた。
その時、私の後ろから何か音がした。
「ひゃあっ!」
驚いた私は後ろを振り返り、ライトを照らした。しかし、そこには何もいなかった。
「どうかしたか?」
ヴィルソルに何もないと返事をすると、私は気を取り直して前を見た。
「うらめしや!」
突如、変な声が響いた。驚いた私は近くにいたティーアに抱き着いた。
「落ち着いてナルセ。ルハラ、悪ふざけは止めなよ」
「あーい。ナルセの反応がスケベでつい」
「止めてよね、もう!」
私はルハラにこう言い、先に歩き始めた。
うう……そろそろあの赤い光を見つけた場所だ。嫌だなぁ……怖いよぉ……せめて剣地と一緒に……そうだ、まだ剣地は動けない。
「そろそろだね……」
「さーて、どうやって正体をあぶりだそうかな」
ルハラとティーアはやる気満々だ。しかし、ヴィルソルはため息を吐いて二人にこう言った。
「お前ら、幽霊に普通の攻撃が通じると思うか?」
「気合で何とか」
「気合でどうにかできる相手ではない。それに、今回の騒動は幽霊のせいではない」
え? どういうこと? 私はヴィルソルの言葉を聞き、どういう意味か聞こうと思った。
「どういうことなの? あの光は幽霊の仕業じゃないの?」
「今のところは。もし、幽霊が近くにいたら我が何かを察する。魔族はちょっとした霊能力があるのじゃ。ナルセが幽霊を見かけた現場の近くにきても、その気配はない」
「じゃあ……あの光は何なの?」
「見なければ分からない。とにかくそれを探そう」
話を終え、私は皆に光を見つけた場所へ案内した。場所に付いたのだが、今日はあの光はなさそうだ。
「ここで見つけたの?」
「ええ。だけど……見えないわね」
「今日は見えない日だよ。きっと」
うーん……本当にそうかしら。でも、あれを見つけないと話が進まない。私は窓から外を見渡した。すると、赤い光が微かに発した。
「あ、見えた」
私の声を聞いたティーアとルハラが、一斉に窓を覗いた。
「どこ?」
「うーん……見えないよー」
「下の方にあったはずだけど……」
しばらくすると、私たちの目の前に赤い光が現れた。
「あ! みーつけた!」
「よし、正体を探しに行こう!」
ティーアとルハラは窓から下に降り、光の正体を探しに行った。
「二人とも、気を付けてねー」
私がこう言った直後、下から男の悲鳴が聞こえた。何で男の悲鳴が? 私とヴィルソルは慌てて下に降り、二人と合流した。そこには、黒装束を着た二人組の男がティーアの光で縛られていた。
「何なの、この人?」
「知らない。だけど、変なことをしていたのは確かだよ」
「何でカメラがあるか分からないけどさ」
ルハラは下に落ちていたカメラを拾い、私たちに渡した。それを見た男の一人が慌てて声を出した。
「おい! そのカメラを返せ!」
「どうやら見られたくない光景が映っているようだね」
「さーて、ちょっと確認しますか」
私たちはカメラを操作し、男たちが何を撮影しているか確認をした。そこに映ったのは、看護婦さんの着替えの光景だった。
「盗撮ね」
「もしかしたら、更衣室に仕掛けてあったカメラの撮影ランプが赤い光の正体だったかもね」
「ひ……ひぃっ!」
やばいと思ったのだろうか、男たちは縛られた状態で逃げ出した。
「あ! あの野郎!」
私たちが跡を追おうとしたら、その前にヴァリエーレさんが現れた。
「詳しい話はあなたの仲間から聞きましたよ。昼間、あなたたちの会話を聞いたの。もう眠いから観念して」
「そ……そんなぁ……」
男たちはヴァリエーレさんの言葉を聞き、その場に倒れた。ヴァリエーレさんはあくびをしながら、一足先に病室へ戻って行った。
ルハラ:病室
いやー、呆れた騒動だったなー。あの赤い光の正体が盗撮カメラのランプだったなんて、間抜けなオチだな。
翌朝、私たちは病院の先生に事情を説明した。あの男たちは看護婦がいないときに更衣室に侵入し、盗撮カメラを設置した。そして、看護婦さんの仕事が終わった時にカメラを起動し、着替えを盗撮。変態的趣味を持つ連中にその動画を高く売りつけていたようだ。あそこが更衣室だったとは、ナルセは分からなかったらしい。まぁ黒いカーテンで閉められていたら分からないしね。というか、どうしてああいう場所に更衣室を作ったのか分からないけど。
その後、あの男たちは女子たちにボコボコにされた後、警察へ連行された。カメラも没収され、奴らから盗撮動画を買っていた連中も御用になったらしい。
「あーあ、大きな事件かと思ったのに」
ティーアはベッドの上で横になってこう言った。
「まあまあ。大きな事件にならなくてよかったじゃない」
「もし、このまま放置していたら盗撮ビデオのデータがネット上で流れていたんだぞ」
ティーアをなだめるように、ヴァリエーレとヴィルソルがこう言った。
「確かにあの連中は怪しいと思ったけど……まぁ話の内容からバカなことをしていたことは分かっていたし」
ギブスで体を固定されているケンジがこう言った。ケンジの言葉を聞いたナルセが、ため息を吐いてこう言った。
「剣地は何か言う前に、さっさと怪我を治しなさい」
「だったら、魔力で何とかしてくれよ」
「魔力でもこの傷は治すのが難しいって先生言っていたでしょ」
「はぁ……早く動き回りたい」
ケンジとナルセはこんな会話をしている。まだギブスを付けているケンジの姿を見たら、痛々しい気持ちになった。
「ごめんね、無茶させて」
「あー、気にするな、ルハラ」
「傷が治ったらすぐにイチャイチャしようね」
「ルハラ……早速それ?」
「もう何日も自分の欲望を制御していて、そろそろブレーキがきかなくなってどうにかなりそうだよ……もう看護婦を呼んでするしかない」
「止めなさい」
ナルセはそう言いながら、私の動きを止めた。あー、ムラムラするー。早く退院したいなー。
ロイボの町ギルド。ルトがあくびをしながらぽつりと呟いた。
「早くケンジ君たち帰ってこないかなー」
「当分は帰ってこないぞ、皆重傷のようだ」
ここでルトの上司が姿を見せた。その姿を見たルトは、慌てながら姿勢を直した。
「何かありましたか?」
「ケンジ君たちに依頼の予定をしにね」
「あら、退院してすぐ依頼ですか? 何か大きな依頼でも入りました?」
ルトの言葉を聞き、上司は返事をして資料を見せた。
「どれどれ……ヒレラピの警護……あのヒレラピの?」
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