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スピリット・ブレイカーズ  作者: 桜赤りんご
5/7

雪の姫君 上

理事長室にて。

「理事長!これはいったいどういうことですか!」

「いや…ね?部屋がさ、空いてなかったの」

「俺、寮入らないって言いましたよね」

「だって、上がうるさいんだもん、仕様がないと思わない?」

「駄目です」

「いや、ダメでしょ」

二人同時に否定されてムムムと唸る理事長。

頭を抱えてうーんと悩んでいる理事長が、手をぽんと叩いて作を語る。

「そうだ!決闘で決めればいい!」

「はっ?」

思わず聞き返してしまったが、もう一方はうんうんとうなずいている。

「そうですね、一応部屋は実力の近い者同士で組むんだから、私と彼は実力差が大きいって示せばいいんです」

「は!?おい待てってば!」

俺はその少女に引っ張られて引きずられていった。

「別に実力差はないと思うんだけど」


場所は変わって、床が土の体育館みたいなところにつれてこられた。第三闘技場って書いてあったかな。

「さて、転校生君。決闘制度は知っているか?」

「あぁ、生徒同士で戦うんだろ?」

「そうだ、こういういざこざを解決するときに使ったり、訓練に使ったり色々だ」

「じゃ、さっさとやってくれ。事は早めに済ませたい」

「ああ、ちょうど空いていたからすぐ済んだよ」

そこへ先生のような人がやってきた。

「対象の生徒はこちらに並んで、それ以外の生徒は…いないですね」

俺達は指された場所へ立つ。

「これより、風花 桜(かざはな さくら)小林 拓也(こばやし たくや)の決闘を開始します。では、お互いに精霊結界(スピリットフィールド)を展開してください」

精霊結界…体を精霊存在の用に結界で覆い、肉体ダメージを結界で肩代わりする技だ。こういう、模擬戦などで便利である。

初心者とかだとここでつっかえることもある。まぁ、そんなことはなく、お互いに難なく結界を張る。

精霊武具(スピリットアーツ)は開始後に展開してください。では、開始!」

桜は、その手に氷の槍を生成する。なかなかの速度、無詠唱で一呼吸か。

一方俺は何も出さない。

桜は一瞬驚いた顔をしたが、それも一瞬で距離を詰める。

踏み込みと同時に放たれた槍の穂先を()()弾いた。

「なっ!?」

精霊術…精霊武具とは違う、精霊の利用の仕方の一つで、魔法陣や詠唱で出した指示通りに精霊を働かせるというものだ。

これはそれの初歩の初歩。俺は槍を弾いた時、右手の拳に全精霊を集めたのだ。

桜にできた隙を逃がすことはなかった。

右手と左拳を合わせ桜の腹目掛け肘を放つ。この時、右手から肘先まで精霊を動かし、威力と速度に補正をかける。

「させるかっ!」

が槍の柄でいなされた。

肘を左にずらされた勢いのまま大きく倒れ込み、腰のホルスターから銃を取り出す。これは精霊を弾として込める銃だ。一応許可はとったし遠慮なくいかせてもらおう。

顔に一発、胸に一発の計二発打ち込み、体をそらして片手でバク転。

桜は当然のようにそれを弾いて、こちらに踏み込み槍を突き出す。ちょうど立ち上がったばかりでは動きにくい内股を狙った一撃。少し横にずれて紙一重で避けると、痛みが走る。

すると桜の手には穂先が広く三叉に広がっていた。

――まさか、穂先の形を変えられるとは…

銃を手早くホルスターに戻し、突撃。

腕全体に精霊を流して固め、再度突き出された桜の槍の軌道をずらしつつ顎に向けてフックを打って軌道をそらす。それでも頬に痛撃がはしった。拳は当たったが後ろに引かれ威力を殺された。

桜は後ろに飛んで間合いを空ける。

――槍の間合いでは完敗、拳の間合いでも互角…仕切り直しは正直めっちゃ痛いが…さっきから動きが鈍くなっている。さっき確認したが槍の冷気で体がかじかんでいる。戦闘中に冷たさは余り気にならなかったがこうして間を空けると体にしみる。勝つ方法はあるにはあるが、これから同じ学園で学ぶ相手に進んで使いたくなるようなものでもない。よってここはギリギリまで食らいついて勝たずに認めさせるしかないようだ。

「…魔銀錬成」

目を閉じて詠唱を開始すると、体中にしこんだ魔銀(ミスリル)が液体になって前に出した手の上に浮かぶ。

「その牙は全てを割き全てを食らう」

手の上の魔銀が剣の形をとっていく。

「無銘…双牙」

銀色に鈍く輝く双剣を両の手でしっかりと握り、目を開く。

――まだ足りない

「『密度向上』『硬化』『精霊保護』」

剣に精霊が流し込まれその剣を補強する。その作業は一秒とかからず行われたが、目の前には槍が出されていた。

焦らず慌てず剣をXの形に合わせ槍を滑らせる。

【牙渡り】

槍を流しつつ剣の間合いへ。

Xを解除し、左の剣で胴を払い右の剣で槍をはじく。

下がってかわされるが、右で突く。

ずらした体のギリギリを左の剣が通り過ぎ結界に傷をつける。

桜は焦っていた。剣を握ってから気配が変わった。少しずつ追いつめられていく。

――このままだと、押し負ける!?

しかし、拓也の動きが極端に落ちた。

――時間切れか…

拓也の体は冷気による衰弱、それを補うための強化術式の使用、そして剣に使った精霊術とで限界を迎えたのだ。

すると、桜が槍を床に突き立てる。

すると、穂先を中心に魔法陣が展開され、闘技場を覆った。

「君の全力に私の全力で答えよう」

絶対零域(ニブルヘイム)

桜はそう呟いた。

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