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精霊の戦士たちへ  作者: 遠藤ゆきな
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第十七話 魔王の力

オルタとミレットとディハールは王都の宿に泊まり、次の定期便を待った。

王都中で魔王を倒した記念の宴をしており、精霊の戦士達と名もなき英雄を称えたが、

実際にこの三人がその戦士だということに誰も気がつかなかった。


ディハール「まぁ、そっちの方がオルタには良いのかもしれないな」


ディハールは葡萄酒を飲み、果物をつまむ。


ミレット「そうですね。 …僕達の旅はまだ終わってないから」


ミレットとオルタは林檎ジュースとビスケットにジャムを塗ったお菓子を貰う。


オルタ「…王都は賑やかで…どうも苦手だな…」


オルタは席を立つ。


オルタ「先に宿で休んでる」


ディハール「……オルタ! ノースユースは自然豊かだからな!

楽しみにしていろ!」


オルタは手を振る。


ミレット「…ディハールさん。 ありがとうございます」


ディハール「まあ、それより。 お前はお嬢さんの気配を探ることはできるか?」


ミレット「…いえ。 今まで一緒に旅をして来たけど、全然。

おそらく、オルタも」


ディハール「それなら、お嬢さんが何処に行ったかも分からない。

広大なノースユースをしらみつぶしに探すのは困難だ。

…しかも、お嬢さんは俺を見つけた。 つまり、警戒されている」


ミレット「……見つけるのは絶望的ですね……」


ディハール「だが、俺には一つ手掛かりがある。

……俺の賭けにのるか?」



次の日の朝になり、ノースユース地方へ向かう、定期便に乗る。

オルタはもう一度瞬間移動を試したが、出来なかった。


船は順調に進み、昼頃にノースユース地方の“ユリア”の村に着く。

食事をとり、保存食を買う。


ディハール「少し、長旅になるかもしれないからな」


村を出て山道を歩く。


ディハール「今が、冬じゃなくて本当に良かったな。

冬は雪でこの道も埋まるぞ」


ミレット「へぇー。 やっぱり、ウェストトウィンとは違いますね」


ディハール「そうだな。 …お前達、後ろを見て見ろ」


ミレット「うわぁー!」


今まで登って来た道と、ユリアの村、ノースユース地方の大地と海が一望できる。

吹いてくる風も、冷たく、気持ちがいい。


オルタ「…この島のどこかに…ヴィネアが…」


ディハール「ああ。 さて、このままこの道を下れば、他の村に着くが、

俺はこの人の手の入っていない、この山を捜索したいと思う」


オルタ「どうして?」


ディハール「俺が考えるお嬢さんへの唯一の手掛かりは…

王都で俺が吹き飛ばした、イリューとマルギッタという魔物の存在だ」


オルタ「! あの二人がここに?」


ディハール「俺は確かにこの場所に飛ばしたが、今もこの辺りにいるという保証は無い。

出会えたとしても、戦いのリスクもある」


オルタ「……」


ディハール「それでも、一人はお嬢さんと同じ、先代魔王の精鋭だと言っていた。

……手掛かりはここにしかない」


オルタ「……ありがとう。 ディハール。 そんなに真剣に考えてくれて。

…俺はその賭けにのる」


ミレット「僕もだよ」


ディハール「決まりだな。 行くぞ!」


三人は草木をかき分け、山を登る。



その後、三日間、三人は山道を歩き、手掛かりを探した。

しかし、ヴィネアも二人の魔物も見つからなかった。


夜になり、三人は野営の準備をする。


ディハール「確か、この森の奥に川があったはずだ。

オルタ、水を汲んできてくれるか?」


オルタ「分かった」


オルタはランプを持ち、一人森を進む。

しばらくして、川の流れが聞こえてくる。


オルタ「ここか」


しげみをかき分けると、川が見えた。

川岸に向かおうとすると、誰かに話しかけられた。


イリュー「おや? 珍しい。 旅の方ですかね?」


声をかけた男は、オルタの方を見る。


イリュー「! まさか…」


オルタ「すごいな。 本当にいた」


イリュー「…ヴィネアと一緒にいた子だね… まさか私達を倒しに来たのかい…?」


オルタ「違う。 俺達に戦う気はない。 話を聞いてくれないか?」


イリュー「そう。 良かった。 なんだい?」


オルタ「…ヴィネアが今どこにいるか知らないか?」


イリュー「…ヴィネアは確かに私達の所に来たよ…」


オルタ「!!」


イリュー「…もう夜だ。 私達はこの奥の山小屋に住んでいる。

…また明日来てくれないか?」


