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ハーレムパーティ全滅？

成瀬：ＶＩＰルーム

　ブレアはただの偉い人ではなかった。人の首の骨を簡単にへし折るほどの力を持ち、体も分厚い鎧を着ているかのように筋肉が膨れ上がっている。

「この野郎！　よくもやりやがったな！」

　奴隷が死んだのを見た剣地が、剣を突き立ててブレアの元へ突っ込んで行った。だが、突っ込んでくる剣地を見ても、ブレアは避けようともしなかった。

「怒りで剣を突き立てるのか。無意味であることを教えてやろう」

　その後、剣地の剣はブレアの腹に突き刺さった。やったかと思ったのだが、ブレアの表情は笑っていた。

「嘘だろ……何で……」

「この肉体の前では、剣など無意味。フンッ！」

　ブレアが気合を入れると、腹に突き刺さっていた剣が勢いよく跳ね返された。剣地もその勢いに負け、後ろに倒れてしまった。

「クッソ……この筋肉ダルマが……」

「朽ち果てるがよい」

　一瞬の隙のうちに、ブレアは剣地の目の前に迫った。剣地は剣を取り出そうとしたのだが、それより早くブレアの攻撃が始まっていた。

　多分……拳で攻撃しているようだけど、早すぎて目で追えない。剣地も攻撃に対応しきれず、ダメージを負っている！

「死ね」

　かなり重い一撃が剣地に決まってしまった。剣地は悲鳴を上げる暇もなく、天井へ強く叩きつけられてしまった。

「よくもケンジを！」

　ヴァリエーレさんが銃を持ってブレアに撃ったのだが、剣地の時と同じようにブレアは動こうとはしなかった。

「銃か。確かに離れて戦いたいのなら効率のいい武器だ。しかし」

　ブレアは左手を前に出した。ヴァリエーレさんが撃った銃弾は、ブレアの左手に命中した。破裂音のような音が響き、ブレアの左手から硝煙が上がった。

「う……嘘……」

「弾丸など、私から見たらただの小さな鉄だ」

　ブレアの足元に、潰れた弾丸が落下した。その後、ブレアはヴァリエーレさんに向かってジャンプをした。私は攻撃がくると思い、ヴァリエーレさんの元へ急いだが、私が到着する前にあいつの攻撃が決まってしまった。強烈な飛び蹴りが、ヴァリエーレさんの腹に命中した。

「ガハァッ……」

　攻撃を受けたヴァリエーレさんは、廊下に向かって吹き飛んでしまった。

「まず二人」

「お前！」

　剣地とヴァリエーレさんが倒されたのを見たルハラが、叫び声を上げながらブレアの上へジャンプした。

「愚かな。怒りに任せた攻撃など、弱いということをその身に教えてやろう」

　ブレアは上にジャンプしたルハラの足を掴み、何度も地面に叩きつけた。そして、地面に倒れたルハラの顔を強く踏みつけた。

「弱き者が調子に乗るからだ」

　この野郎！　私の魔力で塵にしてやろうか！　私がそう思っていると、ティーアとヴィルソルが同時にブレアに向かって突っ込んで行った。

「魔王！　ここは同時に仕掛けよう！」

「ケンジたちの仇、我らで討つ！」

「勇者と魔王のコンビか……。どんな奴が相手でも、この何十年も鍛えた肉体と何も染まらない膨大な魔力は無敵である」

　ブレアは何らかの構えを取り、二人が接近するのを待った。その隙に、私は魔力を練り始めた。ティーアとヴィルソルは私がありったけの魔力をあいつにぶつけることを察し、私から距離を取った。

