第十四話 神の復活
サウスボム地方から火の戦士・ゴーシュを連れて帰ったその日に、
ヴィネアは先代の魔王直属の精鋭の一人として捕まった。
ライメイ「…なんで、抵抗しないの…?」
ヴィネア「私達に戦う理由はない」
ヴィネアは大人しく、シエル城の牢屋にはいる。
その三日後。
オルタはヴィネアのもとを訪れた。
オルタ「今日、“神を復活させる”らしい」
ヴィネア「そう」
オルタ「俺も見ていいんだって」
ヴィネア「…行って来て。 オルタ」
オルタ「…うん。 また来るね」
オルタは牢屋をあとにして、“神を復活させる”祭壇の間に行く。
そこには謎の壺を中心にして立つ、精霊の戦士
ミレット・ディハール・ライメイ・ゴーシュ・バゼル と
少し離れた所に、王と王妃、アイラス大神官、三人の神の使者。
壁の方にチカと羊がいた。
オルタも羊の隣に立つ。
アイラス「皆さん。 今まで練習したように、同時に精霊の力を出し、
壺に当てて下さい。
王様、王妃様。 それでは行います」
アイラスは呪文を唱える。
アイラス「今です!!」
五人は一斉に力を出す。
力が当たり、壺が光り出す。
王「…おお…!」
ライメイ「! …くっ!」
ディハール(…これは… 力が…!)
ミレット「…はぁ…はぁ…」
壺は割れ、その衝撃で、五人は倒れる。
オルタ「…ミレット?」
チカ「姐さん…!」
オルタとチカは倒れた仲間に駆け寄る。
その間に、壺から出た輝くエネルギーは人の形になる。
王妃「…そなたが神か…?」
王と大神官達がひれ伏すなか王妃は尋ねる。
神「……私はこの島々を生み出した者……」
オルタ「…待て…ミレット達が…死んでいる…?」
チカ「…あ…姐さん……」
アイラス「!?」
王妃「神が復活した今、この者達はどうでもよい。
それだけの代償だった訳だ……」
オルタ「……!?」
ゴーシュ「…待て…はぁ…はぁ…俺は、生きている…!」
オルタ「ゴーシュ! どうして!?」
ゴーシュ「…力を奪われるのが分かったから…途中で力を切った…」
王妃「!? それでは、神は…」
神「…私はこの世に居続けるつもりはない。 命をこの者達にかえそう…」
王妃「それでは! せめて、南の魔王を倒してくれ!!」
神「…この者達により強い、精霊の力を与える。 きっと魔王を倒すことが出来る」
王妃「……」
ゴーシュ「…だから…待て…! 俺の願いを聞いてくれ…!」
神「……」
ゴーシュ「…サウスボム地方で生きていた、オリビアを生き返らせてくれ…!」
オルタ「お前… まだ…」
ゴーシュ「俺がお前達に協力したのはこのためだ…!」
神「……残念だが、失われた命を生き返ることはできない……」
ゴーシュ「!?」
神「だが…新しい命に生まれ変わらせることはできる。
…どうする…?」
ゴーシュ「……くそっ…! ……そうしてくれ…」
神「……その者は今生まれた……探し出すがよい…」
ゴーシュ「……っ」
ゴーシュはペンダントを握りしめる。
神「では、お主達に新しい力を与える… 新しい精霊を呼び出そう…
そして、その力をお主達の魔力に変える。
お主は 『聖なる炎』…」
ゴーシュ「! 力が戻る…!」
神「この少年には 『祝福の水』…」
ミレット「…うっ」
オルタ「ミレット…!」
神「この青年には 『無情な風』…
この女性には 『裁きの雷』…」
ディハール「……これは?」
ライメイ「! ハッ……」
チカ「姐さん!!」
神「この兵士には 『始まりの大地』…
……これで終わりだ……」
バゼル「……!」
王妃「そなたは消えるのか?」
神「……私はそなたらと、少し会えなくなるだけだ……
…… ……」
神は静かに消えていった。