第十六話 別れ 再会
シエル城に一人で戻ったオルタを精霊の戦士達は出迎えた。
ミレット「オルタ…! ヴィネアは……」
オルタ「……行った…」
バゼル「ゴーシュは?」
オルタ「…アイツも…」
ミレットはオルタの傷を治す。
ライメイ「…済まなかった…」
オルタ「…なにが」
ライメイ「私はアイツが敵だと思って… 牢に入れてしまった…
もしかしたら、そのせいで…!」
オルタ「…アンタのせいじゃないよ…」
オルタの傷が治ると、五人は玉座の間へと向かう。
そこには、王と王妃、アイラス大神官と神の使者達、チカと羊がいた。
代表してバゼルが、オルタとヴィネアが魔王を倒したことを報告する。
アイラス「ヴィネア殿とゴーシュ殿は?」
バゼル「ヴィネア殿は行方不明。 ゴーシュ殿は故郷に帰られました」
王妃「ふん。 二人共、正体は魔物であるのだろう?」
バゼル「それでも。 二人がいなければ、魔王は倒せませんでした」
王妃「……オルタ。 そなたは、ただの剣士か?」
オルタ「…忘れられた、英雄の孫です…」
王妃「…面白い。 褒美を与えよう。 何が良い?」
オルタ「……今回、魔物の被害にあった、全ての地方の復興と
今まで支配されていた、サウスボム地方の行き来の自由を求めます」
王「必ず。 南の島の発展にも、尽力しよう」
チカ「姐さーん!! 無事で良かった~…」
ライメイは泣いているチカの頭を撫でる。
ライメイ「ああ。 …だが、失ってしまったものもある…」
ライメイはオルタとミレットに話しかける。
ライメイ「私の故郷はイーストポリ地方の“カラカナ島”だ。
何か手伝える事があったら尋ねてくれ」
オルタ「ありがとう。 …もし、ヴィネアを見かけたら、連絡して」
ライメイ「ああ。 …それじゃあ、私達は先に失礼する!
チカ。 行くぞ!」
チカ「ハイ!」
チカは皆にお辞儀をしてから、ライメイの後ろにつく。
ディハール「ああ… ライメイ殿、お待ちを…」
その声はライメイ達には届かなかった。
ディハール「うう…」
オルタ「また、会えるよ」
ディハール「…そうだな。 …俺も帰るよ。
俺はノースユース地方の旅の用心棒だ。
だから、なかなかもう出会えないかもしれないが、お嬢さんのことは俺も探すよ」
オルタ「ありがとう」
ディハール「お前達の故郷は何処なんだ?」
オルタ「俺達の故郷はもうない」
ディハール「…そうか。 まあ、いつでもノースユース地方に来い。
広大な大地に高い山々。 気分転換になるからな!」
ディハールも故郷に帰る。
バゼル「オルタさんとミレットさんはこれからどこに行くんです?」
ミレット「僕達も一応、ひとまず、ウェストトウィン地方に帰ります。
この旅でお世話になった人達に、会いたいから」
バゼル「そうですか。 私は王国の兵士なので、何処にいるか分かりませんが、
私もヴィネアさんのことを探して、連絡します」
オルタ「ありがとう」
バゼル「それでは」
二人はバゼルを見送る。
ミレット「さてと… 僕達も行こうか?」
オルタ「ああ…」
オルタとミレットは荷物を持つ。
オルタは大人しく座る羊に話しかける。
オルタ「えーと… クラウドだっけ? ゴーシュがご主人様か?」
羊「メェーメェー」
オルタ「あれ、違うのか。 でも、ゴーシュは先にサウスボム地方に帰っちゃったよ」
羊は立ち、歩き出す。
オルタ「クラウド。 サウスボム地方まで送ろうか?」
羊「メェーメェー」
オルタ「え? いらない。 どこに行くの?」
オルタとミレットは羊に着いて行く。
羊はそのまま、王都を出て、南に歩く。
南の海岸まで来る。
羊「メェー」
オルタ「え? ここでいいの?」
羊「メェー」
羊の毛の綿が広がり少し大きな雲となった。
羊はその中心で雲に乗り、空に浮かぶ。
ミレット「わあ!」
オルタ「凄いな。 元気でな! ゴーシュによろしく!!」
羊「メェー…」
羊は南の方に飛び見えなくなった。
オルタ「俺達も行くか」
ミレット「うん」
オルタ「ん?」
王都の方角から走って来る人がいた。
ディハール「おーい!!」
ミレット「ディハールさん?」
息を整えてからディハールは話す。
ディハール「お前ら、羊に着いて行く、まぬけな二人組になっているぞ」
オルタ「なに? それだけ言いに来たの?」
ディハール「いた」
オルタ・ミレット「?」
ディハール「お嬢さんがいた」
オルタ「!?」
ミレット「そんな! どこに!?」
ディハール「俺はノースユースの定期便に乗り遅れた。
ちょっと悔しいから、しばらく船を見ていたんだ…
そしたら、こっちを見ていたお嬢さんが…」
オルタ「…くっ…!」
走り出すオルタを止める。
ディハール「残念だが、今日の定期便はもうない」
オルタ「俺には瞬間移動がある」
ミレットとディハールはオルタを掴む。
だが、瞬間移動は発動しない。
ミレット「…オルタ?」
オルタ「……瞬間移動ができない……」
ディハール「…そう。 俺も、お嬢さんを見つけたときは風の魔法で
船を押し戻そうとした。 …でも、出来なかった」
オルタ「…ヴィネアの仕業か…」
ディハール「おそらくな。 魔法封じの結界…」
オルタ「……本当にノースユースに向かったんだな?」
ディハール「ああ」
オルタ「……ノースユースを案内してくれ…!」
ディハール「思ったより、早い再会だったな!」
ミレット「僕も行くよ。 オルタ!」
三人は手を重ねる。
ヴィネアを探す、新しい旅の始まりであった。