「向きを変えたか。大方、あの小娘の攻撃を手助けするつもりか」

　ばれていたか。だけど、私はもう止まっていられない！

「覚悟しろ、筋肉野郎！」

「魔王と勇者の力、思い知れ！」

　ティーアとヴィルソルは光と闇を使ってブレアに攻撃を仕掛けた。その直前、ブレアは大きく息を吸い、大声を上げた。

「喝！」

　なんて声！　あまりのうるささに、耳鳴りが鳴り始めた。ブレアの近くにいたティーアとヴィルソルはこの声を聞いて怯んでしまい、その場に立ち止まってしまった。

「ティーア！　ヴィルソル！」

「ナルセ……攻撃の準備に集中して……」

　ティーアが私にこう言った。まさか……二人とも、私のために囮に……。

「仲間の攻撃のために、身を削って行動したか……だが、無駄なことよ！」

　ブレアはティーアとヴィルソルに拳で攻撃を仕掛けた。

「うわァァァァァァァァァァ！」

「ギャァァァァァァァァァァ！」

　二人の悲鳴が部屋中に響く。

「はっはっは！　くたばれ、薄汚い小娘が！」

「止めなさいよ……止めなさいよォォォォォ！」

　私は感情に任せて強い魔力を放出した。ブレアは私の行動を読んでいたかのように、サンドバックのように殴っていたティーアとヴィルソルを私に向けて投げつけた。私の攻撃が二人に巻き込まれないよう、私は魔力を止めてしまった。

「そんなに仲間が大事なら、その仲間と共に葬ってやろう」

　ブレアが目の前に接近した。そして、ブレアの強烈な攻撃が私を襲った。

　ブレアは戦いを終え、深く深呼吸をしていた。天井にはめり込んでいる剣地、廊下には、ぐったりと倒れているヴァリエーレ、床には頭を強くぶつけて気を失っているルハラ、壁には強烈な一撃を受けて白目をむいている成瀬とティーアとヴィルソルがいる。

「噂ほどではないな……無駄な戦いだった」

　その時、天井にめり込んでいた剣地が地面に落ちてきた。落ちた剣地を見て、ブレアは剣地に近付いた。脈と息を調べると、微かだが息をしていて脈も動いている。ブレアは剣地を確実に始末するために彼の首を持った。

「地獄へ逝くがいい。後で貴様の仲間も地獄へ送ってやろう」

「悪いな。痛い目を見るのはテメーの方だ」

　剣地の声を聞き、ブレアは驚いた。その直後に銃声が響いた。ヴァリエーレが放った銃弾とは違い、剣地が放ったのは魔力が込められている銃弾だった。

「うぐぅ！」

　銃弾を肩に受け、ブレアは剣地を離してしまった。その次に、廊下から閃光が放たれた。

「チィッ！」

　大きなダメージではなかったが、強い光のせいでブレアは目をつぶってしまった。

「死んだと思った？　だけど……まだ生きているわよ」

　と、廊下にいるヴァリエーレがこう言った。ブレアはヴァリエーレの方を睨もうとしたのだが、後ろから衝撃を感じた。背中を触ってみると、手には血がべったりと付いていた。

「何！」

「痛かったよ、あの攻撃は。女の子の頭を何度も踏むって無礼な奴だな」

　後ろにいたのはルハラだった。彼女の拳の周りには、刃のような風が纏っていた。

「淫乱エルフが！」

　ルハラに襲い掛かろうとした瞬間、ブレアは膨大な魔力を感じた。後ろを振り返ると、立ち上がった成瀬とティーアとヴィルソルが、とんでもない大きい魔力の塊を作っていたのだ。

「やられたら何倍にして返してあげるわ！」

「光と闇、合わさった攻撃を喰らったら……」

「どうなるか分からんぞ」

「クソが……」

　成瀬たちは、ブレアに向けて魔力の塊を放った。ブレアはそれに対抗するため、両手を前に突き立てて魔力の塊を破壊しようとした。

「グ……グヌヌヌヌ……グヌァァァァァァァァァァ！」

　ブレアはとんでもない大声を上げながら、魔力の塊を粉砕した。しかし、その代償に両手は大きな火傷を負ってしまった。

「おのれ……小童共が！」

「さて……戦いを続けようぜ」

　剣地が剣を突き立ててこう言うと、成瀬たちは剣地の周りに立ち、剣地と同じように自分の武器をブレアに向けた。

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