第二十話 冒険の終わり
五年後 “グリーンベル”
チカ「実は、来月、姐さんとバゼルさんが結婚するらしいんです!」
ミレット「えっ!? あの二人が本当に!」
チカ「昨日の手紙に!」
ミレット「とても、喜ばしいけど…
…ディハールさん… 落ち込むだろうな…」
チカ「でも、ディハールさんも、イリューさんとマルと用心棒のチームを作ったそうですよ。
…ディハールさんは面倒見がいいから、姐さんよりも、年下の女性が似合いますよぅ」
ミレット「あはは。 そうかもね。
でも、人間と魔物は共存できる… 僕達の希望ですね」
チカ「はい!」
ミレット「ではそろそろ、山の湖に水を汲みに行きましょうか」
チカ「了解です」
ミレットとチカは桶を持って、教会を出る。
今の“グリーンベル”には大きな教会と墓地があった。
“グリーンベル”の村人達が安らかに眠っていた。
三年前“リーフマティ”の村人達が整備してくれた墓地に、
ミレットは水の精霊を信仰する教会を建てることを提案した。
死者の魂が見えるチカを、手伝いとして招いた。
オルタ(ミレット。 ありがとう。
これで、親父達もきっと喜ぶ…)
ミレット(うん…)
オルタ(あと一つ。 その隣に建てたい家があるんだけど…)
教会の隣の家から、賑やかな声が聞こえてくる。
チカ「今日も元気ですね」
ミレット「うん。 …これが僕達の一つの答え…」
ヴィネア「それじゃあ、みんなでお昼ご飯を作ろうね!」
子供達「はーい!!」
ヴィネアは優しい目で子供達を見る。
ヴィネア「そうそう。 いっぱいちぎって…
炒めるのは私が… あれ?」
ヴィネアは台所の引き出しを開けて、マッチを探す。
ヴィネア「ないや… オルター! “リーフマティ”までマッチを買ってきて!」
台所の窓からオルタに声をかける。
オルタは庭で子供用の本棚を作っていた。
オルタ「え? ちょっと、待って…」
ヴィネア「瞬間移動で一瞬じゃない」
オルタ「えー…」
ゴーシュ「ほら、火だ」
ヴィネアの隣に立っていたゴーシュは手から小さな火を出す。
ヴィネア「ゴーシュ!! 来てたの!?」
ゴーシュ「…まったく… 扉を叩いても、返事がないから」
ヴィネア「あはは。 ごめんね」
男児「オリビアちゃんだ!」
オリビアは子供達に囲まれる。
オリビア「こんにちは!」
ゴーシュ「おいガキ。 俺の女に手を出すとは、いい度胸してんな…?」
男児「ひぃ!」
オリビア「ダメでしょ? ゴーシュ! 仲良くして!」
ゴーシュ「…悪かった。 オリビア…」
ヴィネアは野菜を炒めながら、笑う。
ヴィネア「オリビアちゃんも随分、成長したね。 五歳だよね」
ゴーシュ「ああ」
ヴィネア「あれから、五年か…」
オルタは手を洗い、部屋に入って来る。
オルタ「ああ、ゴーシュ。 わざわざありがとう」
ゴーシュ「これが、サウスボムの香辛料だ。
…それに、お前達がしっかりやっているか、見に来ただけだからな」
オルタ「賑やかだろ?」
ゴーシュ「賑やかだな」
ヴィネア「はい、みんな出来たよー。 ゴーシュとオリビアちゃんも食べていって!」
オリビア「はーい!」
野菜炒めを人数分のパンにのせる。
オルタ「それじゃあ、みんな。 いただきます」
子供達「いただきます!!」
ゴーシュ「…そういえば、王都の訓練生の間で、ウェストトウィンの双子の兄弟が有名になっていた」
オルタ「アスカとソウラか!」
ヴィネア「さすが、あの二人!」
みんな食べ終わり、片づけをしてから、子供達はお昼寝をする。
ゴーシュ「…もうお前は、魔物ではないのか?」
ヴィネア「ええ」
ゴーシュ「これがお前の… お前達の償いか」
オルタ「ああ」
ヴィネア「魔物との戦いで、親を失ってしまった子供達を育て、一緒に成長する。
…これが私の答え… オルタが手伝ってくれたから、私は…」
オルタ「…ヴィネア… 俺も君に救われたんだ…」
ゴーシュ「…………」
オルタ「…ゴーシュ。 ちょっと、手合わせしてもらっても、いいか?」
ゴーシュ「いいぜ」
オルタとゴーシュとヴィネアは外に出る。
二人は木の剣を持つ。
ゴーシュ「いくぞ」
オルタ「うん」
ゴーシュは剣を振るう。オルタは全てを防ぎ、はじく。
ゴーシュ「…フッ。 なまってないな」
オルタ「ああ。 大切な子供達を守るために…な」
オリビア「ゴー…シュ?」
ゴーシュ「オリビア。 起きちゃったか。
それじゃあ、俺達は帰るよ」
オルタ「送って行こうか?」
ゴーシュ「それじゃあ、王都まで頼む。 オリビアに可愛い服をねだられてな」
オルタ「ふふ… 分かった。 ヴィネア! ちょっと行って来るよ」
ヴィネアは手を振る。三人はその場から消える。
ヴィネアは家に入り、一番高い棚の引き出しを開ける。
そこにはバルトの聖剣と布の小さな袋が入っていた。
袋の中にはオルタが小さい時に秘密で貯めていた、1060コインが入っている。
ヴィネア(…初心を忘れるなってことね……)
ヴィネアは引き出しをしめる。
また外へ行き。外の物置を開ける。その中の木箱を取り、開ける。
中には、魔剣“クリムゾン”と血に汚れたマントが入っていた。
ヴィネアはマントを広げる。
オルタが帰ってくる。
オルタ「ヴィネア、どうしたの? …そのマントは…“リーフマティ”の村長さんから貰った…」
ヴィネア「ええ」
オルタ「まだ、取っといていたんだ」
ヴィネア「…オルタ、私はね最初、人間の大人と喋るのが、少し怖かった…
でも、“リーフマティ”の村長さんからこのマントを貰って…
初めて… 生まれて初めて、人から何かを貰ったの…」
オルタ「…ヴィネア… だから、貰った時、泣いていたの…」
ヴィネア「…… …このマントが小さくなるほど、私も成長した。
…今度は私が子供達に何かを与えられる、大人になりたい…!」
オルタ「…俺もだよ… …ヴィネア…
…これからは二人…ううん…ミレットやチカ、ゴーシュや一緒に戦った皆と…
大切なものを守り、育てよう…」
ヴィネア「…うん…!」
今日は優しい太陽の光がシエル王国の島々を照らす。
これは、精霊の戦士たちに助けられ、戦い、償い、英雄になった、二人の物語。




