第五話 動き出す闇
“シオナギ”から出た船は夕暮れ前に“カラナギ”に着いた。
村は静まり返っていた。
ゲイザー「これは、どういうことだ…?」
オルタ「…もっと魔物で溢れかえっているかと思った」
六人は慎重に船を降りた。
ゲイザーは船に七人男達を待機させ、残りの二人とオルタ達と一緒に、行商仲間の家を訪れた。
ゲイザー「オットさんはいないか! …ああ シキブさん!」
奥から女性が現れる。
シキブ「まさか、ゲイザーさん!」
ゲイザー「オットさんは?」
シキブは胸を抑える。
シキブ「…こちらです」
一行を部屋に案内する。
部屋にはベッドがあり、苦しんでいる男性がいた。
ゲイザー「オットさん!! これは」
シキブ「…村にいきなり魔物が襲って来て、男達が撃退はしたのですが… それから村の男達みんな具合が悪くなったのです」
ゲイザー「まさか…シオナギの護衛二人と同じだ…」
ミレット(エレインさんが話してくれた…!)
シキブ「それから、一匹の魔物が南から来て話していったのです。
これは“呪い”だと… これ以上魔物に歯向かえば、男達は呪い死ぬと……」
一同「……」
オルタ「……! ミレット、“光の水”を!」
ミレット「…やってみる…!」
ミレットは手から水を出す。
シキブ「これは…!?」
その水を飲ませたり、顔につけたりしても、効果は無かった。
ミレット「……ダメだ」
ヴィネア「…“光の水”は外的傷を治すだけ…呪いは解けないわ。
この呪いを解くとしたら神の力が必要… この村に教会はないの?」
シキブ「神父様も呪いにかかってしまって…」
ヴィネア「……」
ゲイザー「……ミレットさん方、先を急いで下さい…」
ミレット「え! でも……」
ゲイザー「今この村に必要なのは、魔物を倒すことではなく、神の復活です」
シキブ「やはり、あなたは水の精霊の力を使えるのですね」
ミレット「ハイ」
シキブ「ならば、王都に… 地図はありますか?」
ミレットはシオナギで買った地図を出す。
シキブ「ウェストトウィン地方・東の島はベロニカの山に遮られた、北部と南部になります。
このカラナギの村はちょうど真ん中。 北部と南部どちらにも行けます。
…しかし、南部はもう魔物が来襲し、支配されてしまいました……」
オルタ「なら、助けに行かなきゃ」
シキブ「あなた達がどんなに強くても、南部に行かせる訳にはいきません!
…魔王直属の精鋭がいるという噂です。 それを倒せるのは神だけです。
どうか、北部を通り、王都に行って下さい」
ミレット「…分かりました」
シキブに見送られ、家を出る。
ゲイザーが北部への道に三人を案内する。
ゲイザー「…ミレットさん方、呪いにいつかかるか分からない以上、この村から早く出て行った方がいい」
ミレット「ゲイザーさん達は…?」
ゲイザー「シオナギとカラナギは今まで協力しあってきた。 見捨てる訳にはいきません」
ミレット「…どうか、気を付けて」
ゲイザー「ミレットさん方も!」
三人はゲイザーに別れを告げ、村を出る。
ミレットは地図を見る。
ミレット「ええっと、ベロニカの山なりに進むのが一番早いから…
次は“エールガーデン”の村だって。 …オルタ?」
オルタ「…今も、魔物に苦しんでいる人がいるなら、俺は救いたかった…」
ミレット「…オルタ」
ヴィネア「……」
ミレット「……だから、僕達は進むんだよ」
オルタ「神が復活するまで、苦しませるのが…?」
ミレット「違う! 次の村の神父様をカラナギに連れて来るんだ…!
そうすれば、呪いが解けるかもしれない。
少ない望みかもしれないけど、僕達にできる精一杯を…!」
オルタ「ミレット…! そうだね。 ごめん、八つ当たりして…
急ごう!」
三人は“エールガーデン”への道を進む。
それを、空から見る、大きい目のコウモリ……
コウモリは南に飛び返す。
コウモリは南部のベロニカの山の小さな小屋に入る。
そのまま、中にいる女の子の目の前の机に止まる。
バッドアイ「………!」
???「ふーん。 …おいき」
コウモリは再び外に出る。
???「カラナギに英雄が… …… 行くか」
女の子はフードを被り、外に出る。
夜の闇に女の子は溶け込む。