第十九話 ヴィネアの記憶 〈前編〉
オルタとミレットは魔王城のあった場所へと行く。
そこには、すでに草が生え、何も無かった。
オルタ「…行こう。 多分、この森の中だ」
オルタがゴーシュから貰った地図の元魔王城の近くに、小さな丸が描いてあった。
オルタ「…ゴーシュは分かっていたのかも知れない…」
ミレット「……」
森の中をしばらく進むと、少し、開けた場所に出た。
そこには小さな岩が何個かあり、その岩の一つの近くにヴィネアが立っていた。
ミレット「……!」
ヴィネア「……オルタ…ミレット…」
オルタ「……ヴィネア……」
三人の間を風が吹く。
ヴィネア「バルト… オルタの祖父との約束。
“これから先、俺の代わりに俺の大切なものを守ってくれ”という約束は
魔王を倒したことで、もう果たされたわ」
ミレット「…それでも…僕らの…オルタの前から、いなくならなくたって…」
ヴィネア「……やっぱり、私はあなた達の前にいちゃいけないのよ…」
オルタ「でも、先代魔王の力を捨てて、人間になるんでしょ…?
ヴィネア……」
ヴィネア「……それも私には無理だったみたい。
この罪は償えない……」
オルタ「ヴィネア。 話してよ。 ヴィネアの全てを……」
ヴィネア「……ここは、昔の私が住んでいた村の女達の墓。
…そして、ここに私の姉も……
私の罪はここからになるわ……」
二百年以上前。私がまだ人間で四歳か五歳の時。この辺りには、大きな村があった。
私は父と姉と三人で暮らしていた。私は活発的で髪が短いから男の子みたいだとよく言われていた。
ある日、とても強い魔物が現れ、村の女を全員攫った。
ヴィネア(まて、この魔物め! お姉ちゃんを返せ!
そうじゃなきゃ、私も連れて行け!!)
魔物(どけっ!! ガキは黙っていろ!!)
ヴィネア(ガッ……!)
その時に受けた傷で、私は三日間、寝込んだ。
三日後、目が覚めても、姉も女達も帰っていなかった。
それどころか、助けに行く男は誰一人としていなかった。
そのことに私は苛立った。
ヴィネア(父さん!! どうして、お姉ちゃん達を助けに行かないの!?)
父親(…ヴィネア… 今回来た魔物は今までの桁違いに強い……
誰も太刀打ちできない… せめて、お前を男の子と勘違いしてくれて良かった…)
ヴィネア(嫌だ!! 私一人でも、助けに行く!!)
父親(ヴィネア!? 待ちなさい!!)
私は家にあった草刈りの鎌を持って、家を飛び出した。
そして、魔物の拠点へと一人、向かった。
その道中、村へ向かう三人の、白い箱を持った女性達を見つけた。
そこに、姉もいた。
ヴィネア(お姉ちゃん!? 良かった、無事で…)
姉 (......)
ヴィネア(お姉ちゃん…?)
私は三人の女性と村に帰った。
村の男達は驚き、次々と話しかけた。
村人(大丈夫か!?)
村人(他の女達はどうした!?)
村人(その白い箱はなんだ…?)
女性 (......)
三人の女性は何を話しかけられても、表情一つ変えずに、無言のままだった。
後で分かったことだけど、この白い箱には、殺された女達の骨が入っていた。
魔物は女達を焼き殺し、三人の女性に遺骨を運ばせた。
その全てを見せられた、私の姉と二人の女性は感情を失くしてしまった。
ヴィネア(…お姉ちゃん… ちょっとでいいから食べて…)
姉 (......)
その内、女達は村人に気味悪がれた。実は魔物なんじゃないか、呪われたんじゃないか、
病をうつすんじゃないかと、色々考えられ、最期は村人に殺されてしまった。
ヴィネア(いやあ!! どうして…どうして、お姉ちゃんが!! …う…う……)
私は魔物への復讐心で村を出て、魔物と戦った。
ヴィネア(ガハッ…! ぐっ……)
魔物(魔物が悪い? いや、弱い人間が悪い!!
私は勇敢な村の男達が女達を救いに来たら、女達を開放するはずだった…
なのに、誰一人として、助けに来なかった!!
残された三人の女性も人間が弱いから殺した!!
全て人間のせいだ!!)
ヴィネア(……)
魔物(だが、一人で復讐に来たお前は、人間の中では一番強い!
…どうだ? 私の力を与えよう。
お前が一番憎んでいるのは、弱く何もできなかった、村人達だ!!)
ヴィネア(……! 私は……)
…その言葉のまま私は、魔物となり、自分の故郷を滅ばした。
そして、その魔物はサウスボム地方の大きな村を次々と滅ぼした。
魔物(これで、この島は私と君のものだ。
私はこれから、魔王と名乗ろう!)
ここから二十年後、魔王の配下にイリューとスナップも加わり、王都を支配。
私達三人は魔王直属の精鋭となり、それぞれ北、東、西の島を支配しようと、
旅に出た。
私は西のウェストトウィン地方に向かった。
ヴィネア「…ここまでが、私が魔物になった理由よ」
ミレット「……ヴィネアは二百年前から……」
オルタ「…俺がヴィネアと同じ立場だったら…」
ヴィネア「オルタは私とは違う。 きっと真っ直ぐに戦ったわ」
オルタ「……」
ヴィネア「…その後、私はウェストトウィン地方に向かったわ…
…私達もウェストトウィン地方に行こうか。
今なら、オルタの瞬間移動も使えるわ…」
オルタ「……ああ。 一緒に帰ろうウェストトウィン地方に…」
オルタはヴィネアに手を差し出す。
ヴィネア「……」
ヴィネアは静かにその手を握る。
オルタ「ミレットも」
三人は手を繋ぐ。そして瞬間移動をした。




