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成瀬を解放せよ


 黒服たちが慌てる中、ブレアはグラスを回しながら闘技場を見ていた。


「ブレア様! 我々も逃げましょう!」


「報告です! この騒動に応じて、奴隷共が逃げ出したようです!」


 一人の黒服が、息を切らせてこう言った。この言葉を聞いた別の黒服が、慌てながらブレアに近付いた。


「ど……どうしましょう」


「雑魚の奴隷は無視しておけ。命令に忠実な戦士に始末させておけばよい」


「侵入者はどうしますか?」


「始末されるのを待て」


「しかし……もし戦士たちが全滅した時は……」


「その時はその時だ。やかましいから静かにしろ」


「は……はっ。分かりました」


 慌てていた黒服は返事をすると、その場で立ち止まった。ブレアはワインを飲み、にやりと笑っていた。




剣地:廊下


 マスカレードファイトの廊下は滅茶苦茶広い。そんでもって長い。長すぎる。


「あれ? ここ、前にもきたか?」


「きたと思うわよ。本当にあいつはどこにいるの?」


 成瀬を操っている奴を探し始めてしばらく経つけど、まだ見つからない。


「どこかの部屋にいるのか?」


「別の道探してみる? 例えば、関係者専用の通路とか」


「うーん……そこら辺にいそうだな。よし、行こう」


 俺は周りを見回し、関係者用の通路がないか調べ始めた。すると、後ろの方に扉があった。


「慌てて探していたから、見逃したみたいだ」


 その扉には、関係者専用と書かれた看板が張られてあった。ここから関係者の通路につながるかもしれない。


「よし、行くぞ」


「いつでもいいわ」


 俺は扉を蹴り飛ばし、中に入った。ビンゴ。この部屋の中は関係者用の準備室だったらしく、奥にもう一つ扉があった。どうやら、そこから行けそうだ。


 俺はその扉から関係者用の通路に入り、辺りを調べ始めた。サイレンが鳴り響いているが、関係者の足音も聞こえている。


「ここからお前の記憶が頼りだ。見つけたらすぐに言ってくれ。攻撃するから」


「分かったわ。お願いね」


 その後、俺は身を隠しながら通路を移動した。関係者が慌てて逃げていたり、走っていたりする姿が見えたが、目的の奴はいなかった。


 もしかして、どこかの部屋にいるのか? 俺はそう思い、奴がいそうなところを成瀬に聞いた。


「なぁ、あいつってどこら辺にいるか分かる?」


「分からないわよ。あんまり話してないし」


「うーん……そうか……」


 情報が何もないなら、探すことができない。どうしようか考えていると、前から黒服の二人組が姿を現した。


「お前は白い仮面!」


「で……貴様は誰だ?」


 ヤベェ! 俺がいることに気付かれた! ナチュラルエアの効果が切れたらしく、すぐに黒服たちが俺の周りを取り囲んだ。


「何者だ、貴様?」


「白い仮面と何の関係がある?」


 こいつらはたいして強くないけど、今は成瀬をお姫様抱っこしているから、攻撃方法が限られてしまう。雷を使ってこの場を何とかするか? 俺はそう考えていた。だが、次の瞬間、後ろから爆発音が聞こえたのだ。音を聞いた黒服たちは、悲鳴を上げて逃げて行った。誰かやったんだ? 俺は構えていると、そこから声が聞こえた。


「ティーア、やりすぎじゃない?」


「壁の一つや二つ、壊してもいいでしょ」


「勇者、ここは地下だぞ。変に柱や壁を壊したら潰れるぞ」


 この声! 皆だ、皆がきた!


「おーい!」


 俺の声を聞いた瞬間、ヴァリエーレさんたちは俺に近付いた。


「ケンジ!」


「よかった……無事で……」


「やっぱり生きていたな。だが……状況はよくないらしいな」


 ヴィルソルが成瀬を見てこう言った。


「ナルセ、やはりお前は何者かに操られているようだな。だが、お前の魔力が勝っているおかげで多少の正気が保っている」


「私を操っている奴を倒さないと解放できないの?」


「ああ」


 その後、合流した俺たちは成瀬を操っている奴を一緒に探し始めた。そんな中、ヴァリエーレさんが成瀬に話をした。


「ねぇ、あなたを操っている奴について何だけど、どんなのか覚えている?」


「うーんと……少し薄めの茶髪で、目は少し細かったような……後、灰色のスーツを着ていた気がする」


「ゴベさんね」


「誰それ?」


 俺がこう聞くと、ヴァリエーレさんは俺たちに説明をした。ゴベっていう奴はブレアの部下であり、ヴァリエーレさんと成瀬が本社で侵入している時、ブレアを探している姿を見たようだ。


「だけど、あの人が何で」


「いろいろと話を聞きたいわね。何でナルセを操ってまで戦わせたのか、何で社長室にいたのか」


「私をお探しで?」


 その時、俺たちに向かって声がかけられた。そこには茶髪で細め、灰色のスーツを着た男が立っていた。あいつがゴベか!


「いやー、まさかこんなことになるなんて思ってもいませんでしたよー」


「うるせー!」


 俺は左手に装備しているハンドガンを構え、奴に向かって発砲した。だが、奴は驚きながら飛び上がり、弾丸をかわした。


「酷いことをしますね。いきなり銃を撃つのは危ないことですよ」


「俺の大切な成瀬を操っているお前が何を言う」


 俺は睨みながら奴にこう言った。だが、奴は動揺せずに微笑んでいた。


「フフフ……そうだ。あなた確か、彼女に刺されたみたいですね。その傷……本当に大丈夫ですか?」


 その直後、ゴベは右腕を振り上げた。そして、俺の腹に激痛が走った。成瀬がナイフで刺したところに、小型のナイフが突き刺さっていた。


「投げナイフ!」


「貴様! よくもケンジを!」


 怒ったヴィルソルが闇を発し、ゴベに向かって投げた。


「あらあら。そんな下手な攻撃じゃあ避けられちゃうよー」


 ゴベはポケットに手を突っ込んだまま、軽く飛び跳ねてヴィルソルの攻撃をかわしていた。しかし、後ろにいるティーアには気付かなかったようだ。


「残念!」


 ティーアの渾身に一撃がゴベに命中した。ゴベはぶっ飛びながら態勢を整えようとしたのだが、その前にはヴァリエーレさんがレイピアを構えて立っていた。


「覚悟はいい?」


「できてないっす」


 その後、ヴァリエーレさんはゴベに攻撃を始めた。攻撃は効いているようだけど、あいつは防御をしているようだ。


「クッ……こりゃあまずい……」


「これで終わりよ!」


 ヴァリエーレさんは、レイピアを思いっきり振り払った。その衝撃で、奴は俺と成瀬の元へぶっ飛んだ。その時、成瀬は何かを感じたらしく、俺にこう言った。


「降ろして。体が自由になったかも」


「マジかよ! 皆、ありがと!」


 俺の声を聞いた皆は、笑顔を見せて返した。その後、成瀬はゴベに近付き、恐ろしい笑顔でこう言った。


「あなたにはいろいろされたわね……操られたり、その状態で剣地に酷いことをさせたり……さぁ……塵になる覚悟はある?」


 俺は成瀬の態度と口調を見て察した。成瀬の奴、もうブチ切れているようだ。


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