オルタ「逃げる気か?」


イリュー「…私達に逃げる場所はもうない。

それに、君はマルの命の恩人だ…

裏切りはしない」


オルタ「…信じるぞ」


オルタは水を汲み、元の道を戻る。


ミレット「オルタ! 遅かったね!」


ディハール「場所が分からなかったか? 済まなかったな」


オルタ「いや… 二人共、いたぞ」


ミレット「!?」


ディハール「なっ、なら! 今すぐに…」


オルタ「大丈夫。 それより、明日に備えて」


ディハール「いいのか!? 逃げるかもしれないんだぞ!?」


オルタ「大丈夫」


オルタの意思に圧倒され何も言えなかった二人も、静かにご飯を食べ、休む。



次の日、オルタ達は川まで行き、イリューが言った川の奥の道を通る。

しばらくして、小さな山小屋が見える。


オルタ「行くぞ…」


オルタは山小屋の扉を叩く。

扉が開く。


イリュー「いらっしゃい。 …ああ、風の戦士さんも一緒か。

それと、君もあの時いたな…」


オルタ「ああ」


イリュー「まあ、入って」


三人は山小屋に入る。


マルギッタ「…本当に来たのか…」


マルギッタはベットに寝ていた。


オルタ「…久しぶりだな」


マルギッタ「……」


イリュー「彼女はまだ君と戦った傷が癒えなくってね…」


ミレット「……ちょっと、いいですか?」


マルギッタ「なんだよ…」


ミレットは手から水を出す。その水でマルギッタの傷を癒す。


マルギッタ「これは…!?」


マルギッタはベッドから飛び起きる。


イリュー「マルの傷が…」


マルギッタ「…どうして…どうしてだ!! 私は敵だったんだぞ!?」


ミレット「…僕は正直、ヴィネアのことが分からなかった。

だけど、ヴィネアは敵ではない。 そのヴィネアの仲間でもあったなら…

ううん… 難しいことは分からない。 ただ、僕の力が役に立つのなら…ね」


マルギッタ「……」


イリュー「ありがとう。 まあ、皆座って」


オルタ「それで、ヴィネアは?」


イリュー「…二日前に来た。 …私達にスナップの墓の場所を教えてくれた…

そして、先代魔王の力を開放する方法を聞いてきた」


ミレット・ディハール「!?」


オルタ「…その方法は…」


イリュー「…過去の悲惨な記憶と向き合い、その全てを受け入れることさ…」


オルタ「……」


イリュー「言葉にするのは簡単だが、私やヴィネア…スナップも

並々ならぬ理由で魔王の力を受け取った。

…マルのようにただ、力を求めただけじゃない」


マルギッタ「…うるせぇ…」


マルギッタは小屋を出る。


イリュー「ヴィネアはサウスボム地方に向かったのかもしれない」


オルタ「…?」


イリュー「ヴィネアの故郷は昔のサウスボムの中心の村。

…魔王城のあった辺りだ…」


オルタ「そこでヴィネアが…」


イリュー「まだ子供だった彼女に…」


イリューは席を立つ。


イリュー「ここから先は、ヴィネア自身から聞いた方がいい…」


オルタ「ありがとう。 俺はサウスボムに行くよ」


オルタ達も席を立つ。

小屋を出る。


ディハール「…もう一ついいか?」


イリュー「なんだい?」


ディハール「本当にお前達はもう、人を襲わないのか?」


イリュー「…ああ。 私はそもそも戦う気はないし、マルは君達が魔王を倒した事で、

戦う理由を失った。

…君にここに飛ばしてもらった事を感謝している。

のんびり、平和に暮らしているよ…」


ディハール「それは、良かった…」


オルタ「行こう」


三人はディハールの案内のもと、山を歩く。




イリュー「本当に君は戦わなくなったね」


イリューは三人の姿が見えなくなった後、山小屋の屋根に寝転ぶマルギッタに話しかける。


マルギッタ「…なあ。 私はここに吹き飛ばされ、今、アイツに傷を治して貰った。

…二度も助けられた。 なんでだろうな… アタシは…」


イリュー「マルは優しい子だから」


マルギッタは目をこする。


イリュー「…君を魔物にして済まなかった… 君なら今からでも、人間に戻れる」


マルギッタ「…一番最初に助けてくれたのは、アンタだった。

…死にかけていたアタシに力を分けてくれた…

だから、アタシはアンタの為に戦おうと思った…」


イリュー「…もう戦わなくていいんだ…」


マルギッタは屋根から降りる。


マルギッタ「それでも、アタシはアンタと一緒にいたいんだ。

…だから、このままでいい…」


イリュー「マルギッタ、ありがとう…」

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