第十話 王都へ…!
シエル王国は無数の小さな島々と代表的な四つの島からなる。
王都の島を中心に、東西南北、それぞれの地方には名前がついていた。
西はウェストトウィン地方。
島が二つあるが、人々は一つの島と考えていた。別名“双子島”
オルタ・ミレット・ヴィネアの三人が今まで旅をしてきた島。
ミレットは水の精霊の力を持つ。
北はノースユース地方。
山脈が連なり、シエル王国で最も大きな島だ。
神の使者により風の精霊の力を持つ旅人が見つかった。
東はイーストポリ地方。
小さな島が沢山存在する、天候の変わりやすい地方。
元々、天候の精霊の信仰が厚く、
儀式の踊り手であった女性が雷の精霊の力の持ち主に選ばれた。
南はサウスボム地方。
250年間、魔王により支配され続けるこの島のことは誰も分からない。
今、シエル王国の中心である、王都の島は魔物が襲い、城は陥落した。
王と王妃の安否は分からない。
だが、残されたセラフィリア大神殿の大神官・アイラスはあきらめなかった。
生き残った人々を神殿で保護し、土の精霊の力を持つ戦士と一緒に魔物と戦った。
最後の希望 “神を復活させる”ために。
アイラスは四人の精霊の戦士が見つかった事を逆転の兆しだと考えた。
王都を奪還できる。
そう信じ、三方向の力の攻撃を仕掛けることにした。
決行は夏の月の二十日。
その日に向け、四人の精霊の戦士と仲間達は準備を始めた。
“イバラ”の村で、ミレットは水の精霊の力を高め、
オルタとヴィネアは体術の修行をした。
この村の守護者、双子のアスカとソウラも手伝った。
イバラから王都の島へは船で三日かかる。
なので、出発は夏の月の十七日になった。
船の手配などは、神の使者と村人が協力して行ってくれた。
いよいよ出発の朝になる。
沢山の人々が港に三人と神の使者と船員達の出発を見送りに来る。
大きな歓声の中、オルタは双子の姉弟に声をかける。
オルタ「君達もこの村を守ってね」
アスカ「うん、もちろん! オルタさん達も負けないでね!!」
オルタ「ああ! …ソウラ? どうしたの」
ソウラ「……お兄ちゃんは…
僕が今まで会った人達の中で、一番強かったよ!!」
オルタ「そうか。 ありがとう。 …泣かないで。 必ずこの村にも帰ってくるから」
ソウラ「…うん!」
オルタは二人と握手し、最後に船に乗る。
船員「よし、では出航!!」
船が港を離れる。大歓声の中、船は進んで行き、
次第にウェストトウィンの島が小さくなる。
ミレット「…とうとう王都に…!」
オルタ「王都はどんな状況になっているのかな?」
ヴィネア(さようなら… 私のもう一つの故郷……)
ヴィネアは島をずっと見て、見えなくなると、オルタとミレットを見る。
ヴィネア「確かに王都も大変な状況だけど、一つ忘れてない?」
オルタ・ミレット「?」
ヴィネア「王都に行くまでも、大変だってこと!!」
オルタの後ろで飛び跳ね、襲って来た魔物を、ヴィネアは魔法の針で刺す。
オルタ「!? うわ!」
ミレット「!! 海に黒い影が沢山…!!」
ヴィネア「そういうこと」
ヴィネアは構える。
沢山の魔物が、水飛沫をあげ、船に上がって来る。
オルタ「やるぞ!!」
オルタも剣を抜き、斬りかかる。
王都まであと三日。